PTAが怖いんだっ…! | ナノ


▼ 3

・ルイス先生が気に食わないPTA役員を潰す話




めんどくせぇ。必死に笑顔を浮かべながら俺は目の前で俺を品定めするように見つめる男に殺意を覚える。はー、腹にたっぷりの無駄な贅肉携えて何様だってぇの。PTA様かこれは失礼しました。脳内で数度男をぶん殴り足蹴を行いながらも交渉の内容を進めていく。

さて、なぜPTAを常に怖がる俺がこの男にここまで内心で罵詈雑言を放つのか。その答えはシンプルに俺がこいつを嫌いだからである。PTA内にもクズという人種はいるモノで、此奴はまごうことなく、どこに出しても恥ずかしい屑と言える。汚職は勿論、生徒へのセクハラ行為、教員への恐喝、資金の横領、出せばキリがないだろう、そんな屑でも家柄だけは一級品で口も達者故にPTA側からの交渉役、俗に言う監査としてこの学園内で最近連発するオーバーブロットの原因調査に訪れた。…というのが前置き。こいつ自身がPTA総会に言いつけられた表向きの内容。裏向き、つまり本命は俺たち学園側が此奴の悪事を一つ残らず曝け出させるというより此奴にボロを出させることにある。そもそもオーバーブロッドの件はすでにクロウリーがPTA会議に赴いて吊るし上げられたばかリだ。




「それにしてもルイス先生。貴方はいつ見ても美しい。神の寵愛を受けし美貌という言葉は貴方にこそ相応しいでしょうねぇ」
「ふふっ、お上手ですね」




何当たり前なこと言ってるんだこいつ。俺の顔が整っていないように見えるなら眼下に行くべきだ。ニコニコと笑みを絶やさず近づいてくる男からさり気無く距離を置く。思えばこの5年。教員になったときから此奴のセクハラのような視線には幾度となく晒されたものだ。学生時代は周りの優秀な下僕、別名寮生が矢面に立ってくれていた。優秀な部下を持つと上司は楽だな。まあそうなる様に俺が調教したわけだが。




「ところでルイス先生、喉は乾いていませんかな?遠方から取り寄せた茶葉があるんですよ」
「茶葉?ああ、申し訳ありません僕、実は少々疎くて…。それに、もてなす側の僕が茶など飲めば怒られてしまいます」
「いえいえ、是非飲まれてください。人払いも済ませておりますゆえ」




―――警備員が買収されていたか


スッと目を細めて笑みを零し、耳から下がる十字架のイヤリング(魔法石)に触れる。ほんの少し魔力を流せば確かに、あたりに配置していた警備員の姿はなかった。落とし前は後でつけさせよう。幸いなことに隠し扉からこちらを窺うバルガスとクルーウェルの存在はバレていないようだし。

いそいそと紅茶を準備する男を見据えながら俺は笑みを深め、男を蔑んだ。先ほどからバレていないと思っているのだろうか。その手に持つ茶葉とは名ばかりの法に触れた違法品が俺の口に入るとでも?馬鹿にするのは自分の顔だけにしとけ。




「ゼフェルさん」
「な、なんですかな?」
「僕は授業がありますのでこれで失礼しますね。どうぞ1週間学園をお楽しみください」




最後にとびっきりの笑みを浮かべてやれば至極残念そうに肩を落とした男を一瞥して部屋から出た。さてあとは男がボロを出すのを待つだけだ。




「ルイス」
「クルーウェル。バルガスはどうした」
「監視だ。どうだった」
「学園に違法薬物持ってきてるだけでしょっ引けるんじゃないのか。」
「そうではなく。俺が見ていない所で何かされたか?」




気付いていたとは思うが俺たちは少し遅れてあの扉の後ろで待機していた。その間に何かされたか?

こちらをまっすぐと見据え、そう聞いてきたクルーウェルの瞳は真剣だ。思わずこちらがたじろぐ程度には鬼気迫っているような気さえする。




「何もなかったよ。何もさせなかったというべきか?とりあえず仕込んどいた小型カメラに薬物の写真とあの男が入ってきてからの行動が映ってる。確認でもしてみたらどうだクルーウェル」
「そうだな。後でクロウリーと確認しておく。」




少々乱雑にソレを投げ渡して俺はふぅっと息を付いた。なんというか最近こういう事が多いな。女扱いを受けているような、そうではないような。判断するには酷く微妙なラインで困惑する。冷やかしかと訝しんだがクルーウェルに至ってそれはない。そんな回りくどいことはしてこないはずだからな。…やめよう。今はあの男の動向以外を考えるときじゃない。

雲一つない空を見上げ俺はクルーウェルに背を向けた。


この時の俺は予想していなかった、まさかあの男がこの学園で俺に付き纏い、事あるごとに授業妨害をしてくるとは想像すらしていなかったのである。



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