転生者を送り続けてたらしばかれた | ナノ


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「あ?直接管理?」
「そうそう!!棗くん頑張ってるから!」
「え、俺なんかしました?なんで神域管理から直接管理に格下げなんですか」
「下げてないよ!棗くん最近神域で長期休み取りたーいって言ってたから、じゃあいっそのこと神格格上げして、旅行がてら自分の管理する偵察してきてもらおうかなって思ったんだよ」
「ソレ、実質格下げ…」
「アゲアゲだよ」
「ええ…」


 直接足運んで現地視察なんて下にやらせればいいだろうに。目の前の上司(天御中主神)はにっこりと笑って俺にそう言った。つか、アゲアゲとかもはや死語だろ。上司の笑みに拒否権がないことを悟り、頭をかいて、俺は口を開く。


「で、俺の担当5つあるんですけど、どこに行けばいいんですか」
「好きな所」
「好きな所ぉ?どこも地獄ですけど」
「あははっ、言えてる。あ、あそこは?最近一区切りついた鬼の世界」
「アマテラス様お気に入りの一つなんで嫌ですよ。好きすぎて1日中日光が当たる鉱山作ったらしいじゃないですか」
「そうだね。たしかに。僕もアマテラスお気に入りに足を踏み入れる勇気はないかな。まあ、太陽があればアマテラスはどこでも見渡せるわけだけど」
「そこはあきらめてますよ、太陽も月も雨も炎も風も、日ノ本という八百万の神が信仰される国においてそれらすべて」
「−−神、だねぇ」


 酷く楽しそうな声だ。愉悦の滲んだ瞳が俺を映す。まるで宇宙の銀河を彩る様に光り輝く不思議な瞳を持つ神。それが俺の上司だ。日ノ本最高神。天照大御神様と唯一互角に渡り合える神。俺たち(神)ですら彼のことを良く知らない。


「ふふ、僕ね、棗くんのこと好きだよ。可愛い部下で、働き者で、ひねくれてて。だからこそ。苦労してほしい。」
「…」
「苦労して、苦労して、苦労して、―――そして這いあがってほしい。最近の君はどうやら苦労を知らないらしい。つまらないって目をしてる。まあ、何百年もあの作業じゃあきちゃうよね。だ・か・ら。その死んだ目。輝かせておいで。人間ってのが時には神の想像を超えると身をもって体験しておいで。棗くん」
「は…?」


 いつの間にか目の前に来た上司が俺の肩を押した。思わず後ろに手を付こうとするが、大理石を磨き上げた無機質で冷たい感覚はせず、まるで何もない空間が広がっているような感覚。顔だけ後ろを向ければ見覚えのある大きな穴が見えた。


「実はね、君を落とす世界は決めてたんだよ。棗くん。君、最近よく耳にするだろ?呪術廻戦って名前の世界。君が送り出した子たちもいる世界。さあ、行っておいで棗くん。ああ、安心していいよ。君はただ普通に仕事をしてくれればいいんだ。後は、人がどうにかするさ」


 優しさを滲ませて、上司が俺に手を振ったのが見える。でも、でもだ、俺は叫びたかった



「こんのっ、クソ上司ィィィィイイイイッ!!!」
「はっはっはっはっは!!」


 楽しそうに笑ったアイツを強く睨みつけ、俺は穴の中に消えた

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