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壁外調査当日
なんかいろいろ詰まれながら動きにくいなと思い一鳴きすれば兵長の思いっきり鼻で笑った顔が癪にさわった
前日一応人になって作戦の説明をあらかた聞いたが、まさか私に女型の巨人捕獲作戦を話すとは思わずに出されたコーヒーを思わずむせてしまったのは忘れたい
初めて顔合わせするミケさんやナナバさんに出会った瞬間ブレードを抜かれたことは死ぬまで忘れない
「カルデア大丈夫か?重い…よな」
「エレン、あんまりカルデアにそんなこと言ってると嫌われるわよ」
「えっ!?」
「そうだぞエレン馬はめんどくさい乗り手は嫌いだ」
「グンタさんまで!」
ひどいですよ!と抗議するエレンに笑いながらリヴァイ班は自分の馬を撫でた
これを見てるとあの惨劇をやっぱり私は変えたい
けれど彼らの死は必要なものだ。今はない手を握りしめるように奥歯を噛む
なんて、無力か
「お前ら行くぞ」
「はいっ」
兵長が私の横を通り過ぎる際に胴を痛くない程度に叩く
「何も気にするなお前はお前の主人を守ることに徹しろ」
わかってるっつうの
私の最優先はエレンだ
マルコの時と同じように私は心の中でごめんとつぶやいた
『別にいいよ。君は抗おうとしてくれたんだから』
耳元で誰かがささやく声がする
それが見捨ててしまった彼に似てる気がしたけれど私は首を振って飛び乗ったエレンの指示に従い壁の方角に向けて駆け出した
『いってらっしゃい』
いってきます。
―――誰に言ってんだかね
・・・・
壁には見送りのつもりか、冷やかしのつもりか民衆と憲兵団
その中央に立つのは調査兵団
エレンと共に持ち場に待機すれば団長の声があたりにこだました
それと同時にゆっくりと開くのは元壁の中の世界、今は、巨人が生息する未知の世界
「カルデア、頑張ろうな」
「ぶるるっ」
「…っ。俺、やっぱりカルデアがいるだけできちんと安心できる。だから、これからもよろしくな相棒」
その問いには答えなかった
いや。答えることなんてできなかった
エレンがこの章で生き残るのは運命だ。けれど、その運命は多大なる犠牲の上で成り立つ
…それは、リヴァイ班しかり、ネス班長しかり。右翼索敵側、後方支援の精鋭しかり
それでも、ここが私にとっての現実だ
抗うしかないのだろう。
私の両腹が力強く挟められる
それは前に進む合図
「行こうカルデア」
行こうかエレン
この先の道、君は苦難が待ち受ける
それでも、前に進もう。それが君の定めさ
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