歌を…番外編 | ナノ


▼ 課外授業が終わってご飯食べに行った一行の話(二章後)

スッと背筋を伸ばし器用に箸を操りながら女は寿司を口に含み、咀嚼しながら流れてきた皿を取る。それだけの動作をただ淡々と行う外村ヨルを虎杖悠仁は締まらない顔で眺めた。見られている本人はこげ茶色の瞳をキラキラさせ、幸せそうに食事を続けており、食べることに夢中なのか普段の叱咤も飛んでこない。
そんな二人の様子を夏油除く三人は少々引いたように見ていた。なんだあの空間。同じテーブルなのにあそこだけラブコメ空間。もう青春してます!と言わんばかりの雰囲気に砂糖を吐き出しそうな顔で野薔薇が五条と席を交換した。

そしてその甘ったるい空気に加えて



ひょい。ぱくっ。もぐもぐ。ごっくん。かちゃん。



詰みあがっていく皿の量がエゲツナイ。もうすでに50を超えた皿に五条は思わずまじまじと外村ヨルを見てしまう。あの細い体のどこに吸い込まれていくのやら。財布の心配は勿論していないが、腹を壊してしまわないだろうかとハラハラする。




「外村おいしい?」
「うん」
「へへ、そっか。なんか頼む?外村食べることに集中したいだろ?」
「うん」
「だよな〜。何食べたい?」
「はまち」
「イカは?」
「エビも」
「わかった!嫌いなもんある?」
「アワビと数の子」
「それ以外頼む?」
「ん」
「了解」




幸せそうだ。好きな子の世話が焼けて幸せそうな男子高校生が一人いる。そしてもう一人はおいしいモノ食べれて幸せそうだ。注文が終わったのか悠仁はパネルを元の位置に戻し、ニッコニコな笑顔を浮かべ、再びヨルを見つめる。もう目が物語っているのだ。恋してますと、目の前にいる少女に全力で恋してますと。本当に、こちらが歯がゆいほどの真摯な想いが伝わってきて五条は思わず親友に目を向けた。居心地が悪かったともいう。



ひょい。ぱくっ。もぐもぐ。ごっくん。かちゃん。



疑似感。何食わぬ顔をした親友は横にあるカウンター席で100皿近い皿を積み上げていた。とても幸せそうである。勿論カウンター席、別々の会計だ。五条の懐は痛まない。でも、でもだぞ。お前、片割れが困ってんのになんで暢気に皿重ねてんだよ!!理不尽な怒りだった。
もしもここに彼の養子である娘二人が居れば「夏油様食べすぎ!」だとか「お腹壊しちゃうよ?」だとか言って止めるんだろうが残念なことにその二人は今任務だ。

ーーーもしかして呪霊召喚系の呪術師って全員燃費悪いのか…?

横に居る外村ヨルは五条の困惑した眼差しには気付かず、運ばれてきた寿司に手を付け咀嚼する。悠仁は悠仁で甲斐甲斐しくも彼女のための飲み物とデザートの注文に忙しい。あ、今お茶のお代わり渡した。

ーーーむしろあそこまでわかりやすく感情向けられて、気付かないヨルってヤバイ??

ヤバくはない。絡む機会が比較的少なかっただけだ。でもそれを主張できるヨルは今、食事に夢中だった。ちなみに悠仁自身もヨルがここまで食べるのは勿論予想外だったのだが、そんなの些細なこと。だって好きな子が幸せそうにご飯を食べてるのだ。自分がお世話してあげなければという変な使命感すら生まれていた。恋は人をココまで盲目にさせる。まあ、まともな恋愛をしたことない五条悟には関係ない話であるが。




「ごちそうさまでした」
「美味しかった?外村」
「うん。虎杖君もありがとう。たくさん食べれた」
「外村が幸せそうで俺もうれしい。次は先生のお金じゃなくてーー」
「?」
「な、なんでもない!!」



静かに手を合わせ、きっちり頭を下げたヨルに悠仁がとろんと蕩けた瞳を向け、話す。多分続く言葉は「次は俺のおごりで行こうね」あたりだろう。なんでそこで攻めないのか。野薔薇が鉄製のスプーンを曲げた。気を抜けば「恋愛初心者が」という罵倒すら零れそうである。勿論ここでそんな言葉を吐き捨て、ヨルに指摘されでもしたらメンドクサイ。一言言ってやりたい気持ちを野薔薇は必死に抑えつけ、勢いよくジュースを啜った。



ちなみに夏油は130皿目で箸をおき、生徒の恋愛模様を穏やかな気持ちで眺め、五条にレシートを押し付ける。計画的犯行、五条の懐はほんのちょっとだけ痛んだ。






呪霊召喚組

ヨル「いっぱい食べた」
夏油「弟子(予定)がいっぱい食べれるように任務をたくさん入れよう」
多分呪霊を身近に置いたり体内に飼ってたりするため燃費が滅茶苦茶悪い。ヨルちゃんが一話でご飯食べるのが早かったのはそういう事。食べるのも早いしいっぱい食べる。食べることは好き。
夏油さんは任務でゲロマズなモノ食べるからおいしいモノが好き。食べることが好き。

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