番外編等 | ナノ


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「へーえ、それで逃げ帰ってきたのだらしないわね」




冷たく女王メイヴは微笑みながら指先で鞭を弄る。
冷笑ですら美しい彼女は甘えるように王に判決をゆだねた。どうするのか。殺すのか、処分するのかを。けれど王は興味がないと言わんばかりにそれを否定する。優しさではなく合理的な方を選んだにすぎないけれど、ひとまず二人のサーヴァントの命は今、この時だけは繋がった

退室していく二人を見据えながら、メイヴは気づいたように声を漏らす




「あら、あの二人にモーちゃんの事聞くの忘れてしまったわ。…けれどいいわね。どうせすぐに逢えるもの」




愛おしい。そういわんばかりに頬を染めて恋する乙女のように熱い吐息をこぼしながら彼女は笑う。優しい子、賢い子、綺麗な、綺麗な子なのだ。自分みたいに安い女じゃない。好みだからと言って身体を許さない。慈悲深くよく微笑みを返してくれるそんな子。夜に眠れなくてお酒を煽っていれば寝物語を聞かせてくれた。眠れなくて男と夜を共にしたときは絶対に朝まで起きて湯あみの支度をしてくれていた。

快楽も悦楽も気持ちがいいことは何でも好きだ。周りの人間は最初にそれを知ると離れていくか自分もお零れにあずかろうとするのに、彼女だけは困ったように微笑んで待っていてくれた。側にいてくれた。無償の愛だった。

気まぐれの拾い物はいつの間にか自分にとっての無二になって。自分にとっての最愛となった。

だからこそ、あの子がいればそれでいいと言ったのに、あの子がいればそれが幸せだと確信していたのに、世界で一番愛おしい男は、彼女にとって世界で一番大事な子を奪い取っていくあの光景は今でも夢で見る。


あの頃の私は男を殺して彼女を解放して、そしたらまた幸せになれると夢ばかり見ていた。



そして、彼女に待っていたのは愛している男を殺した達成と愛している男を殺したむなしさ、そして、消えていた最愛を取り戻せなかった悲しさだけ


だけどその苦しかった想いもあと数日もすれば終わる。彼女は今度こそ手に入れるのだ最愛と一番愛した男を!




「待っていてねモーちゃん。大好きよ」




恋人に紡ぐように囁き、魅惑的な笑みを乗せて彼女は踵返す
もうここに用はないのだから。




「楽しみ、楽しみねクーちゃん…そして、アルジュナ?」
「……お前が楽しいならそれでいいんじゃねぇのか」
「……。」
「うふふ、そう、そうね、…そう、でも、私、今は楽しくないのよ。だって、あの子が寝物語を聞かせてくれないんだもの」























「あー、憂鬱だわ、マジだるい。なんでアメリカくんだりまで来て、アイツらに逢わなきゃいけないのかねぇ」




思いっきり嫌そうに眉を寄せて、顔のない王、ロビンは重々しくため息をつく。やめて、不幸は伝染するから




「?どうしてそこまで嫌がるんですか?もしかして生前に会った方だとか?」
「あー、違う違う。というかサーヴァントに生前に会ってるなんて体験してるの、そこでのんびりと杖に乗って移動している奴だけですよ」
「あ、モブ子さん、マスターを運んでいただきありがとうございます!」
「いいのいいの、立香の事だからいつも頑張ているだろうし、これくらい甘やかしたって罰は当たらないから」
「マシュ…!俺、俺!今、魔法使いみたいにホウキにまたがって空をっ…!」
「はい!素敵です先輩っ!」
「可愛いね君ら」
『僕、久しぶりに香がすっごく甘めな対応してるの見たな』
「……??……。ほんとにどこかで会ったかな??」
『あ、いや、こちらの話だから気にしなくていいよ!』




何度も言うけれどソロモンにまだ会ってないから。会う予定もないから。
目を細めた私にロマニが大きく腕を振って見せた。















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