番外編等 | ナノ


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パチパチと肌を焼く熱気と音

視界に広がる赤

焦げ付く嫌な臭いに顔を顰めて私は歩き始める。

何も感じず

何もせず


ただ歩いた


目指すは町の中心。


近くで戦闘の音が聞こえるけれどそれすら無視して、ただひたすらに歩いて歩いて歩いて
皮で作られたブーツが何かを蹴る

きらりと光ったのは紅い石が付いたペンダント。なんかどっかで見たことあるなこれ
けれどそれを拾うことはしない。ただ無感情に踏みつけて砕いて壊す。




「―――しまった、これ、礼装か」




実体化したもので所詮思い出だ。礼装なら使えたかもしれないのに
一人でそう呟きながら、私は歩いた

そして




「あの!香さん!」
「―――、なに?」




呼び止められたから振り向けば、そこに大きな盾を持つ少女とオレンジ色の髪をなびかせた【藤丸立香】にオルガマリーと、クー・フーリン




「よかった!心配していたんです!!あなたもレイシフトしているんじゃないかと」
「あ、あの、マシュこの人は」
「先輩、この方は藤村香さんで、先輩と同じ日本の出身です。成績優秀な方ですから、心強いです!」
「へえ…、あの、私藤丸立香です!」



ニコリと、すべてを安心させるように微笑んだ彼女に私も笑いかける。可愛い。
なんだろう、立香とはまた違う可愛さというか、ごめん、浮気じゃない




「藤村香、よろしく立香ちゃん」
「はい!あ、あの怪我とかはないんですか?一人で行動していましたよね?」
「うん、だけど敵にあんまり遭遇しなくって無傷。もしかしたら私の分までそっちに行っちゃってたのかもね。擦り傷がひどいよ、手を出して?治してあげる」
「あ、ありがとうございまーーー「ちょっと」




手を差し出して言葉を紡げば不機嫌そうな声に呼び止められて、立香ちゃんが反射なのか腕をひっこめた




「慣れ合わなかったあなたが親切に傷を治そうとするなんてどういう風の吹きまわし?」




警戒心Maxでとげのある言葉を吐いた彼女に対して冷めた目を送る




「同じ日本出身で一般人である彼女を気にかけないなんてこと、私には出来ないですよ。…ここに着た瞬間から魔術師は死ぬほど嫌いなんです」




それは私ではない私の本心だった。いや、今は私だから別に本心でもないのか?
困ったようにこちらを見上げる立香ちゃんの腕をとって傷を癒していく。ついでに魔術回路も弄って通りを良くし、ついでだと防御壁も付けといた




「ほぉ、この時代の魔術師にしては見事な結界だな」
「結界?」
「嬢ちゃん気づかねぇか?繊細で緻密、けど頑丈な上級結界が今掛けられてんだよ。俺の師匠でもこんな短時間で作り出すことは無理だろうな」




話す二人を放置してマシュにも回復とNP↑をかけておく。




『彼女は補助専門系統が得意だからね』
「Dr,?それはいったい」
『言葉通りの意味さ。彼女にかかれば宝具一つ通さない結界を作ることだって可能だろうね。けれどそれは人間には過ぎたる力。やった瞬間彼女は死ぬよ』 
「当たり前よ、そんなのがこんな一般出身の彼女にできることだけでも大ごとなのに、ホイホイ出来たら塔の奴らが騒ぐでしょうね」




呆れたような言葉に見られる心配の色を気にせず、私はただ前を向いた






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