番外編等 | ナノ


▼ おまけ的な


「ティーア先生」
「何かなジェイド・リーチ君。君に愛称を許した覚えは…って、君なんで大口開けてるの。閉じなさい」




 本を閉じながら口を小さく開く彼にそういえば「やっぱりわかりませんよね」と言われ、残念そうな顔をされた。何がしたかったというのか。そして全く進まな授業。一々茶々なんて入れなくていいだろうに、そもそも赤点取ったから授業しているのであって、しなくてもいいんだ本来は。選択科目とはいえ総合単位に響くからこちらが善意で行っているのにこの生徒はっ




「先生、知っていますか」
「何」
「海って、意外と明るいんですよ」
「…は?」
「楽しみですね」




 ニコニコと笑うその姿に、何か、昔感じたような寒気に足を引き、それと同時に鳴ったチャイムに早口で補講の終わりを告げた。そのまま早足に廊下を出て職員室へと向かう。鳥肌の立った肌が産毛立ち変な感覚で、脳内を駆け巡る懐かしい感覚が腹正しく、目を細めた。

だからこそ気づかなかった

 目の前からご機嫌に歩くリリア・ヴァンルージュ君が視界に入らず、駆け足で廊下を進んでいたために、出合頭の角でぶつかった。そのまま私は尻もちをついた形で倒れる。痛みに顔をゆがめた時、頭の上から水音が響き、次に聞こえたのは何かが割れるような音だった。




「いったぁ。ご、ごめんヴァンルージュ君、怪我は…」
「や、やってしもうたぁあああああ!!」
「え“?」




珍しい彼の絶叫と、疑似感を覚える感覚に私の身体は悟った。




―――あれ、これもしかして時間逆行リターンズでは????



 
 視界の反転、反射で目を閉じた私が次に見たのはひたすらに広がる青で、どこかの島の岸辺に腰かけて座っていたのだ。どこよここ、そして、視界の端で見える小さな子供のような人魚に、頭を抱えたのだ。補講を受ける私の中での問題児である彼を小さくした姿に何もいわず立ち上がると背を向けた。




「あ、あのっ!」




呼び止められた。その事実に舌打ちをして、振り返れば、海と砂の境目ぎりぎりまで身を乗り出した彼が言う




「もしかして、人になった人魚姫ですか!?」
「眼科お勧めするけどその前に少年頭大丈夫?」




この平凡顔を目に収めておいて人魚姫かと問いかける神経すごいな君。向き合うようにして砂の上に座り、私は彼を見つめた。そして少しだけ考える。…さて、これからどうすれば、元の世界に帰れるのだろうか。











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