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「竈門少年に君のことを言われた」
「炭治郎に?」
ぎゅぅっと、苦しくない程度で抱きしめられながら、テーブルに置かれる暖かなミルクティーに口つけて、マグカップを両手で持てばじんわりとする熱にほぅっと息をつく。
「こら、今は俺と話しているだろう」
「…さすがにさ、飲み物やマグカップに嫉妬するのはどうなのかなって、思うんだけど、お兄さん」
「んー?」
すりっと擽る様に肩口に頭を置いて擦り付けるおにいさんの頭を混ぜるように撫でれば、少し強めにまた抱きしめられる
「君と俺の仲を認めるといわれた。けれど、君を泣かせたら奪いますとも、言われた」
「なるほど」
「俺は君を幸せにする、もしも君を泣かせる時があったとしても、それは嬉し涙であると誓う。」
「…うん」
「捨てないでくれ。」
「すてないよ」
「あの時のように、置いていかないでくれ」
「いかないよ」
おにいさんを置いて、もうどこにもいかないよ。私も貴方と生きたいから
「おにいさん」
「…」
「好きだよ。昔から、貴方だけだよ」
「―――、名前で、読んでくれ」
「うん、杏寿郎さん」
包み込まれる彼の香りが心地よい。息を吸い込んで、目を閉じ、体重を預ければ、手の中からマグカップを抜き取られ、そのままゆるりと指を絡めるとソファーに二人で沈んだ。二人分の体重にギシリと音が鳴る
くすくすと笑う彼に目を細めてもの言いたげに口を開けば、右手の人差し指中指で唇を挟まれるように触れてきた。
「休日は、駅巡りでもしようか」
「汽車が見れないと意味ないよ」
「そうか?俺は君と一緒なら何でもいいが!」
「無欲だね」
「俺はとても欲張りだ」
鬼であった君を、殺さずに、あのまどろみの中で永遠に過ごせたならばと願った俺は、きっと欲張りだ
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