PTAが怖いんだっ…! | ナノ


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なんっっっにもねぇな。

 シンプルな感想と、共同生活を始めて三日目に突入したあたりで俺は思った。 手に持ったココアがほんのりと湯気を上げつつ、空気に消えていく。ウツボからのアプローチなにもねぇな。オクタヴィネル寮の生徒だから警戒してたけれど、ほんとうになんっっっにもねぇな。ちなみにオンボロ寮の工事は突如出現した魔物によって振出しに戻ったらしい、世知辛…。誰だよペットの魔獣放置した阿保は。
 ちなみに俺と監督生ちゃんの生活も日々、つつがなく進んでいる。特にやべーことはない。何なら常に学園長の使い魔が見張っている状態なので何をしようでもない。最初提案されたときはとうとう変態が動き出したのかと身構えはした。お前がPTAにしょっ引かれるぞ…と、まあ、実態は俺のみの監視みたいなのでよしとする。監督生ちゃんまで監視すると言われたら「こいつです」と突き出すところだった。どこに?勿論PTAに決まってんだろ。




「先生、おはようございます」
「おはようなんだぞっ!」
「おはようユウちゃん、グリム君」




 朝食はできてるよ。と、リビングに並べられた朝食を指させば、「いつもすみません!」と声が飛んでくる。まあ、一人分も二人分もあまり変わらないし、グリムの方に至ってはツナ缶開けるだけなので、別にそこまで難しいことではない。少々行儀悪く食パンを食んだまま新聞へと目を通した。ロイヤルソードアカデミーの方で一般教師が生徒に手を出して退職したことが見出しに載っており、思わず食パンを詰まらせかけた。マジか…。
 今頃新聞を見ている校長やクルーウェルの高笑いが聞こえてきそうで怖い。お前らそういうところだぞ、一応教員なんだから、む、無関係じゃないから(震)
 それにしても、生徒に手を出すなんて、どんだけ顔がいい生徒だったんだろうか。俺より良かったのか気になる所だし、そもそも、男のはずなんだが…。



【いけないと思いつつも手を出してしまった】
【日々のストレスに耐えきれなかった】
【彼だけが自分に優しくしてくれた】 



 等を述べた犯人は現在逃走中であると。阿保だろ警察。ちなみに犯人を警察に引き渡すまで拘束して監視していたのはPTA、保護者の皆様である。強い。さすがPTA。そういう子供の敵に容赦しないところが怖い。
 



「ユウちゃん」
「はい?」
「今変質者が逃走中らしいから、あんまり学校外には出ないようにね。ユウちゃん女の子だから特例で学園外の大型スーパーまでは行けたでしょ、普通の生徒は商店街までだけど。」
「あ、はい。そうです。…それにしても、変質者…、それは怖いですね、何したんですか?」
「生徒にセクハラ」
「うわ…」




 俺がやったわけじゃないのに、監督生ちゃんの本気の言葉と、グリムの蔑む眼差しが痛い。俺はそいつのような失態はしないように日々PTAを怖がっていようと思う。それにしてもこの教員の顔どっかで見たな、どこで見たんだったか…。思い出せん。何度かうんうんと唸って考えても思い出せないので、忘れたい記憶だったのか、まじでどうでもいい人間だったのかのどちらかだと思う。
 カップを机の上に置いて、十字架を象る魔法石を加工したピアスを耳にはめながら、首を傾げた。




「ユウちゃん、学校の準備はできたかな?」
「ばっちりです先生!」
「俺も大丈夫なんだぞ!!」
「そっか、そっか、じゃあ10分後に出ようかな。歯とか磨いておいで」




俺の声と共に、間延びした返事を返して監督生ちゃんたちが洗面台の方へと向かった。いいよね、普通の野郎どもにはない華やかさというか可愛さがあって、そんな存在をまさかあのオンボロ(ガチ)寮で匿っていたことは本気でゆるさないけれど、逆に言えば、どの寮にも所属させなかったことで女の子一人と言えども安心して過ごせていたことは評価せざるえない。マジで褒めるところと褒めれないところがある人だな。自分もソファーから腰を上げて、身支度を整える。さて、今日はどんな生徒の問題行動が起きるやら





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