転生者を送り続けてたらしばかれた | ナノ


▼ 5

 くいっ

 不意に喉元のチョーカーを引かれる様な感覚がして、目線を下にやる。先ほどまで何ともなかったそこにはピンっと張った鎖が見えて眉を顰めた。どうやらお呼びのようだ。ゆっくりとした足取りで張り詰めるように可視化された鎖を頼りに歩く。勝手に消えたくせに呼び出すために可視化させるとは、性格が悪すぎる。

 意趣返しに鎖を逆に引き返した。反応はない。そりゃあそうか。半分諦め。半分意趣返し。意味はなかったが。


「呼んだ?」
「ッ!」


 突然現れた五条に肩を震わせ、振り向くと同時に膝から力が抜け、床に手を付いた。…何された?今。
 理解が出来ず四つん這いで顔を上げればしゃがみ此方を見下ろす五条とすごく可哀相なものを見る目でこちらを見下ろす『伏黒恵』。


「神様でも引っかかるんだねー。膝カックン」


 あっはっはっは。と楽しそうに笑いながら俺の頭を何度も手のひらで叩き(いたくはない)、「これが問題の元凶ね」と伏黒に紹介するクソ契約者(五条悟)。「もういいんで、話してやってください。可哀相ですよ」と言い放つ彼に感謝しつつ、俺は触れようとした五条の手首を掴んだ。


「お?」
「死ね。糞やろう」


 そのまま腕力だけで男を投げ飛ばすが壁に叩きつける一歩手前で不自然な挙動で宙を回り、床に足を付いた。


「もーっ、危ないでしょ!」
「ッチ」
「惜しかったな。」
「ほんとにな」


 伏黒の手を借り立ち上がる。簡単に礼を言って、こちらに近づく五条を睨んだ。


「ほんの少し悪戯しただけじゃん」
「腹立つ」
「慣れろ」
「あれ?仲良くなってる?いいの?伏黒。一応面倒ごとの元凶なんだけど」
「あんたに遊ばれてるの見て可哀相になりました。あんまり虐めないでください」
「それは無理。だって俺のだもん」
「はー。しんど」


 遠くを見つめてそう吐き捨てれば横に立つ伏黒から同情を貰い、伏黒の反対側に立った五条には再び頭を遊ばれる。なんで俺、こんなのに捕まったんだろ。俺のせいか。


「とりあえず自己紹介ね!こっちは伏黒恵。今現在問題事二人に困ってるよ。で、こっちは棗。一応神様ね。問題事の元凶だけど俺と契約(一方的かつ不利益)してて、問題事解決のために力を貸してくれるから。」


 君たち、来期の一年で同級生同士だから引き合わせたってわけ。仲良くね。俺の頭から手を外さずにそう言った五条に俺も伏黒も一瞬だけ視線を送り、手を握る。


「神城棗だ。俺のせいで悪いな」
「いや、なんか理由あったんだろ。伏黒恵だ。よろしく」


 五条よりもよほど話が分かる彼に、俺はそっと微笑んで見せるが、ほほ笑んだ瞬間、俺の目を覆った五条をもう一度投げ飛ばした。本当に人をおちょくらねぇと死ぬような奴だなテメェは!!


「お、おい」
「?」
「気を付けろよ」
「おう?」


 投げ飛ばし、はーっと、息を吐けば伏黒がどこか躊躇したようにそう、俺に言った。


「どうかしたか?」
「いや、ただ…」


 言い濁す伏黒に首を傾げつつも、その問いはまたもや俺に絡みついてきた五条の前に消えた。


ーーーただ、さっきあの人の口元が歪に嗤ってたから。


 その言葉は俺の耳に入らず、空気に溶ける。

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