番外編等 | ナノ


▼ 主人公とカルデアの日常2

「…なあ。香」
「横にある」
「あぁ」




「おい」
「旦那様の銃なら沖田が持って行ったけど」
「わるいな、……沖田ああぁぁぁぁぁぁあああ!!」



〜戦闘〜
「香!」
「あんまり、舐めないほうがいいよ!!旦那様!」(全員に回避付与)
「おう!」




「か、香」
「嫌」
「まだなにも…」
「復縁は嫌」
「……」







「姉ちゃんと副長ってさ、割とお似合いだよね」
「!!」
「旦那様さ、あからさまに嬉しそうにしないでくれる?ウザい」
「………」




顔を輝かせた副長に対してにべもなくただ当然のことを述べるかのように切り捨てた香に立香は顔を引きつらせて、喜んだ本人は顔を覆った。それでも触れることを許された左手を放さないあたりさすがである。生前妻であった方の香は興味がないと言わんばかりに支給されたスマホを片手で弄った。しかし、ここで注意しなければいけないのは、生前の夫の反応を見てもいないのに冷静に切り返したことで、考えていることがわかり、遠慮がないあたり、流石は元夫婦と言わざる得ない。本人に言えば嫌そうな顔をするだろうが




「あはははっ!土方さんドンマイでーすwwwお姉さんに振られてざまあないですね!…あ、おねえさぁーん、コレ、今日のおやつだそうですよ!」
「おいこら沖田、お前…!」




大声でせせら笑いながらお盆にくずもちの入る皿を三つほど置いているそれを運んできた彼女に土方がうなる様に声を上げた。




「今日はくずもちかあ…。ところで旦那様さ、いつまで手を握ってるつもり…?食べれないんだけど」
「なら俺が」
「私、自分で食べたいんだけど」
「……そうか…」




少し心躍ったようにいそいそと備え付けられる小さなフォークへと手を伸ばす土方に香はその手を叩き落として冷たくまた突き放した。

―――懲りないなぁ

誰に言うでもなく、くずもちの一切れを口に入れながら立香は一人ごちた。
このカルデアにきて何回とも見たやり取り。

けれど不思議と不快だとは思わない。普通なら副長や香に注意すべきだけれど、お互いがお互いに相手を信頼しているからこそ何も包み隠さずに言えるのだろう。それは確かな絆だし信頼があってこそだ。そこに嫉妬がないのかと聞かれれば、自分はもちろんあると答えるだろう。けれど彼は彼女たちの関係も言葉のやり取りも否定しない。


まあ、ほかのサーヴァントがどうかは知らないが




「ところで沖田、俺のはどうした」
「何甘えてるんですか、自分で取ってきてくださいよ」
「お前、ほんとにっ…!」




きっと姉や自分が居なければ怒号でも上げていたのではなかろうか。幸せそうに「美味しいですね!」と香に問いかける沖田は精神的にも強かった。

かちゃん

控えめな音を立てて銀の光沢を放つフォークが置かれ近くに会ったティッシュを香は手繰り寄せ、それで何度もフォークの先端をふきあげると、まだ残っているくずもちの入る鉢とともに土方のほうにスライドさせて置く。




「……」
「……」
「……ね、姉ちゃんがデレた…!!?」




天地異変の前触れか!!
ガタリと音を立てて席を立ちあがる立香は顔をかわいそうなほどに青く染めてガタガタと震え始めた。非常に失礼な反応である。それを咎めずに香はいまだ感動で泣きそうな元夫を今日、初めて眺めた。




「食べないの?」
「夢か…?」
「そういうところがうっとおしい」
「現実だな」
「ほんっとに土方さんメンタル強いですよね!む・だ・に!」
「副長さ、バーサーカーのくせにメンタル強くない?気のせい?」




不思議そうにそう聞く立香に悪気はない。
どこか嬉しそうにくずもちを食べる彼に香が静かにため息をつきながら、お茶を口に含めた




「立香、私はここで退出するね。あと、旦那様、今日は非常にうっとおしかったので控えてください」
「だったら復縁してくれ」
「どんだけだよ、お断りです」




割と本気で嫌そうに言い放ちながら、香は開いた扉の向こうへと消えていく




「副長、そんなに姉ちゃんに引っ付いてたの?」
「…まあ、な…」
「なんでそんなに歯切れ悪いのさ…。まあ、いいけど。あんまり姉ちゃんに心労かけさせないでよ?本格的に嫌われたら元もないんだから」




今は塩対応ですんでるけど、と呟きつつ、立香はお茶を煽った




「んー。まあ、お姉さんが土方さんを嫌うことはない気もしますけどね」
「いや、それは俺もわかるけど…」




優しいのだ、土方を見つめる瞳が。少しだけ笑みを乗せる表情が。

優しいけれど、それはきっとただ親愛の類で、恋情でも何でもない。誰にでも、親しい人間ならば誰にでも向ける表情だ。立香にはもっと優しい色をした笑みを浮かべているだろう




―――なんていうか、副長はどっちみち、もう無理だろうなぁ




それはなんとなく、漠然と思う答え。
親愛は向けられても、彼がかつてもらっていた愛情はもらえない。




―――まあ、自業自得な気もするけれど、それってなんか、悲しい




隣で笑う沖田も哀れだろう
なんだかんだ言いながらも姉貴分と自分が慕う上司をくっつけようと毎日毎日頭を巡らせているというのに。


やるせねえと言わんばかりに立香はもう一度ため息をついた。





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