番外編等 | ナノ


▼ 6


意識が浮上してきた。何かに横になっている気がする。ふわふわとした意識の中、誰かが隣にいるような気配に目を開ける

―――潮の香?

海の音は聞こえないのに。頭を支えて起き上がり、布団をどければ周りがカーテンで覆われていた。保健室か。確認するように呟けば、名を呼ばれた




「ウィステリア先生」
「?」




誰だろう。今だ覚醒には程遠い頭で考えつつ、ゆっくりと振り返る。


チュッ


ご丁寧なリップ音に何かが唇に触れたような感覚。脳内に?マークが浮かんでは消えていき、情報を処理することのできない頭がぐるぐるとめぐる。その間に何度も何度もついばむ様に落とされる何かを理解して、その体を付き飛した。

混乱する私に、それを行っていた男はにっこりとほほ笑んで見せると、自身の舌で己の唇を舐める




「賭けは僕の勝ちのようです、ティーア先生」
「ひ、卑怯でしょっ!!」
「何を言ってるんですか。記憶のない貴方に行わなかっただけでも十分紳士です」
「アウトだ!アウトだ!!」
「セーフですよ。ティーア先生。」




これで僕のですね。にっこりとほほ笑んで布団を引き寄せていた私の手を自らに引き寄せる。淑女にするような動作で薬指に口づけを落としてから、また笑った




「ティーアさん、海は存外、明るいんですよ」
「――ッ」
「貴方が逃げても、僕は全力で追いかけます。貴方が陸で暮らしたいというなら海の近くに家を建てましょう。貴方が子供を望まないなら二人で幸せに暮らしましょう。貴方が望むものを、僕は全力で貴方に貢ぎましょう。だから、貴方は貴方の愛を僕に下さい」
「だまし討ちみたいな形でやってる自覚はある?」
「勿論。でも賭けは賭け。貴方が僕の手を取ってくれるなら、僕は全部我慢します。卒業まで待てというなら待ちましょう。存外、我慢強いんです」




それ、もしかして取らない選択もあるんじゃないのか…?横切った可能性に希望を見出して、ちらりと彼を見た。けれど彼は笑みを深めた後、どこかで見た様な真顔になると言い放つ




「もしも僕の手を取ってくれないならこの場で犯します。貴方は生徒に慕われているから多くの生徒が見舞いに来るでしょう、それでもかまわず、むしろ見せつけるように凌辱したあと、海に引き吊り込みます。僕、海の中で人が息できる魔法薬の調合は得意なんです」
「わかった、卒業まで待っててくれるかなジェイド君」
「喜んで」




目がマジだった。ガタガタと震える肩を彼の胸に寄せられて、頭頂に何度かキスを落とされる




「僕だってあなたに酷いことはしたくないんです。でも僕以外に靡くようなら考えがあります」
「聞きたくない」
「そういわずに。とりあえず浮気をしたら人魚薬を飲んでもらいますね」
「えっ」
「人に戻るたびに僕と性交しなければいけない人魚薬を飲んでもらいますね」




なんで、二回もいうの。顔を覆いさめざめと涙を流せば「貴方が浮気をしなければ杞憂ですみますよ」と追い打ちをかけられる。ほほ笑まれた。



本当に、誰か助けてほしい…。


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