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ーーー軽音部室ーーー
そっと近寄り結城は覚悟を決めて棺桶を「せいやー!」という掛け声とともに御開帳した。瞬間に腕が何かに掴まれ引きずり込まれる。
驚くスキなど与えらず何かに抱きしめられた。ふわりと鼻を擽るのは懐かしい香りで思わず先程までの困惑など忘れてその背に腕を回して人物に笑いかけた
「久しぶり零!」
ぎゅー!なんて言いながらじゃれつく彼に先程まで困らせていた張本人は
「うむ、元気そうで安心したぞ結城」
その瞬間、抱きとめられている彼は固まり思いっきり距離を取ると叫んだ
「どちら様!?」
「なんと…!?わ、吾輩は悲しいぞ、唯一無二の親友ではなかったか…!」
「俺の知ってる零そんなんじゃないよ!?」
何方も本気の言葉合戦。
留年する前、結城の知ってる零は口の悪いワイルドで色気垂れ流す美形で、今目の前にいるのはホワンとしたけれど妖しい色気を放つ美形。自分が、いない間何があった…
ーーーまたあいつ?
ふと横切るのは身の程知らずにも自分に挑んできた二年の姿
すっと目を細め結城は頭を降る
今は目の前の人物との言葉のやり取りに集中しよう、と
この数十分後夏目が様子を見に来るまでこのやり取りは続いた
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