歌を歌っていただけですけど!? | ナノ


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高校生になった。華の女子高校生である。そしてなぜか虎杖もいた。入学式で目と目が合った瞬間、虎杖はまるで太陽のように微笑むと私の方に駆け寄って肩を叩く




「俺もこの高校にしたんだ!よろしく!」
「あ…、う、うん」




彼が同級生になる事に関しては別に嫌とも思ってないからイイのだ。いいのだけれど…。彼の後ろから覗くソレに顔を引きつらせた。私の顔にどうした?なんて暢気そうに問いかける彼にちょっと笑いかける




「虎杖君。ゴミついてるよ」
「え、まじか。悪い」
「いいよ、動かないでね」



トンっと。目が合っていたソイツに指を押し付けて、簡単な歌を歌い”黒達”に食わせた。AOの時も薄々気づいてはいたんだけれど、ここ、もしかしてこういう系のバケモノホイホイなのかもしれない。まあ、私は餌に困らないし良いんだけど…。




「外村?」
「取れたよ。虎杖君。急にごめんね」
「助かったから無問題(もーまんたい)!」




古いなぁ。でもその真っ直ぐな目は嫌いじゃない。ふふふっと笑って見せれば虎杖がきょとんとした目で私を見つめ、次の瞬間ブワワワッと、まるで漫画のようにいきなり頬を染めた。お??手の甲を口元に持ってきつつ、そっと視線を逸らす姿はまるで思春期の男子である。マジか。



「外村、そう、笑うときもあるんだ…。初めて見た…」
「え、なになに見惚れた??」
「うん…」
「素直ー。」



普通の男子なら照れ隠しに文句の一言でも飛んできそうなのにあっさり肯定する虎杖に正直好感度爆上がりである。可愛いな君。なまじ中身がおばさんなだけに母性的な部分がキュンキュンする。思わず両手を口元に持っていけば「もういいでしょ!」っと赤い顔を隠すように虎杖が私の目を塞いだ。もう少し見せてくれても罰は当たらないと思うよ虎杖。



「それよりも、俺と外村、一緒のクラスだったし、一緒に行こう」
「いいよ。あ、その前に顔から手を放してくれるとありがたい」
「からかわない?」
「虎杖君の反応によるかな」
「意地、悪くね?」
「よく言われる」



そっと手が外されて初めに見たのは少しすねたような顔をした虎杖だ。ぷくぅと片方だけ膨れた頬に手を伸ばせばすぐさま後ろに身を引かれた。



「押し出そうとしただしょ」
「あったり」
「もー。意外と外村意地悪だよな。教室行くぞ」
「はいはい」
「あっ、でも」
「?」



不意に、私の腕を引いて、前を歩き出しかけていた虎杖がこちらに顔を向けてニッと笑う



「何年も一緒にいて、外村のことあまり知らなかったし…、今日はなんだかたくさん知れて、なんかうれしいよ、俺は。」



これが乙女ゲームなら私は彼に決めたかもしれないと思う程、百点満点な答えなのではないだろうか。そこまで仲良くなかった小中の同級生を前にして言う言葉がそれとは恐れ入る。絶対ジゴロの才能あるわ虎杖。心の中で10点の札を上げながら私は彼の引きずられるまま教室へと入って行った。





「ちぇっ…。これじゃまだ、意識してもらえてない、よなぁ…」



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