PTAが怖いんだっ…! | ナノ


▼ 3


「さいっっっってい!!!」
「お、落ち着け監督生」
「さいってい!さいってい!さいっっっってい!!!きもい!こっちよらないで!!」




監督生はなぜ生徒たちがあれほどバイコーンを望むのかわからなかったし、エースもデュースも「強いから」としか答えなかった、ちなみにエースもデュースもあまり使い魔に関しては勉強していなかったため、強いからという漠然の知識しかなかった。

バイコーンの特性を知った学園唯一の紅一点に言われる容赦のない罵倒は彼らの心を抉る。追い打ちをかけるように「近寄んないで変態!!」という言葉はトドメであった。

 ルイス・エルヴァ先生ガチ勢(オタク)である監督生は烈火のごとく怒り散らす。しかも毎年恒例だとたまたま一緒に作業していたルイス先生に言われて彼女は激怒した。推しになんてことをっ…!!とオタクの心は叫ぶ。

つまりた、いつもお世話になっている先輩方は去年あの辱めをルイス先生に行ったのだ、絶許であった。酷い巻き込みである。でもやっていた。何ならルイス先生の猫かぶり「僕…、そろそろ恥ずかしい…」に監督生は決意する。

ちなみに彼女はキチンとルイス先生の本性を理解しているし、そんな天使じみた思考回路じゃないことも理解している、でもあの顔でそんなことを言われるとルイス・エルヴァ(ガチ勢)オタクとしては黙っているわけにはいかないのだ。「そんなに怒ってくれるの、監督生ちゃんだけだよ、ありがとう」と健気に言ってのけたルイス先生がどれほどつらい思いをしてきたのかと思えば彼女の胸は締め付けられた。

勿論。かつてはサバナクローの悪魔とまで言われたルイス・エルヴァはそんな柔でかわいらしい精神を持っているわけがない。

奴はやるときは十倍にし、のしをつけて送り返す精神の持ち主である。

 監督生は意を決して二年生の合同授業に乗り込み、叫ぶ




「聞きましたよ去年の召喚授業の話!!生理的に無理です!最低です!先輩方っ!!!」
「ま、待ってくれ誤解なんだ!」
「だまらっしゃい!!失望しましたリドル先輩!あんなか弱い先生に、公然の前でっ、辱しめなどっ…!!」
「か弱い…?」




 ジェイドの脳裏には前回、挑発的に、しかも、色気たっぷりに笑うルイスが浮かび上がり、ますます首を傾げた。いや、あの方は精神的にも強かった気がしますね…。と、頭を振るが、ふと思う。

もしもあの顔が自分だけをじっと見つめて「怖かったの…(涙目)」と、小ぶりで愛らしい唇から零せば自分も暴走するかもしれない。

本性を知っていてもあの顔に涙を浮かべさせるのは万死ではないのか…?いくら中身が粗野で男らしいといっても顔はあの顔であり、何ならジェイドはルイスにガチ恋をしていた。引っかかる未来しか見えない。




「ジェイド先輩、確かにルイス先生は芯は強いかもしれません。けれどあの瞳に涙を浮かべて、震える唇で紡ぎだされた言葉を私に疑うことができるとでも?」




―――それはただ純粋に掌で遊ばれてるだけでは…??




「できませんね」




頭では理解できていてもできないことは多い。ジェイド・リーチは本心からそう思った。もしも自分がその場にいたら監督生と一緒にルイス先生に対してバイコーンを要求した主犯格の馬鹿どもを締めていただろう。


ちなみに去年の主犯は彼の兄弟てあるフロイドだったのだか、そんなことなど覚えてなかった 




「はあ…、何を言っているんですか監督生さん。リクエストを許可したのはクルーウェル先生でしょう」
「それを大義名分に処女とわかったルイス先生を舐めまわすように見たんですね。最低です先輩方」
「アズール君もう何もしゃべらない方がいいっすよ!!」




球でも打ち返すように返した監督生の言葉はアズールの胸に刺さった。胸を押さえて蹲る姿に二年の生徒全員、次は我が身かと構える。

ちなみにだが勿論彼らは処女とわかり、わずかに頬を染めて恥ずかしがる()ルイス・エルヴァを見つめたし、拝んだりもした。尊かったのである。

それでも、それでもだ、もしも、もしもだぞ、毎年毎年ルイス・エルヴァの処女が守られているかを確認するべくバイコーン召喚を先輩が後輩に指令を出していると知れば、目の前にいる阿修羅(監督生)はオバブロするのではないか…?

 絶対に隠し通さなければと二年全員の心が通じ合った瞬間、監督生はその可憐な容姿からは想像つかぬほどに冷たい言葉を吐いた




「そんなんだから童貞なんですよ」




全員にクリーンヒット、オーバーキル、効果抜群の言葉であったことをここに示す。男子校なのだから童貞でも仕方ないのではないかと反撃する猛者もおらず、卒業していたにもかかわらず不名誉なレッテルを貼られた男たちも思わず胸を押さえて死んでいく。

ここで俺は卒業していると主張しても、監督生による蛆虫を見下すような冷たい視線を向けられ、『なにを必死になってるんですかキモ…。』という慈悲の欠片すら感じさせぬ声音を返されるだろう。女か口が立つのだ。男どもは泣いていい。

監督生の怒りは、二年生の教室にルイス・エルヴァが顔を出すまで続いた。











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