PTAが怖いんだっ…! | ナノ


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リクエスト(主人公双子の入れ替わり)




事の発端、というか事件の最初は案の定、学園長からの提案だった。曰く曰く、お互いの教育環境を知るために、適当な教員を一定期間交換しないか?という申し入れが、RSAから提案されたらしい。

まあ、平和主義というか、基本的に気性の穏やかなRSAの申し入れは、NRCにとっても有難く、願ってもいない申し出だったこともあり、話はスムーズにまとまった

そして選ばれた教員が俺である。あちらからは弟のキャロルが選出。人選に双子だからこいつらでいいだろうという大人の浅はかな考えが見て取れるようだ。勿論、最初は断固固辞を貫ていた俺ら双子だったが、伝家の宝刀と言わんばかりに「PTA総会も〜」なんて濁されれば首を縦に振らざる得なかった。大人ってきたねぇ。


「と、言うわけで、ナイトレイブンカレッジから一週間交流見学と授業をしに来てくれた、ルイス・エルヴァ先生だ。皆、ルイス先生が困っていたら手を差し伸べるように」
「「はいっ!!」」


うっわ、まぶしい。

微笑みの裏で思わずそう思った。キラキラしい。リアルで輝いてやがる。どいつもこいつも「人生満喫してます!生きるって楽しい!!」みたいな顔してる。反吐が出るな。その純粋無垢、大人の汚いところ何も知りません!人を信じることを信条としています!困ってる人がいたら無償で手を差し伸べて見せましょうという顔付きを歪ませたい。


「ふふ、頼りがいのある生徒さんですね。初めまして、ご紹介に上がりましたルイス・エルヴァです。この学園の教員、キャロル・エルヴァ先生とは双子の兄弟でね。皆さんのことはいい生徒さんだと聞いていますから、来るのが楽しみで仕方なかったんです」


嘘だけどな。

彼らには悪いとは思う。だが俺は正直良い子ちゃん貫く坊ちゃん嬢ちゃんの学園になんざ来るつもりはなかったし、なんなら足を踏み入れる想像すらしたことなかった。二度とその門を跨ぐことはないと思っていたのに、あのくそ学園長、いい度胸である

―――…まあ、でも。

クスクスと俺が笑いを零せば、横にいた教員が怪訝そうに俺を見る。


「どうかされましたか?ルイス先生」
「ふふ、いいえ。なんにも。ところで僕、もう少しだけこの学園のお話を詳しく聞きたいなって思うんです。」


だれかこの学園のことを説明しながら案内してくれると、うれしいんですけど…。

ちょっとだけ媚びるような声音と、甘えるように各寮の寮長だという生徒たちに微笑みかける。瞬間にその寮長の後ろから「自、自分が!!!」とか「私が案内します!」という主張の嵐。別に君らお呼びじゃなんだけどな?

お淑やかそうに見えるように、「わぁ、うれしいな」と両手を合わせて喜んで、「でも皆さん授業があるでしょうし…」など、思ってもいない言葉を紡ぐ。

ーーー扱いやすような、生徒たちだなほんと。

嬉しいから笑っているかのように見せ、俺は目を細めた

―――ほんと、大人の汚さを教えがいがある。




忘れんなよロイヤルソードアカデミー生。こちとらナイトレイブンカレッジの教員、根っからのヴィラン(悪役)だ。掌で踊らされる快楽を教えてやる。












ーーーナイトレイブンカレッジにてーーーー




「い、いやな予感がする…」
「ん?どうしました?キャロル先生」
「えっと、あの、ルイスがイケナイ事考えてそうだなあって」
「ああ、貴方方双子ですし、そういうこともわかるんですっけ?」
「ほぼ勘みたいなもの、なんですけど…」


双子の兄、ルイス・エルヴァは弟の僕から見ても完成された美を持ってると思う。綺麗な稲穂のような髪が風になびき、美しい海色の瞳を細めれば誰もが見惚れる。小さいころから神に愛されたような子供だった。

それなのにその性格はまさに悪役

搦め手、駆け引き、勝負、人心掌握と大人をも舌を巻くほどに賢く、それに特化したように賢い頭脳。僕だってパパとママの子だ。顔には自信があるし、ルイスに負けず劣らずの整った顔だろうさ。

でも、性格も考えも僕らは正反対だった。

僕が日陰の人間ならルイスは日向の人間で、ルイスが夜の人なら僕は昼の人間だと常に言われ続けたと思う。人を弄び、その掌で転がすことが得意だったルイスと人に寄り添い、掌で包む込むのが得意だった僕。複雑な感情を抱かなかったと言えば嘘になる。

けれど僕らは小さいころ、どうしても二人で一つだった。僕らに出来ないことはないし、僕らに敵う人もいなかった。そんな双子の兄を僕は好きだったし、兄も僕を、僕だけを可愛がってくれたと思う。今も家族として大好きだ。

だからこそ不安


―――ルイス、あの子たちで“遊ん”でなければいいんだけど…。


ルイスからしたら苦手な人種だろう。だからこそ彼は自分好みに“調教”しようとする。それが容易に想像できてしまう。その“調教”の嫌な所は本人すら“調教”された自覚がないところ。

これからの一週間、僕は双子の兄であるルイスのしでかすことに怯えつつ、このナイトレイブンカレッジで過ごすことになるのだろう。


―――お願いだからルイスっ!あんまり変なことしないでねっ…!!
















 
 その人は濡れた鴉のように漆黒の美しい髪を持っていた。思わず見とれる彼らに、冷たい顔(かんばせ)が春の音連れを告げる雪解けのように綻んで、慈悲深い笑みが浮かぶ。


『えー、皆さん。本日から一週間、ルイス・エルヴァ先生と交換で、我が校に訪れたキャロル・エルヴァ先生です。教科はルイス先生と同じ数学。わからないこともあると思いますので、困っていたら手を差し伸べるように。そしてオクタヴィネル寮筆頭に対価を求めないように!!』


何処かで鋭い舌打ちが聞こえた。


「ご紹介に上がりました、ロイヤルソードアカデミー教員、キャロル・エルヴァです、兄のルイスからは生徒のみなさのこと、“いい子”で“純粋”な“面白い”子たちであると聞いています。」


今日は楽しみにしてきたんですよ。そう言って上品に見えるようほほ笑んだ。僕の言葉に沸く音量に鏡の間が揺れる

な、なんか可哀相になってきたな…。そもそもルイスの言う三つの言葉は「人の裏を疑わない程度には扱いやすく純粋で、掌で転がしがいのある面白い、いい子」って意味なのだ。猫を被って生活してると言っていたけど、まさか本当にガチ猫かぶりなんて…。

僕の横でクロウリー学園長が頭を抱え、クルーウェル先生が口の端を引くつかせる。すみません。ルイスにも悪気があったわけじゃ…。いや、ルイスのことだし悪意しかないのかもしれない。

そっとため息をついた僕は、ただこの一週間が静かに過ぎることを祈るしかできなかった
















―――監督生目線―――

  美しい人だった、ルイス先生も綺麗だけれどソレとは別ベクトルの美しさ。
星の散りばめられた、静かな夜を思わせるような容姿。彼が先生の言うキャロル・エルヴァだと気付くのは時間がかかったし、言ってはアレだが、ルイス先生とは似ても似つかない様な人。顔の造形は似ていても、双子なんですと言わなければその雰囲気の違いに目が滑って気づかないだろう。

ルイス先生が微笑めば花が咲き乱れ、輝かしいエフェクトが飛ぶ、でもあの先生が小さな笑みを落とせば雪が小さく綻び、蝶のエフェクトが飛ぶ、そんな気がする。

そう、そんな気がする人が


「な、なんでオンボロ寮に…?」
「ルイスが、猫被るのきつくなったらオンボロ寮ってところに行くといいって、言ったから…」


めいわく、だったかな?

ほにゃっと頼りなさげに下がった眉に、不安げに揺れる空色の瞳、


―――うっわ、顔がいいっ…!!


流石ルイス先生のご兄弟というか、双子というか顔がべらぼうに良かった。その顔でそんなこと言われちゃったら「平気です」の言葉しか出て来ない。


「勿論、女の子の部屋にいるって、こう、世間体は悪いし、あの、でもっ、僕、猫被るの得意じゃないのっ…!」
「え、ルイス先生の双子の弟なのに?」
「僕にできることはルイスに出来ないけど、ルイスに出来ることは僕苦手だから…」
「えっも。え、ソレでよく二人とも数学の教員になりましたね?」
「…母さんが、ミドルスクールの、数学の先生だったから、算数と数学だけは僕もルイスも人並みには…」


モジモジと身体を縮めて一生懸命主張する姿、なるほど、こっちが素か。間違ってもルイス先生と素が似てますねなんて言えない。正反対の色合いと正反対の性格と正反対の特技不得意って何???エッチじゃん(※この監督生は混乱しています)


「先生達って、そんなに正反対なのに喧嘩とかしないんですか」
「喧嘩しても僕はルイスに口でも手でも勝てないよ…」


勝てるのは勉強と魔法くらい…。だんだん萎れていく姿がなんだか可哀相だった。ところでルイス先生って魔法の実力高かった気がするんですが、それに勝てるキャロル先生って実はチートキャラ…?

宇宙を背負いながら考える私に、キャロル先生は何を思ったのか、思い出したように口を開く


「あ、でもね、僕もルイスも、喧嘩して最初に謝るのはルイスなんだよ、ちいさいころから」
「意外です」
「でしょ?でも喧嘩なんて一緒に住んでた時すら一年に一回あれば多い方だったかなあ。―――ルイスね、僕のこと大好きだから、あんまり喧嘩に持っていかなかったの」
「エッ」
「僕もルイスのこと大好き。」
「エッ」
「だって僕ら二人で一つだよ?半身だよ?嫌いになれるわけないじゃん。」
「えっも」


なんかよくわかんない言葉を監督生ちゃん話すなぁ、ルイスも基本流しとけって言ったしいいかぁ、とキャロル先生が呟くが私はそれどころじゃなかった。嘘じゃん双子エッチだわ。双子ってだけでもエッチなのに二人で一つって何ですか。


「先生たちは、お互いに恋人ができたらどうするんですか?」
「どうもしないよ。きっと僕らはお互いがお互いに干渉しつつ、幸せに暮らしていけるようにサポートする。僕は騙されやすいから、何かあったらルイスに相談して、ルイスはああ見えて仕事人間だから、僕がちゃんと家族を見るように促す。そうして僕たちはきっと生きていくよ」
「―――本当に“家族”なんですね」
「うん“家族”。お互いの足りないところ補うように僕らは成長してきた。その過程はこれからも崩れることなく、僕とルイスを結ぶ。―――だからね。最初ルイスが君を気にかけたって報告した時」
「はい」
「僕、ルイスに殴り込みに行かなきゃって思ったの」
「え“」


まって、ホワホワしてるのにすごい過激なこと言い始めた。その冷たい顔に似合った怖いことを言い始めた彼に、思わず生唾を飲み込んで、えっ?ともう一度聞く。


「生徒に手を出したのかって思った」
「あ、ああ…」


そう言えばPTAが怖いんでしたねお二人とも


「でも違ったんだって思ってほっとしたんだよ。監督生ちゃんさえよければ、卒業してルイスのお嫁さんに来てほしいなって僕は思う」
「やめてください推しと結婚する自分は解釈違いなんです!!」
「そっかぁ」


でも、でもね


「僕も、監督生ちゃんとなら結婚したいなぁ」


素で話せる人って、結構特別なんだよ?知ってた?ちょっとだけ悪戯でもするような笑顔。それに私は死んだ。

―――推しの弟さんが尊い


あれ、私乙女ゲームにトリップしてた??










―――後日―――






「監督生ちゃん、お土産をーーー、どうしたいきなり拝みだして」
「尊い双子のお二人を神として崇めます」
「いちごのショートケーキでいい?」
「チョコがいいです」
「はーい」




「キャロル先生!」
「?」
「あ、あの、ルイス先生にこの手紙を!!」
「ああ、わかった」
「それで、その…」
「?」
「ルイス先生にもう一度蔑んでもらうには、一体どうすれば…」
「………」





「ルイスゥゥゥウウウ!!!!僕の生徒たちになにをしたの!!??」
「大人の汚さを教え込んだだけだ」
「何してくれてんのさ!学校中大混乱なんだけど!!」
「人生経験だと言っておけ」
「ばかあぁあああああああ!!」




「何したんですかルイス先生」
「い・ろ・じ・か・け
「ええ…。」
「そうだなあ、お子様たちには刺激が強すぎたかもなあ?なんせ学園内にいた三割のカップルを破局させてきたし」
「ゲス」
「キラキラしたものは汚く染め上げたくてな。俺は何もしてないぞ?あっちが勝手に破局していっただけだ」
「その顔で誑し込みましたね!!?」
「ちょっと優しく、ちょっとか弱く、ちょっと紳士的に、時々ちょっとしたワルイトコ見せるだけでコロッと落ちたのはあっちだ」
「悪い大人!!悪い大人だ!!!PTAに訴えれば負けるのは先生ですからね!!??」
「おいおい何言ってるんだ監督生ちゃん。証拠を残すヘマを俺がするとでも?」
「げ、げすだ…」





「―――まあ、これでアイツの負担も減るだろう」
「…何か言いました?先生?」
「もうちょっと様子を見るのも面白そうだったなと」
「性根腐ってますよ」
「嫌?」
「あ“〜〜っ、顔がいい〜〜〜〜!!!」







登場人物

主人公
 きらきらした子供と夢と希望詰め込んだ目を見ると吐き気がする悪い大人。猫ちゃんは剥がさなかった。悪い大人に騙された君たちが悪いんだから人生経験と思いなさい。ロイヤルソードアカデミーに今後足を踏み入れる場合、今度は教師も堕としにかかる。根っからのヴィラン(悪役)。落としていった男子生徒や女子生徒は弟に少なからずとも邪な感情を抱いていたからついでに堕としてきた。言うつもりはない
 本人なりに双子の弟は大切だから過ごしやすい様にと根回しをしていた。地頭はいいし、魔法も上手いが、魔法の腕はキャロルに負けるらしい。喧嘩して謝るのは大抵この人から



キャロル・エルヴァ
 番外編の主人公的立ち位置。根っからの善人。ルイスに対して執着なのか、依存なのかわからない感情を持ってる。でもルイスからも同じような感情を向けられてるので両想い。双子の兄が何より大切だし、兄に好きな人ができても純粋に応援できる”家族“
 ただし兄の引き起こした問題の被害を被るのは大抵キャロルなので一方的にぷんすこ怒ったりもする。大抵流されるし本人も流されるのはわかってる。兄が兄なりに自分のことを気にかけているのは知ってる。






以下、コメントできたSSR実装したら場合の奴(個人の勝手な妄想です)
※ちょっと順番が違う(すみません)

キャロル・エルヴァ/ルイス・エルヴァと言うように書いてます


アイコン:棺に輝く太陽と美しい月が背を合わせるように描かれる
公式セリフ:「守りは任せるよ、ルイス!」「攻撃は任せたぞ、キャロル」
職種:ロイヤルソードアカデミー教員/ナイトレイブンカレッジ教員(双方とも担当科目数学)
年齢:共に25
誕生日:11月25日(いい双子の日)
身長:178/180
利き手:右/左
出身:陽と陰の王国
部活:元馬術部/元アメフト部
得意科目:錬金術/召喚術
趣味:読書/身体を動かすこと全般
嫌いなこと:兄の失うこと/弟に害が及ぶこと(双方PTAに行く報告書も嫌い)
好きな食べ物:コーヒー系/ココア系
嫌いな食べ物:ココア系/コーヒー系
特技:魔法/交渉

タイプ:ディフェンス






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