短編集/女主 | ナノ


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 この世界に転生してさらに月日がたった。どうもこんにちは相川美乃梨15歳です。ちなみに遅生まれ。今の生、正直絶望しながら生きている私も無事高校生となりました。やったね原作が始まるよ!!はー。くそ。今頃煉獄さんの代わりに腹貫かれて死んでたはずなのになんで私は生きているんだろう。煉獄さんの礎となって死にたい人生だったなぁ。
 今日も今日とて生きることに絶望しながら空を見る。そんな私の後ろから軽やかな足音を鳴らし、虎杖が肩を叩いた。なんでわかるかって?幼稚園の頃から聞き続けたからだよ


「おはよう!相川!」
「…」
「おはよう!」
「おはよ…」


 今日も元気ないな!そう言っていい笑顔な虎杖が私の歩幅に合わせて歩き始めた。コレもいつものことだ。正直、高校の有名人で原作の主人公と歩くなんて…と、普通なら思うんだろうが私はどうでもいい。だって巻き込まれなければいいのだから。見えない私が巻き込まれることなんてほとんどないし、部活だってオカルト部以外に入っている。
 それに、こいつとの付き合いも今年で終わりと思えば気が楽だった。今の両親には悪いが、高校を出たら家に引きこもるつもりである。ニートになるつもりは微塵もないが、前の世界に近い子の世界なら在宅ワークもあるだろう。


「なー、相川」
「なに」
「隣の岸山に告られたってほんと?」


 少し、気に食わなさそうな声。その声に歩幅を乱すことなく歩き、私は虎杖に目を向けた。


「ほんと」
「ふーん。受けた?」
「振った」
「そっか」


 たったそれだけの会話。それだけの言葉に虎杖が先ほどまで逸らすことなく私に向けていた瞳を前に戻した。それに少しだけホッとする。言いようもない威圧感だ。たまにある。たまに、こいつの瞳に押しつぶされそうになる時がある。だから、その点も含めて、今年、虎杖が居なくなるのは、気楽だった。


「なー、相川」
「まだ何かあんの?」
「めっちゃある。あるんだけど、さ。今度の日曜日、本屋行かねぇ?」
「行かない」
「えーーっ!!?」


 行きたくない。けれど、そうだな。

 ふと思った感情に私は少し考えを巡らせた。この世界に生れ落ちて絶望した私だけど、死ぬという概念は頭になかった。だって痛いだろうし、もし仮に死んだとして、神が再び私を拾い上げる可能性があるかどうかわからなかったから。だからこそ無意味に日々を生きてるし、虎杖を放置してる。でもこの虎杖はどうせ今年居なくなるのだ。それも近いうちに。ならば、一度くらい誘いに乗ってやってもいいかもしれない。



「土曜日」
「ん?」
「土曜日なら、開いてる。」
「えっ…?」


 マジ?確かめるように脚を止めた虎杖にイラっとしたが、肯定の意味を込めて頷いた。そうすれば彼は徐々に頬を染めて飛び上がる


「よっし!じゃあ土曜日、土曜日に遊びに行こう!相川!」
「…わかった」
「嫌そう…。でも、でも約束だから!」


 約束だからな!?そう言った彼に私は痛くなる頭を押さえながらハイハイと頷いた。


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