番外編等 | ナノ


▼ 6


「姉ちゃん、姉ちゃん」
「口にモノを入れたまま喋るな」



太陽が容赦なく照り付ける海の上で、優雅に船に乗りながらトーストに齧り付く立香を横目に四次元ポケット(仮)からカルデアにつながる通信機器の電源を入れれば青白い画面が空に浮かぶ



『立香くん!無事かい!?』



初めに聞こえてきたのはダヴィンチちゃんの声、続いてマシュやギルガメシュの声に立香が元気よく返事を返した
いや、物を口に含めたまま喋るなと言ったばかりなのに

早起きして作ったフルーツジュースを口に含めながら彼らを眺めていれば、それはそれは満面の笑みでダヴィンチちゃんが両手を広げた。

その目に涙が浮かんでいるのを見て、心配かけてしまったかと少し罪悪感。

一か月もここにいたのだからもう少し早く連絡をすればよかった



『それにしても連絡が早くてよかったよ、まさか君が飛んで10分後に連絡が来るなんて、さしもの天才である私も驚いた』
「…は?」
『…え?』



結論:私が昔過去にとんだ時と同じ現象が起きていることが発覚


ぶっちゃけそれだけなら少し安心する、あっちの時間が進んでないわけだし



「…、まっ、いいか立香、次の島、ど、こ…」
「あ、姉ちゃん、なんか前方にすごくでかいクジラみたいな船が」
「主人公特性巻き込まれ体質&問題製造機」
「え?」



弟的には進路になんかいる、どうしようって相談だったんだろうけど

はぁ、とため息をつき、空を見上げれば神秘的な青い炎をまき散らす鳥が見えて思わず目を細めた。

瞬時に杖をとりだしてこの世界の言葉を浮かび上がらせる



【お話があるならばどうぞこちらへ】



のち、大きく旋回した鳥が船の甲板へ降り立ち人の姿になれば、立香はあからさまに嫌そうな顔をする
残念だったな弟分よ、どうせ鳥が見目麗しい人型になると思ったんだろうが、出てきたのはダンディな顔した男だ



「あー、すまねぇ、ちょっと頼みがあるんだが」
「……病人でも出ました?」



首を傾げ問いかけるが彼は首を気だるげに降る
違うらしい。では何かと尋ねれば言いづらそうに口を開いた



「野菜、ねぇかよい」
「「野菜??」」
「…いい辛いが船の乗組員が不幸になってな、それで、葬儀はできねぇが形だけでもってことで、倭の国ってとこの49日をすることになった」



流石に49日もやりはしないよい、と笑って見せる彼に立香がこそっと質問する



「姉ちゃん49日って?」
「ん?…あー、それぞれの地域によってまちまちだけど人は死んでから49日間は現世を漂う。その間、死者の家族や親しかったものは肉魚を一切口にしないって奴。逆に肉魚をめっちゃ取るって地域もあるけど、野菜ってことは肉魚を一切しないほうかな」
「よい。まぁ、アイツが死んでから49日目でな、乗組員の一人が倭の国の通夜の話をしたよい、そこからあれよあれよと49日目は肉魚を食べずに死んだアイツの冥福を祈ろうってなったわけだ、気持ちの問題かもしれねぇが」



伏せた瞳に寂しげな色が籠る
原作を知ってる身としては、まぁこんなエピソードがあったのかと少し驚いてはいるが、死者を思う気持ちは本物であろう。

そう思い野菜を分け与えれば彼が頭を下げる
んー、1ファンとして中々心に来るなこれ…

立香は小さく「ドクター」と呟いてるし…

しばらくすれば船が近づいてきて野菜が運ばれていく、それを見届けて、運び終わったところで船を離せばあちらの方の甲板に大勢の人。そして奥の方に一等大きな男
彼らが一斉に頭を下げて手を振る。

中央には不死鳥と着物を着た男性

立香が手を振り返したことを諌めずに、杖で空中に文字を浮かべた



【あなた方の行く末が良いものであることを祈って】



私はこの言葉がどれほど無責任なものか知っているけれど。少しだけ願ってしまう者だ



――――交わる――――




(死者は某コックさん)


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