PTAが怖いんだっ…! | ナノ


▼ 主人公とバイコーンの会話





バイコーンとルイス・エルヴァの会話(※お口の悪い主人公が生息しています)




息を飲む。自分を召喚した人間の顔をまじまじと見つめ、バイコーンは息を飲んだ。美しい。ただその一言に尽きる。まるで職人がその一生をかけて作り出したかのような、どこか神秘的な輝きを持つ青年は、天使をも思わせる笑みでこちらを見つめている。一歩、その自慢の蹄を鳴らして近づこうとしたとき、バイコーンは落胆した。


―――乙女である


 しかも性別は男だった。高揚感と幸福感に包まれていたバイコーンは顔をそらす。一瞬でもあの顔に見惚れた己が恥ずかしいといわんばかりの態度に、召喚者は困ったなあと微笑むばかり。それに少しだけ悪戯心がわいた




『なんと身の程知らずか、愚か者。…しかし、その顔は素晴らしい。男という点においては目を閉じよう。人間。貴様純潔を我に捧げよ。』




海色の瞳が驚きに見開かれる。そうだ。乙女であるというなら乙女でなくせばいい。簡単なことだった。バイコーンは嬉々として契約を持ちかける




『我は強い、どうだ人間、貴様の純潔と魔力を捧げれば、我は貴様の従となろう』




その顔には性別を譲歩するだけの価値はある。何よりその柔な身体では外敵からの身は守れないだろう。バイコーンは目の前の青年がこの条件に飛びつくものだと確信した、だからこそ、彼の口から洩れる言葉に思わず二度見する




「我だのなんだの中二病全開で人の尻狙ってんじゃねぇよ愚図」




二度見した。

天使の笑みが広がっている。

聞き間違いかと安堵のため息を零し、バイコーンは目の前の獲物が涙を流し、己との交渉に飛びつくのを待った。けれどいくら待てども彼はニコニコと笑みを浮かべるばかり




『契約を、交わさないのか…?』
「誰がお前みたいな薄汚い馬に魔力渡すかっての。妄想と現実の区別化つかないならママの胸に戻ってヒンヒン泣いてろ畜生風情が」





笑顔である。そこでようやくバイコーンは現実を受け入れた。あの天使のように端麗な顔から紡ぎだされた言葉。まぎれもなく彼の口から出た言葉である。恐ろしい。なんと恐ろしいのか、その顔に似合わず腹の中に隠し持っていたのは毒蛇だったらしい




「こちとらクソガキ共のセクハラ紛いの行動に腹立ってんのに、召喚者と自分の力量すらはっきり把握できない糞馬。俺がお前みたいな童貞魔獣欲するわけないだろ身の程を知れ」『どっ、どうてい…!?』
「処女はいやだいやだというくせにいざ処女が目の前にいたら涎垂らして嬉々として襲う童貞魔獣だろ。処女じゃなくて喜ぶのも経験豊富な女性にリードしてもらいたいって根端か?はーー、これだから童貞は。人でも獣人でも人魚でも魔獣でも頭ん中で考えることは一緒ですって?笑えねぇな」




 この時点でバイコーンの心は折れかけていた。相も変わらずすべてを許してくれそうな笑顔で紡ぎだされる言葉はダメージが大きい。麗しい顔というものはそこにあるだけでそもそも場を乱す。そして笑顔と言葉のギャップは時に凶器にもなる。今回の犠牲がバイコーンだっただけの話だ。

 気づけばバイコーン体は震えていた。それはそれはかわいそうなほどに震え、ご自慢の尻尾が股の間に隠れる。その様子を気づいているだろうに男は言葉を続ける




「そういえばバイコーンの毛皮は高く売れたな。いい酒が買えるだろうし、角は魔法薬学の材料にもってこいだ。…言いたいことわかるよなぁ?」




両手を胸の前で組み、こてんと首をかしげて見せる姿は、それだけを見れば可愛いだろう。周りの人間は何をしているのか、こいつの笑顔を見て、媚びたような仕草を見て目をにし、声援を送るだけだ。バイコーンと違い、彼らには聞こえていないのだから仕方ない。




『わ、我に、何をしろと』
「ははっ、聞き分けのいい子は嫌いじゃない。簡単なことだよ糞馬。俺と契約した振りをしろ、俺に服従の意を示せ」
『なっ…!!!』
「生憎、手持ちにバイコーンはいらねぇ。それとも何か?献身的にも未来の魔法士のために角を捧げ、俺の酒代にでもなってくれるって?ん?」




一時的な演技か、己の命か、そう問われたたバイコーンに、選択肢は実質一つしかなかった。




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