歌を…番外編 | ナノ


▼ じゅじゅ散歩ネタ

何気ない日だった。真希先輩や野薔薇とグラウンドで思いっきり身体を動かし、今日の授業が終われば街に買い物でも行こうか計画を立てたりして、ちょっと女子高校生というブランドを謳歌する日。―――に、なるはずだった。

事の始まりは女子更衣室で真希先輩と野薔薇が首を傾げて、私に声をかけるところから。

体操服から制服に着替えるため、”黒”に声をかけ、足元の闇の中から制服を出してもらい、体操服を逆に渡した時だった。




「あっれ?おかしいなぁ…。ヨルー」
「んー?」
「私のスカート知らない?学ランは教室に置いてたんだけど…」
「ヨル、私のも知らねぇか?全部ないんだが…」
「え、知らない」




シャツをスカートに押し込んで、スカートのホックをかける。ッと、足元の闇からスパッツが差し出され、それを受け取り足に通しながら首を横に振った。野薔薇と真希先輩が首を傾げたのを横目に、外に出ている黒に声をかけた。「知らない?」【知らなぁい】。
“黒”も知らないらしい。
そんな私たちのやり取りに、野薔薇はシャツと体操服のズボンを身に着けた格好で教室へ、真希先輩もぼやきながら自分の教室に戻っていく。とりあえず野薔薇についていった。




「野薔薇と真希先輩の制服、どこに行ったんだろうね」
「そうね。変な所に置いたかしら。」




首を傾げる野薔薇。私も”黒“に声をかけて探しに行かせた。制服はないと困る。
ある程度他の教室も見回り、野薔薇が一年教室の扉を開けて中にいる伏黒に近寄った。




「伏黒―。私の学ラン知らない?」
「いや、知らん」
「おかしいなあ、ここに置いておいたんだけど…」




二人の会話を聞きながら、私も教室の中に目を通し、固まる。教室の奥に見える、白と黒のツートンカラー。そしてその胴体に目をやって、思わず絶句した。サァ―…っと血の気が引く。この後の展開を予想しつつ、フラフラと野薔薇の近くによって、その腕を掴み、震える手で、問題の人物を指差した。




「の、ののの、のばら…」
「あん?どうしたのよヨル、そんなに顔青くして、あっ、パンダ先輩、私の学ラン知らない?」




野薔薇が怪訝そうに私の顔を見つつ、問題の人物、パンダ先輩に声をかけ、固まった。

ミチッ、ミチミチッ、ミチッ

そんな幻聴すら聞こえてきそうなほど、パッツンパッツンに張る、野薔薇の学ラン。それを身に纏うパンダ。事案だった。もう明確に事案だった。はわわわ。と、私は口元に手を寄せ、思わず横に居た伏黒の腕を掴む。いつもは「やめろ」と一言で斬り捨てる彼も、流石に言葉を失ってそちらを凝視していた。これは、野薔薇の反応が怖い。けれど怖いモノ見たさで横に視線を流し、恐怖で凍った。一級相当の呪霊であるはずの”黒“、通称さっちゃんが私の足元に沈み、震える手で私の足を掴む。そんな私たちの様子に気付かないのか、事案の塊、別名パンダ先輩が無駄にいい声で、




「ん〜?見てないなァ」




―――いけしゃあしゃあと…!!

いっそ拍手すらしたくなるそのとぼけっぷりに、私は一歩下がった。野薔薇の目からハイライトが消える。横に居た伏黒の目は死んだ。




「そっかぁー。どこに行っちゃったのカナー」




平坦な声、平坦すぎる声。
そこで私は気づく、野薔薇の手に愛用するトンカチがあることに。ヒュッと息が詰まり、思わず飛び出そうと身を乗り出したところで伏黒が私の手を掴んだ。死んだような目で「やめとけ」と呟く。「でもっ…!」そんな言葉が私の口から飛び出した。が、時、すでに遅し。

バキィッ…!!




「へっぶぅぅうう!?」




カンカンカン!!!

パンダ先輩がトンカチで殴られる音、そして悲鳴、次に勝者を告げる鐘の音。呪骸であるパンダ先輩が鼻から血を流して床に伏せた。殴った張本人である野薔薇といえば、子供に見せられない顔で先輩を見下ろし、トンカチを片手に握ったまま低く唸る。




「おい、スカァトもねぇんだぞ。それは超えちゃイケねぇ一線だろっ!!」




そうだった、スカートも無かった…!!最悪の想像をする私の耳に誰かが走ってくる音が聞こえる。もしかしたら真希先輩かもしれないと期待して扉の方向いた

バァンッ!!




「たかなぁ↑!!」




―――超えちゃイケない一線…!!!

バキィッ…!!




「お“が”が“ぁ”っ…!!」




カンカンカン!!




「ったく、ゴミ共が」
「絵面ヤバ」
「あわわわわわっ…!」




勢いよく駆け込んできた狗巻先輩が目の前で野薔薇の拳をその頭に叩き落され、地に伏せる。悪態をつき、狗巻先輩からスカートを毟り取って、なぜか首を傾げる野薔薇。あまりの出来事に何もできなかった無力な私。そんな私の肩に野薔薇たちの制服を探してくるよう頼んだ“黒”が飛び乗って、私にそっと耳打ちをした。




【野薔薇ちゃんのスカート、五条さんがもってるよ】
「え“っ」
【しかもはいてたの】
「え“っ」




事案である。その場面を見ていなくてもわかる。事案だった。真希先輩が合流する。真希先輩が手に持っていた薙刀の柄でパンダ先輩と狗巻先輩の頭を撃った。またもや地に伏せる二人の先輩。その様子を見た私は”黒“から知らされた事実を言う勇気もなく、そっとスマホを取り出して通話アプリを開いた。












プルルルッ
「ああヨル?…?何をそんなに慌てて…。え、悟が?…うん、うん、・・・それは、えっと。ああ、わかった。落ち着くんだ。悟には私から言っておこう。ヨルは野薔薇と真希を止めておいてくれ」

後日、【私は生徒のスカートを履きました】というプラカードを下げた呪術界の最強が目撃されることとなる。

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