番外編等 | ナノ


▼ とある夢魔は過去を見る

自分がまだ小さいころ、本当に赤ん坊だったころ、私は母親に教会に預けられた。年老いた神父が管理する教会はステンドグラスが美しく、それを見るためだけに多くの人が訪れる幻想的な場所。森の木々が一本道を作りまるで導くかのように建てられたそこは多くの人々を魅了し、時には癒す、私の、いいや、『僕』の自慢の家だった。

けれど、それも僕が来たことによって終わりを迎える。いいや、正確には年老いた神父が、神父が死んだことで、手入れをする人間がいなくなり、ぱったりと人足は途絶えてしまった。

普通の人間ならば人里に下りて生活もできただろう。けれでこのころの僕はただの臆病で何も知らないただの子供だった。なまじ夢魔だったからか何も食べずとも生きていけてしまった。

それからはひたすら、寂しくて寂しくて何度も神父様や母を呼んでは泣き暮らしたものだ。眠たくなるのなら眠って。だけど夢の中でも泣いて。そんなとき、一人の少女が夢の中に迷い込んだ。
いいや、僕自身が彼女の夢の中へと迷い込んでしまった。




『…ねぇ、なんで君は、私の夢にいるの?』
「ひ、と?」




上から降りかかるのは安心させるように優しい声音で話しかける声。
久しぶりの自分以外の声に顔を上げれば、どこか迷惑そうに見る角度によっては茶色にも黒にも見える瞳が細められていた

女性らしく小さい口は不愉快そうに歪められて否定の言葉をこぼす




『ちがう。私はこの夢の本来の持ち主。ねえ。君は誰?というか何?』




だれ…?…なに?

その言葉がなぜか僕という存在自体を否定する言葉に聞こえた。
大体、僕が何かなんて、僕自身にもわからない。わからなくて苦しくて泣いて助けを求めているのに、彼女が、勝手に僕の夢へと入ってきた彼女が否定する気がして叫ぶ

けれどそのあとに彼女は怒った。怒って怒鳴って頭を殴られた。そして、それが久しぶりの人とのふれあいだったんだ。




それから僕と彼女の波長がいいのか、夢での逢瀬は続いていく。逢うたびに警戒を解いて笑いかけてくれるその姿に僕はいつも嬉しかった。

不思議なことに彼女はぼくとまるで同じ時を過ごすかのようにいつも姿は変わらない。

数十年たっても数百年たとうとも、彼女は変わらない。それは少しずつだけども確実に遅い成長をする僕と、私と過ごしていてもだ。けれどそんな些細な事どうでもいい。彼女と、香と笑いあえるならそれでいいんだ。

一人称を変えて、神父様の部屋から引っ張り出した魔術の書を片手に、覚えた魔術を香にお披露目する。それが毎日の私の日課だった。新しい魔術を覚えるたびに香は手を叩いて褒めてくれる。すごいねと頭を撫でてくれる。失敗して落ち込めば抱き上げてくれる。そんな何気ないことが私はとてもうれしかった。

そして百年間ずっと香を想って作り上げる杖は自分の誇りも同義。なんせこの杖がきっといつかどこかの時代で会合するであろう自分と彼女を引き合わせてくれるはずだ。きっと彼女を守ってくれるはずだから。

この感情に汚らわしい愛欲も恋情も不要だ。

いいや、汚らわしいという言い方はひどいかもしれない。この、私が香を想う気持ちはそんな安いモノじゃない。見守りたい守護したい大切にしたい。親愛というにも重い何かだろう。だけどそれを彼女はきちんと受け止めてくれる。



…いくら大きくなったからと言って塩対応されても私の気持ちは変わらないぞぅ。



日課である水晶に手をかざしながら次はどのような杖を生み出すか思案する。
そして知らずに笑みを浮かべるのだ

うん。今日も私は大丈夫。なぜなら、小さいころの孤独感に比べたら随分と幸せだ。

人とは違う時間を生きてきた。今後もずっと生き続けるだろう。だけれど。きっとこのかの彼女だけは私が生き続ける限りあり続ける。




「さて、と。おはよう香。今日も元気に仕事に行ってるかな?」




最近は怒られてばかりだし随分と疲れていたようだから昨日の夜は夢にお邪魔しなかったからね。少しだけ視てもいいだろう。…これが屑と言われる所以かもしれないが、大丈夫これしきの事で香は私に怒りはしないからね!

だって彼女、私が結婚してもどんだけ女性と一晩王の話やほにゃららをしても冷たい眼差しを送るだけで何も言わなかったし!………別に泣いていないさ。甘やかしてもらえるギャラハッド君がうらやましいとか思っていなかったさ。本当だよ

私が千里眼を使って現代で慌ただしく朝の準備をして飛び出す彼女を見つめた。




「今日は雨かぁ。足を滑らせないといいけど」




そう、私がこぼしたとき、一瞬地面が揺れた。
故意的に、揺れたのだ

目を見開き、思わず立ち上がった瞬間、人理が崩れる。そして




「香ッ!」




広がる赤に力なく倒れた私が英霊として復活を果たした彼女に泣きついて張り倒される一年前の話


















マーリン


一応主人公公認のストーカー。本人からしたら毎晩夢で逢ってるけれど主人公からしたら2〜3日に一回の割合。ある意味主人公に最初についた最強のセコム。主人公に対して不埒な夢を見た場合マーリンなお兄さん(弟)がお説教(物理)に行くぞ★とりあえず悪夢を魅せる。ちなみに彼がひとりで教会に居た年数は大体半世紀くらい。アヴァロンに香専用の庭園を持ってる。日本に縁深い花々が季節によって庭園を彩るとのこと。ただしまだまだマーリン本人が納得できる出来ではないので見せたことがない。
少なからずとも主人公に依存している自覚もあるが悪いとは思っていない。ただし主人公に冷たい眼差しで見られることは割と耐えるので少しは女性遊びを自重した過去もある。良くも悪くも主人公第一主義、マイロード見守り支え主義なので二人がわちゃわちゃしてれば幸せとか言い出しそうで怖い。




主人公


一応ストーカー公認してはいるけれど度が過ぎれば鬼のように怒こるので(一週間面談禁止)ほどほどにすることも大切。懐はでかいし基本的にあまり怒らないのでよほどのことしなければ塩対応にはならないはずなんだけどなぁ…(塩対応順位、マーリン=ソロモン>土方>>>ジルドレ(術)=黒ひげ(場合によってはマーリン、ソロモンと場所が入れ替わる)>エジソン=ニコラ・テスラ>ダヴィンチ>>その他(危険)>>>>l超えられない壁l>>>>その他(安全)>>>>ジャンヌ系統=王家組(フランス)=エジプト組>>ニトクリス>子供の鯖>>マシュ>>>>ぐだ男)※その他から上はやらかした方々である。
ジャンヌ系統の場所にたまにメイヴちゃんが入ってくる






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