転生者を送り続けてたらしばかれた | ナノ


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「おっ、神様も俺のこと知って――」
「お前、嘘つくならもう少しまともな嘘つけよ」
「えっ」
「五条悟ってあれだろ?転生者たちがこぞって『私っ、五条悟と付き合いたいの!』って言い放つくらいの色男だろ?お前どう見ても不審者じゃん?」
「神様いきなり馴れ馴れしくなったね。でも俺ほんとに五条悟…」
「ん?いやまてよ。そう言えば擦れてた頃、一度だけ一人の転生者がチートアイテムが欲しいとごねたから投げやりに神縛りの鎖(一回きり)使用許可をダメ出しで申請して受理された記憶があるな…?」


〜〜回想〜〜


『どんなチートキャラでも一発で捕まえられて大人しくさせられるアイテムが欲しいのっ!!』
『あ?チートぉ〜?ああ、少し待て上司に言ってやる』
『え、一回きりでもいいなら神縛りの鎖の鎖を貸してあげたらいいよ。』
『ってことで一回だけならお前が死ぬまでどんな奴でも使役できる鎖だ』
『神様ありがとう!これで夏油傑を無力化できる〜〜!』
『さっさといけ』


〜〜終了〜〜
 

 あ〜。あ〜〜〜。なんかいたな。そんなの。なんかやったなそんなの。不意に思い出した記憶に、俺はそっと俺と横にいる男以外には見ることのできない鎖を摘まみ上げて頭を抱えた。上司になんて報告しよう。絶対に笑われる


『あっはっはっはっはwwwwゲッホwwwっはっはっはwww棗くんだっさぁぁあああwwww』

 
 脳裏によぎった上司の顔に思わず殺意を覚えたので報告するのはやめよう。自分で自分を傷つける必要はないな。わざわざ愉快犯にネタを提供する道理はない。ってことはだ、こいつマジで…


「五条悟か…」
「さっきからそう言ってるのに…??」


 あ、いや、それよりも


「で、転生者がなんだって?お前の元には数えきれないほど送った記憶がある」
「ああ、うん。すごく迷惑だったよ。」


 それは悪いな。簡素に謝罪を済ませれば目の前の男、五条は頬を膨らませて事の端末を話し始めた。曰く曰く。彼は昔から女性関連がなぜか長く続かなかったらしい。そのため、いろいろな女性と付き合いっては別れてを繰り返していたのだが、ある日、五条に振られた女が泣き喚いたことがすべての始まり


『どうして!?なんで!?私は悟と付き合えるようになる様にって神様にお願いして承諾してもらったのに…!どうしてフラれなきゃいけないのっ…!?』


 その一言でたまたまその場に出くわしたもう一人の元カノも『は?ソレ私もなんだけど!?』となって大混乱。最初はコイツ等頭おかしいわと思っていた五条もその後出会って、付き合って、別れるとほぼすべての女がそう吐き捨てたのを目の当たりにし、ただ事ではないと自覚したらしい。その後なんやかんやあって俺が過去に出現した記録を掘り起こし、ここまで来たと。鎖は最近別れた元カノもとい転生者から言葉巧みに奪い取ったとか。お前は女の敵だな。


「あ、でも俺、小さいころ神様に会ったことあるよ」


 そのおかげで見つけるのも楽だったしね。そう言って笑った男になぜか寒気を覚えて思わず距離を取った。え、会ったことあるって何?


「その反応は傷つくなぁ。と言っても神様覚えてないと思うよ。酔ってたし。もうベロンベロンにさ。」
「前後不覚になるほど酔ったのなんてそれこそ20年は前のーーー、って、あああああっ!!お前あのガキか!!」
「あのガキでーす」


 覚えててくれたんだー。とか軽く言う男に俺は忘れたくても忘れられなかったのだと叫び返した。そう、忘れたくても忘れられなかった。神域に迷い込んだ子供。見知らぬ場所にいたくせに泣きもせず、悟りを開いたかのような目でこちらを見つめていたガキ。そのくせ迷い込んだ神域から出ていく時、その目を輝かせ胸を張りクソ生意気にも堂々と宣った。


『嫁にしてやるよ!棗!!』
『今すぐこのガキつまみ出せ』


 俺の命を実行しようとした式たちは全員まだガキであるそいつにやられた。神域に侵入して初日の出来事である。俺の何が気に入ったのか、そのガキは度々俺の神域に足を踏み入れた。前後不覚になるほど酒を飲み、神域と現実の境界線が曖昧になったから入れたのだろうという俺の予想を斜め上に飛んで、そのガキは我が物顔で俺の神域に溶け込んだ。
 それ以来俺は酒は程々にしようと誓ったし、ガキとはいえ人間が神域に入ってしまえば何が起こるかわからない。
 だから俺はその日、遊びに来ていたガキが満足し、笑顔で帰った後、もう誰も入れぬようにと神域と現世の境界に壁を設けた。それ以来ガキの姿を見ることも無くなってこの出来事は俺の中で少しずつ薄れていき、たまに思い出す程度の思い出に姿を変えていた。
 そんな思い出の中の存在でしかなかった男が目の前にいる。しかもあの五条悟だったというカミングアウトのおまけ付きで

 改めてその姿を確認しようと男に目をやれば男はにっこりと笑う


「で、本題なんだけど神様。俺と一緒にアンタが送ってきた問題事(転生者)、解決してくれない?」
「はぁ?」
「いやぁ、困ってるんだよね。俺。なんせ数が多いし。」


 誰かさんのせいで。その言葉に思わず「うぐっ」と言葉を零した。


「別れるたびに縋りつかれて、泣かれて恨まれて、その恨みが呪霊になってさぁ。」
「ぐっ…」
「しかも俺だけじゃないんだよね。被害者。棘とか恵とか七海とか」
「あ〜…」
「その様子じゃ心当たりは在りまくってるみたいだし。まあ、何となく予想はしてたんだけどね。書物にもそう書いてあったし」


 俺は人の輪廻を管理する者だと神本人がそう言い放った、ってね。ぐさりぐさりと胸にクる様な言葉と共に罪悪感を刺激させようとするその行動に俺は目をそらした。そんな俺の顔を力強く掴み、五条がやけに近い距離感で微笑むと、右手に握る鎖をちらつかせ、言う




「拒否権。あるとか、思ってないよね?」
「…も、もちろんだ…」



 その迫力と神縛りの鎖の圧力に俺は思いっきり首を縦に振った。

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