PTAが怖いんだっ…! | ナノ


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ーーーー食堂にてーーーー


「姫が歌ってるのにデュエットしてくれないなんて、全然王子様じゃないわ却下!!!!」
パッチーンッ!!!

「口笛一つでピンチに駆けつける、大きな犬を飼っていないなんて、王子様じゃないわ!却下!!!!」
パッチ―ンッ!!!

「伝説の剣で姫をモンスターから救えない王子なんてありえないわ!却下!!!!」
パッチ―ンッ!!!

「ロマンチックなシーンで、知らない人の話をベラベラするなんて失礼よっ!却下!!!!」
パッチ―ンッ!!!

「全然ロマンチックじゃない。王子様はそんなこと言わない!却下!!!!」
パッチ―ンッ

「論外!!!!」
パッチ―ンッ!!!

「物騒!!!!」
パッチ―ンッ!!!



……いやぁ、中には理不尽なものもあったとはいえ、ここまで生徒全員袖にされるとちょっとクるものがあるな。困ったなぁと微笑みながら事の端末を見ていた身としては、魔法云々よりも『女性に対する紳士講座』を週に一回取り入れた方がいいんじゃないかと思う。さすがに酷すぎるだろうこれは。何処か荒ぶったようにこちらに視線を投げるゴーストのお姫様が次!っと言い放つ




「黒とこげ茶色の凛々しい耳が素敵なあなた」
「自分だな。それでは行って参ります」
「うん、頑張ってきてね(意訳:無様な姿を見せるんじゃねぇぞ)」




もう、お姫様もまともな男にありつきたいんだろうな。イデアが希望を込めた眼差しでこちらを見ている。スッと物音一つさせずに立ち上がったペインが目にもとまらぬ速さで傅き、ゴーストの手を取った。

流石はペインというべきか、所作が美しい。洗練された一連の流れに、姫様の方も少々驚いたように目を見開いた。




「許可なく触れる無礼な俺をお許しください。美しきゴーストの姫君。」
「まあ、美しいだなんて…」
「いいえ、貴方は美しい。透けるように白い肌、触れれば壊れそうなほどに儚い手足、貴方が微笑めば花は咲き誇り、貴方が歌えば小鳥たちは囀ることでしょう。そんな貴方の隣に私は立ちたい。どうか、この愚かな恋の奴隷にご慈悲をくださいませんか…?」
「まぁ…。まあまあまあまあ!」




真摯に訴えられる言葉には熱が入る、いやでもペインが自分に恋する男だと勘違いし、心を揺れ動かされていることだろう。お姫様の方も頬を染めて、自分に傅く男をその瞳に捕らえる。まあアレでも王族に連なる家系の出身だと聞いているし、獣人だ。女性の扱いはお手のものというわけか。




「でもいけないわ。私にはイデア様が…」
「きっと…、貴方が選んだという男に私如きが意見するのは大罪でしょう。それでも、貴方が手を取ったという男の手を払い。私を選んでほしいのです。貴方のためならこのペイン・シェパード、例え火の中水の中、病で伏せようと、この身体に穴が開こうと。繋がれた手を離しません」
「ペイン様…」




うっとりと目の前の男に酔うゴーストに俺は内心で拳を握った。頑張れペイン!

床に転がっている生徒達も固唾を飲んで姫様とペイン(婚約してきた男)を眺めている。あと一押しだとペインも確信したのか、そっと瞳を伏せて、再び顔を上げると口を開いた




「…。貴方が望むなら荒野に咲く氷の薔薇も、絶海に落ちると言われる奇跡の宝石も、龍が守ると言われる虹色の真珠で作られた首飾りも、この世全ての美しいものを貴方に捧げるため、この命を使いましょう。どうか、この手を取っていただけませんか…?美しき、ルイス寮ちょ…んんっ、ゴーストの姫君」




・・・・・・・。その場に静寂が広がり、ブォンっとした風を切る音共に姫様の怒声が会場に広がった




「誰よ!その女!!!」
「すみません寮長!!失敗しました!!!!」
バッチーンッ!!!!!!(一番大きい音)




「「「・・・・・・・」」」
「はぁああ〜〜〜〜〜っ…。」




あの駄犬、やりやがった…。一番最悪なことをやらかしやがった。今までで一番大きな音を立てて頬を叩かれたペインが倒れはせずとも可笑しな態勢で固まる。思わず片目を押さえて大きくため息を吐いてしまった。

あれが俺の名前でなかったとしても、口説いている女の前で他の奴の名前出すとは何ごとなのか。そりゃあ、殴られる。

キッと涙すら浮かべた目でこちらを睨み、ゴーストのお姫様は言った。とうとう俺の番である。まあ、さっきやらかした奴のせいで難易度は跳ね上がったが…。




「そこの王子様みたいな貴方っ!!」




俺だな。(確信)

俺だけど”ルイス“先生のキャラじゃないため、ビクッと肩を揺らし、不安げに辺りを見回して、見せる。いや、百パーセントで俺だけど




「あなたよあなた!稲穂色の髪に海のような瞳が美しいあなた!」
「えっ、あ…、もしかして僕…?」
「ええ、そう。貴方よ!さあ、私と一緒に歌いましょう?」




ニッコリとほほ笑んだ姫様の目が、明らかにこいつも張り手を喰らわせてやると言わんばかりに燃えていた。え、これってそういうイベントだったか??そんなにペインのアレが癪に障ったのだろう。そこは同情する。けどな。俺に当たるのは違うだろ。

“ルイス”先生の仮面をかぶりつつ、どこかでカーンッとゴングが鳴った。



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