▼ おまけ
ーーーーーー本編読破後推奨ーーーーーーー
ごほっげほっ
座敷に響く、痰の絡まった咳と吐き出された血に、男が慌てて近づく、何度も何度も背をなでて、ようやく収まってきた女の顔色は酷く悪い。提灯の明かりだけで照らされた部屋には使われてはいない敷布団と丁寧に折りたたまれて包装された大量の手紙が散らばる
「姉さん、もうこれ以上はーーっ」
「いいえ、ダメよ。ダメなの。手紙が届かなくなれば、あの方は私を忘れてしまうかもしれないわ…」
少しでも長く、彼の心にとどまっていたい。助からない我が身。どうしてここまで自分本位になれるのか、それは自分でもわからない。けれど、愛してるあの人に、忘れられたくない。
「ごめんなさい、ごめんなさいね。」
「ねえさん…」
「でも、私は」
あの方の、あの方の心にとどまっていたいの。
そう言って女は、姉は、筆を動かすことを辞めなかった
そして姉、息を引き取る直前にこう言ったのだ
「ごめんなさい、左近次さん。どうか、どうかあなたの幸せを願えない私を、−−−−−許さないで」
解説 ・・・主人公のいう『今年、不幸があったので』は自分のことです
・・・『あなたの元へ私が行ってみようと思うのです』きっと私は死んだらあなたの元へ行っていますよという遠回しのメッセージ
・・・作った押し葉=生前に作った、夢主が鱗滝さんに残せる最後の物
・・・流行り病にかかった=夢主が死んだことを知ってほしくなかったためのウソ
・・・手紙の内容は義勇が拝借した手紙の中身です
prev / next
目次に戻る