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二日後
小さな小舟を助けた立香の頭を殴ればなんで殴られたのかわからないであろう彼は私を涙目で見上げた
「変なものを拾わない!!」
「なんでぇ!?だってこの人死にそうだったよ!!?なんかすっごくお腹なってるよ!?」
「コイツの腹を満足させる食料なんて………………あぁ、あったわ」
目の前に座る青年は立香から分け与えられたであろうパンを口に含みながら眠っていた
トレードマークであろう派手な帽子。
上半身を惜しみなくさらけ出し背中には彼の誇りであろう髭の生えた頭蓋骨
とりあえず、お帰りいただくのは彼の腹を満たしてからだろうか。いや、立香の今後を考え、コイツの運命を考えると合わせたくない想いしかないんだが…
「ちゃんと面倒見るからっ!!」
子犬か何かかこいつは…
おねがい!いいでしょ?と縋り付きながら懇願する人類最後御マスターはたいへん情けないことに半泣きだった。
いや、出来るがぎり頑張って助けてあげようとするのは立香の美点の一つかもしれないけれど…コイツとなると話が全く変わってくる…
「…ダメ」
「ねえちゃんんんんんん!!!」
「生き物はメジェド様とフォウ君で我慢な、さ、いっ!!!」
「あぁぁぁあああああああ!!!???」
せいやっさ!
気合十分な掛け声とともに眠りながらパンを食べる男、炎拳のエースに魔法をかけてどこか遠くの島へと飛ばした
本音としては海にリリースしたかったが流石に死んでしまう気がしたのだ
ほら、能力者だからさ…私って優しい。能力者を勢いに任せてリリースしなかった私優しい
立香には可哀想だが諦めてもらうしかないのである
〜数日後〜
「ねえちゃーん、なんか氷の道作って自転車で海渡ってる兄ちゃんがお腹空いたって言ってたから招待したー」
「りつかああああああああああ!!(激怒)」
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