番外編等 | ナノ


▼ 情景(英霊になった話番外)

彼はずっとずっと憧れていた
自分より幾分か歳の離れた姉貴分のことを

まだ小さい頃、何度も何度も面白おかしい物語を話してくれていた
物語の内容は決まって主人公が何処かの世界に飛ばされ、飛ばされた先で絆を結ぶ物語。
それが自分は大好きだった


ただ一つ不思議だったのは主人公の性別を決して姉が口にしなかったことだ


姉はいつもこういった



『主人公ってのは誰にでも共感される人物じゃないと務まらないものなんだよ』



そこに性別は関係ないんだ

そう言って笑った彼女は少しだけ寂しそうで、とても辛そうで





「先輩、起きてください、先輩」
「あれ、、マシュ?」




所々はねている髪を撫でつけつつ身体を起こしてあたりを見回す

相当懐かしい夢を見ていた気がする
小さい頃の、姉が語る主人公に憧れた夢

性別不明の主人公は様々な時代に飛んで、その時代の問題を修復していた
出会い、別れ、目をそむけたくなるような真実

だけどそれらは大事な、とても大事なナニカだったはず




「よく眠っていましたね」
「…うん、とても懐かしい夢を見たんだ」




優しくて、だけど二度とかなうことのない、虚しい夢

人理修復が終わったのに、きっと、もう、二度と、かなうことのない夢


心配そうな後輩に微笑みかければ安心したように肩から力を抜いた。
昨日はとても心配をかけてしまったから


…枕元に置かれた手紙。

そこには少々格式ばった字で『藤丸立香様』と書かれている


何度も何度も読み返した

だけど内容は変わらない





『な、んで…』
『…?、先輩?』





カルデアの職員が穏やかな顔で渡して来た手紙。
それは人理修復が終わって一か月たった頃だ

日本語だから家族からの手紙だと思ったのだろう。まだまだ少年である彼の髪を撫でながら渡してくれた職員はそのまま食堂を出て行ってしまった。

しかし、そこに書かれた内容は、決して家族からの暖かな手紙ではなかった。
全て手書きであり、差出人の名前の横には印鑑と家紋が記される







藤丸立香様


 
 こんにちは立香君。私のことは覚えているかしら。
 覚えていないのならそれでもいいと思っています。
 今回は貴方に伝えたいことがあって筆を取ることになりました。
 貴方は私の娘のことを覚えていますか?小さい頃よく遊び相手をしていたと思うのだけれど…
 …今回は香のことで貴方に知らせねばならない事です。
 一言で言ってしまえば、香は○月○日の朝、階段で足を滑らせて帰らぬ人となりました。
 その日は雨で足場も悪く滑りやすかったとのことです。貴方はあの子と仲が良かったから知らせておきますね
 

 最後に一つ、こんなにそっけない文でごめんなさい。そうでもしなければ感情的に書き散らしてしまいそうなの。
 あなたがどこで何をしているのかわからないけれど、たまには親御さんに顔を見せてあげてくださいね


            藤村 千代







一瞬にして消えた音
手から滑り落ちる紙をエミヤが拾い、そしてその顔をしかめた

…身内とまでは行かなかった、だけど自分にとっては本当に姉のような存在で、大切な人だった。最後に会ったのは一年前、その時は少し疲れたように笑っていたけれど、相変わらず物語を語ってくれた人だった

いつもいつも飴やらチョコやら持ち歩いていて、なんか変な傷薬作ってて、そんな、人だったのに


溢れてきた涙が止まらずサーヴァントが慌てて駆け寄ってきたのも気づかず、声を上げて泣いた。

ドクターが消えてしまった時よりもきっと、泣いてしまったに違いない。

キャスニキの手によって眠らされ、今に至る。


まだ目が痛い、喉もきっと赤いだろう。


だけどここで立ち止まれもしなかった。姉の冥福を祈れなかった
だってまだ終わっていないのだ。特異点も新たに見つかっている


だからだから、本当にすべてが終わったなら、−−−−おわったなら、一回日本へ帰ろう


そして―――

















ぐだ男


この数時間後に主人公がカルデアにおいでになる

密かに泣いて密かによろこんで主人公に対してのみかなり甘える(そう、INワンピやその他の時のように)でも過保護にもなる。
恋愛感情はない






prev / next
目次に戻る



 




夢置き場///トップページ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -