短編集/女主 | ナノ


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 突然だが諸君。私の名前は相川美乃梨しがない女子高校生である。日々華の女子高校生であることに誇りを感じ、家で兄と喧嘩しながら過ごしてきた。そんな私には最近できた推しがいる。そう、煉獄杏寿郎さんこと炎柱の煉獄さんである。凛々しく刀を振り、鬼を討伐する姿。責務を全うしようと最後まで立ち主人公に道を示す背中に惚れた。映画は三回見たし単行本も買った。煉獄さんが登場する回は何百回読み直したかわからない。そしていくら読み直しても変わらない事実がある。そう。煉獄さんの死だ。

 私は誓った。いくら姉に「お前ww気持ち悪いわww」と笑われようと、真顔で「お前、馬鹿だろう」と吐き捨てられようと心に誓ったのだ。


ーーー絶対に転生して煉獄さんの肉壁になって死ぬと。そして、その願いは今、まさに、目の前で!!叶えられようとしている。



「ええ〜?本当にこれでいいのぉ?」
「はい!お願いします!!」
「いや、こっちの不手際で死んだとはいえ、あっちの世界で絶対に叶えられる願い事を言えとは言ったとはいえ。その願い事が『煉獄杏寿郎の肉壁になる以外では死なない』っていう能力、普通欲しがる??」



 君変わってるって言われるでしょ?そう問いかけた目の前の少年に私は胸を張った。そんな言葉、死ぬ前に言われ慣れている。姉にも友達にも言われ慣れているのだ。
 神と名乗った目の前の少年は目を細めながら「君がいいというならいいけれど」と呟くと手を叩いた。その瞬間、私の意識は闇へと落ちる。一瞬だけ脳裏を走った親の顔に少しの罪悪感を感じた。けれど許してほしい。けしてわざと死んだわけじゃない。普通に歩いていたら後ろから刺されたのだ。アレは不可抗力だったと思う。









「あっ、ヤバ。飛ばす世界間違えた」


 最後に神が言った言葉を、私は聞き取れていなかった。

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