▼ 3
「っと、いうことなんですよね」
「俺はバブらなきゃいけねえと思うか?」
「解決するの俺じゃないので好きにどうぞ。ていうか今のキングスカラー先輩でバブれるんですか?」
悩み始めた。ちなみにバブるとはオーバーブロットの略である。理由としてはオーバーブロットの理由が寮長それぞれアレだったために、俺が付けた。勿論先輩方には締め上げられたが、俺の命名は俺たちが思っている以上に広がり、結局、オーバーブロット=バブるという言葉が略語として流行ったのだ。笑った。
「難しいな」
「ですよねー」
俺も今のキングスカラー先輩がバブったら思いっきり笑いますもん。そう言って笑えばコツンと小突かれ、彼は俺の横に寝そべった
「授業はいいんですか、キングスカラー先輩」
「いいんだよ。それよりもあの女なんだ」
「さあ?俺も詳しくはわかってませんけど。どうやら彼女もこの学園の行く末を知っているみたいですよ」
「へえ、それで、お前の今回の役割は?」
「それもまだ。でも監督生にはならないつもりです。正直、あんなのは命がいくつあっても足りやしない」
「違いねぇな」
喉を鳴らし、機嫌よさそうに揺れる尻尾が、俺の手首に巻き付き、まるでじゃれるような動きをする。ちなみにこの尻尾、意外と力が強いため、自力で剥がすには少し手間がかかる。監督生時代に経験済みだ。
「先輩、先輩が記憶取り戻したのはいつですか」
「お前を見た時だな。」
「うえ」
「もう少し喜べよ」
ああ、すみません、根が素直なもので…とはさすがに言わず、笑ってごまかした。それにしても本当にお助けキャラ的立ち位置がキングスカラー先輩かぁ。頼りねえエええええ。めんどくさくなったら全部ラギー先輩に投げられそうだな。今のうちにいろいろ考えておかないと俺が死ぬ。
横ですぅすぅと寝息を立てる先輩をチラ見して、俺も芝生の上に転がった。結局、この人の尻尾を解いてもらわなければ俺は草むしりという雑用ができないのだから仕方ない。
丁度いいくらいの暖かさに瞼を閉じて、俺も抗うことなく夢の中へと旅立った。
―――数十分後―――
身体を揺さぶられる、それに少しだけ唸りながら目を開ければ、外はまだ明るくて、眠ってから一時間もたっていないことが伺える。もう少し寝ていたかったなぁという考えもそこそこに、どこか面白そうな顔をしたキングスカラー先輩がいた
「あの女、前のお前みたいに問題起こしたらしいぞ」
「俺じゃなくて十中八九グリム達っすね。メンドクセェ。」
「助けに行かなくていいのか?」
「俺には関係ないんでぇー」
よっ、という掛け声に合わせて起き上がり、雑草を入れる籠を引き寄せる。なぜかこじんまりとした山が出来上がっていたし、先ほどまで奥の方に生えていた雑草が綺麗になっている。籠の中にある分を差し引いてもおかしいので、ちらりとキングスカラー先輩に視線をやれば宝石のついたペンを見せられる。ああ、魔法使ったんですね。
「もう少し話に付き合え」
「雑草分は付き合ってあげますよ仕方ないので」
生意気に言ってみたら二発殴られた。くそ痛かった
「それで?何やらかしたんですか。グレートセブンの銅像焦がしました?今多分そこの時空だと思うんですけど」
「お前らそんなことやらかしてたのか。まあ、正解だな。銅像焦がして窓ふき百枚だと」
「俺はやりませんでしたけどね」
「マジか」
「いや、後から後から問題起こすのがグリムっていう生き物っていうか、人を煽らないと死ぬっていうのがエースっていう生物っていうか…」
火と油みたいな二人だったんで、こっからデュースも巻き込んで何かやらかした気がします。そう自己申告すれば頭を抱えたのはキングスカラー先輩だった。いやぁ、面目ねぇ!!悪いの別に俺じゃないけど!!今冷静に考えれば連帯責任とかいう体のいい言葉に惑わされたガキでしたね俺も!!!一回目の恨みを晴らすべく、二回目では自由に生きると決めたんでぇ!!!
俺!今!!監督生じゃないしっ!!!!
「お前も苦労したクチなんだな…」
「え、キングスカラー先輩知らなかったんですか?俺キングスカラー先輩にも散々迷惑掛けられたんですけど」
「減らねぇ口はこれか?ん?」
「その分、様々な面倒ごとへの対処ありがとうございました〜〜〜っ!!!」
「最初っからそう言えばいいんだ」
え、言わされたのに。俺の頬をむいって引っ張って言わせたくせになんでそんなに満足げなんだこの人。
ひりひりする頬を撫でながら、キングスカラー先輩に見送られつつ(なんかいろいろ持たされつつつ)俺はその日、寮へと帰っていった。
prev / next
目次に戻る