短編集/女主 | ナノ


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師の頬に涙が伝った。震える指が、古びた和紙をしっかりと握る




「義勇、儂は、気づいていた。いつからか手紙から彼女の匂いがしなくなっていた」
「先生…」
「逢いに行きたかった。だが、逢いには行けなかった。きっとな、育手としての決意が鈍る」
「−−っ」




手紙を持ったまま、鱗滝が口を開く




「あいつの弟は、何か言っていたか」



その答えを、義勇は持っていた。持っていて、少しだけ悩み、口を開く




「−−−姉は、あなたを待っていたと」
「・・・・・そうか」




静かに目を閉じ、手紙を握りしめながら、鱗滝は再びそうかとつぶやいた。 初めて見る師の姿に、義勇はただ黙ってうつむいた。



そんな彼らの横を狐面を飾る少年少女と、やさし気な面立ちをした女性がいつまでも寄り添っていたことを、彼らは気づけず、ただ、ただただ涙を流した。
















――――――――――――――――――――――



「最後まで、薄情な姉だったなぁ」
「大おじ様…」
「見たか、大樹。あの剣士の横についていた姉を。申し訳なさそうにしながらも最後までかの剣士様に寄り添う姿を」
「はい、はい。貴方から受け継がれたこの目は、確かにあの方を移しました」




「最後まで、あの剣士様のことばかりだったなぁ」




死の間際で、藤の紋を掲げていた老人はつぶやいた。




けれど




「あの薄情な姉が、満足しているなら、それでいいなぁ…」




すぅっと、息が途絶え、老人は目を覚まさない。
そんな彼に青年が泣きながら言う




「あなたも、薄情な方ですよ大おじ様。継承者を放っておいて、ずっと先に逝かれたおば様のことばかりだったのですから…」




あなた方は、似た者同士ですよ。泣きながらつぶやいた言葉を拾う人は誰もいなかった。


























夢主(お里)

鱗滝さんの恋人だったけれど、原作開始数年前(義勇たちが選抜に行く少し前らへん)に流行り病で息を引き取っている。先見の目を持っていて、未来を視ることができた。そのため視える未来の20年後までの手紙を書いていた人。やさしく、けれど弱音を吐かない人物だったらしい。来世で鱗滝さんと結婚できるかもしれない。




鱗滝さん

現役の時に何度も通った主人公の家(藤の紋)の常連隊士。お互いが引かれながら交際を始めたけれど結婚まで至らなかった。月に一度の手紙のやり取りをしていた人。六月の手紙を受け取った後からなんとなく気づいていた。主人公とは彼の気がすむまで鬼殺隊へと協力できれば育手を引退して一緒に暮らしましょうねと笑いあっていたらしい。来世で頑張る



義勇さん

このお話の主人公的役割の人。生きてるなら合わせてあげたいという120%善意での行動だった。けれど結局は…。来世で夢主の親戚に生まれるかもしれない


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