転生者を送り続けてたらしばかれた | ナノ


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 五条悟の圧に負けて頷いてしまった俺は五条に連れられて、彼が拠点とする場所に連行されていた。端から見ればなんてことはない。ただ男二人が何かを話しながら歩く光景だろう。でも俺は違う。俺には見えているのだ。わざわざ可視化させなくてもいい鎖をちらつかせ、前にに進んでいる五条悟が。


「ああ、そう言えばさ、名前、どうする?」
「名前?俺には棗という名前があるが…」
「そうじゃなくて、苗字と名前。流石に俺も神さーー、棗の正体を上の連中に言うわけにもいかないんだよね」


 わかる?そう言った五条はすでに何か考えでもあるのか、鼻歌でも歌いだしそうなほどに上機嫌でこちらを見ている。


「まあ、何となく」
「なんとなくかぁ。いいけど。」


 ってことで、コレ名前ね、俺の遠縁ってことになってるから。はいっと手渡して渡された書類を受け取って、五条を見る。名前をどうするのかと聞いたくせに、すでに名前は決まっていたらしかった。

神城 棗 
 五条家の遠い親戚にあたり、両親は不慮の事故で死亡。孤児院で幼少期を過ごしたのち、中学の卒業を経て事務職に就職した。職務中、特級呪霊に襲われ、呪力に目覚めたため、来期、東京都立呪術高等専門学校入学予定。齢17。男。

 まとめればこんな感じだった。ご都合主義かもしれない。そして俺は17歳というほど若くはない。言いたいことが多すぎて五条を見上げれば、聞こえませんと言わんばかりに空を見ていた。


「五条、お前コレ…」
「書類上とはいえ、俺一応君の恩人だから」
「いや、コレ…」
「年齢は見た目だよ見た目」
「流石にコレは無理が…」
「…文句あんのか?」
「ナイデス」


 わずかに鎖が引かれる感触に思わず手のひらを返せば、五条は「だよね〜」と機嫌を戻した。怖い。しかも少し言葉遣いも荒かった。猫被って生きているのかもしれない。いや、でも言いたいのはそこじゃないんだ。


「なんで俺が寺小屋に…」
「え、言い方古いね??」
「は?」
「しかも寺小屋って、そんなレベルの低い事学ぶわけないじゃん。」


 言い方が爺wwww。大量の草すら生やしてそう言い放った男にそっと親指を下に向けた。シンプルに地獄に落ちてほしい。そんな俺に始終付きまとって、男は足を止めると、こちらを振り向く


「さてと、着いたよ。今から棗が”僕”と一緒に住む場所。ようこそ、呪術高専へ」
「地獄」
「さあさあ!中に入ろう!!」
「ココが修羅」
「失礼だね本当」


 でも、だーめ。そんなこと言っても逃がさなよ。両肩に手を置かれて耳元で囁かれる。そんな男の手を振り払って俺は学内に足を踏み入れ、眉を顰めた。ピリピリとした”何か”が肌を突き刺すように俺を見ているような…。値踏みされているような感覚。



「結界…?」
「あ、わかるんだ」
「いや、違う?これは…。」
「…」


 覚えのある、力だ。どこで見たことがあるのかまでは覚えていないが、俺はこの感覚を知っているし、俺はこの結界を張った人間を知っている気がする。さて、どこだったか。神縛りの鎖と転生者以外に考えることが増えた。頭の痛いことだ。考え込む様に俯き、黙り込む俺を見つめる五条に「行くぞ」と声をかければ、五条は「はいはい」と言葉を返し、案内するように俺の前を再び歩き始める。

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