▼ 6
――――終局特異点にて
ゲーティアの一撃が放たれる。誰かが叫んだ。マスターである彼女を守る存在はもういない
守った少女は大きな盾だけを残して消滅した。―――いま、ゲーティアの一撃を放たれた少女は目を閉じる。諦めたい訳じゃなった。だけれど自分はもう無理だと、カルデアに来て、姉のように慕っていた少女にすべてを託そうと、唇を噛みしめた瞬間だっただろうか
「あきらめちゃ、導けないよ」
「―――っ!!香、さん…?」
どうして?
ゲーティアの力の密集体がこちらに飛んで、迫るのに、なんで彼女はここに居るのだろうか
優しく微笑んだ彼女は前を向く。そして自分の胸に手を当て、何かを引きずり出した
金色に輝く何かを
「せい、はい?」
数多の特異点で見たソレを、立香は口にする
「いきたい?立香」
問いかけるその瞳を見返す
酷く穏やかで、ひどく優しいその瞳に、彼女は叫んだ
「いきたいっ!生きたいっ、行きたいっ、活きたい!!!」
生きてまた笑いあいたい
行ってあのゲーティアの顔を殴りたい
また、愛しい後輩と、何気ない生活を取り戻したい
「うん、わかった。じゃあ、私が道を作ろう。―――真名、解放。我が名は藤村香!!別世界、別の時空で、数多の英雄を英霊へと導いた名もなき導き手。
さあ、倒れている暇はないよ選りすぐりの英霊たち!」
大きく杖を掲げた彼女はたった一振りでゲーティアの攻撃を消した
そして大きく叫ぶ彼女の声は、姿は、すべての英霊たちの目に、耳に届く
「私が君たちを援護しよう、だから立ちなさい、そこでくたばってなんになるの、そこで倒れて何が生まれるの、足掻いて足掻いて足掻いて、君らが成し遂げた歴史を守りなさい!
知恵を授けよう、知識を与えよう。その代わり汝らがたどる道は茨となるだろう。されど…―――されど私が導こう。貴殿が英雄となるべき正しき道を…―――っ活路を示せ!宝具展開!!【揺蕩いし旅人】」
展開するのはきっと彼女が別世界で歩んできた人生そのものだ
力強くけれどさやしい光が彼らの足を奮い立たせた
prev / next
目次に戻る