むかしむかし　ひとりにの　おとこが　それはそれは　うつくしいむすめを　みかけました。　そのうつくしいむすめは　あおいひとみと　そらと　うみを　うつしたような　さかなのおを　もっていました。

　かみは　ぬれはのようにくろく　はだは　たいようのひかりをうけ　まばゆくかがやいていました

　おとこは　むすめに　こえをかけました


ーーーもしもし　もしもし　そこなうつくしいむすめや
ーーーもしや　それは　わたくしのことですか？
ーーーそうだよ　むすめ　あなたは　なんだい
ーーーわたくし　わたくしは　にんぎょです
ーーーそうか　そうか　ではにんぎょのむすめよ　どうしてそんなところにいるんだい
ーーーうみでなければ　わたしは　いきをできないの
ーーーそうか　そうか　でまにんぎょのむすめよ　なぜあなたは　うつくしいのだ
ーーーうつくしいかは　わかりません　けれど　うまれたときより　わたしはこのすがたでした



　おとこは　そこでといかけるのを　やめました　なぜなら　そのにんぎょが　ほろりほろりと　おおつぶの　なみだを　ながしたのです
　おとこは　あわてふためき　じゃぶじゃぶと　うみのなかへと　みをなげました
　
　けれどそこはうみ　あしばなど　すすめば　ありません。　あせったのは　にんぎょでした　にんぎょは　おぼれかけたおとこを　りくへもどします
　

ーーーひとは　うみのなかで　いきはできないでしょう
ーーーそうだ　そうだった　わすれていた
ーーーばかなひと


　にんぎょは　うつくしくわらいました。そのえみに　おとこはみとれます。なんてことはない　おとこは　そのうつくしいにんぎょに　こいをしました。そのひから　おとこと　にんぎょの　おうせはつづきます　しかし　あるとき　にんぎょがおとこに　いいました


ーーーわたくしは　どうやら　ひとに　がいをなすらしい
ーーーそんなことはない　だれだ　おまえに　そんなことを　いったのは
ーーーわたくしは　おとこをだまし　みだらにさそう　おんりょうらしい
ーーーちがう　おまえは　そんな　そんざいじゃない
ーーーいいや　そうだ。　わたくしはそんなそんざいなのだ　なれば　なれば　あなたが　わたくしと　いっしょにいることは　よくないことだろう


　かなしそうに　にんぎょは　そういって　おとこのてを　にぎりました。　ほろりほろりと　そのあおいひとみから　しんじゅのなみだが　こぼれおちます。


ーーーもっと　いっしょに　いたかった
ーーーいればいい　いればいいじゃないか　おれが　だまらせてやるから
ーーーもっと　あなたと　いっしょに　うみをながめて　いたかった
ーーーそんな　かなしいことを　いわないでくれ


　どんなことばをかけても　にんぎょは　ほろりほろりとなくばかりです　けれど　おとこは　にんぎょと　はなれたくありませんでした　けれど　にんぎょは　おとこのてを　ふりはらわねばいけませんでした
　
　ひが　しずみます

　それは　おとこと　にんぎょの　わかれの　あいずでした。　おとこはすがります　おれをころしてくれと　おまえと　いっしょにいれぬのなら　このじんせいに　いみがないと
　にんぎょは　くびをふります　あなたにはいきてほしいと　そこで　にんぎょは　おとこのてを　ゆっくりとはなし　その　ほおを　りょうてで　つつみこみました


ーーーもしも　あなたと　おなじ　かみとひとみをもつ　こどもがうまれたなれば　わたくしを　ころして　もらいましょう。　その　こどもにころされたなれば　つぎの　りんねは　あなたの　はんりょと　なりましょう


　それはまぎれもなく　のろいでした。にっこりと　にんぎょが　ほほえみます


ーーーほんとうはね　きづいていたのです　あなたが　わたくしを　ころしにきた　じゅじゅつしだと


　おとこはいきをのみました。　それは　じじつでした　にんぎょにであった　あのひ　あのとき　おとこが　にんぎょに　こいをしたからこそ　にんぎょはいま　このばに　いまなお　そんざいするのです


ーーーでもね　わたくし　あなたにこいを　してしまったのです　


　それはじぶんも　おなじだと　おとこが　ふるえるこえで　にんぎょに　いいました。にんぎょは　うれしそうに　ほほえみます


ーーーきっと　あなたは　わたくしを　ころせないから　だから　あなたの　しそんに　たくしましょう。


　にんぎょは　おとこに　くちづけました


ーーーわたくしを　ころしにきてね


　きっと　あなたとおなじいろのこどもは　あなたのうまれかわりのはずだから。　きおくがなくとも　あなたに　ころされるならば　かまわない。にんぎょはそのかんがえを　けっしてくちには　しませんでした。

　そのひから　にんぎょは　おとこのまえに　すがたを　あらわすことは　ありませんでした。　ただ　おとこは　まいつき　うみにはなをささげ　にんぎょは　おとこがしんだあとも　まいつき　うつくしい　しんじゅを　たくさん　かいがんに　おきました。









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