ハイハイさよならまた来世!! | ナノ


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サヨナラ後の話




「え…、え、」
「ああ、思い出したんだ」
「ええええっ!!??」


その日、学校では竈門炭治郎の悲鳴が響き渡ったという。

少しだけ私の話をしよう。私には前世の記憶があった。それは大正の記憶で、私は鬼で、まあ人をかばって死んだ記憶。そして今世で生まれ変わったとき、私を殺したとある隊士とは幼馴染として一緒にお風呂に入った仲である。

そんな彼は思い出す今の今まで恋人であるお兄さんに対しガンを飛ばしていた。曰く「高校生に手を出すのは犯罪だと思います」とのことだ。彼の周りは前世を思い出して歓迎してくれたのに、当の本人がすっぽりと忘れていたのだから笑えない。その幼馴染こと竈門炭治郎は現在、委員会活動(3人だけ)のさなかに思い出してしまったらしく、ひどく混乱していた。容姿は違えど髪の色等はほぼ同じだから理解してしまったのだろう


「…列車の…」
「そうだね」
「…!!??」


肯定して見せれば声のない悲鳴に妹の禰豆子ちゃんがひどくダメなものを見る目で彼を見つめた。彼女はとっくに気づいていたし、なんなら私が高校生に上がって、お兄さんと恋人になったんだよと話せば頭をなでて「よかった、よかったねぇ」と何度も言った。

目の前の幼馴染が私であると気づいて困惑しているのだろうか。

次の瞬間には廊下にしゃがみこんで「っは、ぁぁぁぁぁあああああ…!」と大きめのため息をこぼした彼はどこか困ったような微笑みを浮かべ、こちらを見上げる


「…今。幸せか?」


そう、口にした彼に、私は一度呼吸を置いて、うなずく


「すごく、幸せだよ」
「そうか、…そうかぁ…。」
「ねえ、炭治郎。後悔した?」


我ながら意地悪な質問だ。けれど炭治郎は一瞬だけ瞳を瞬かせると、前世と変わらぬ髪を揺らして首を振る。その瞳に一片の曇りもない。ただまっすぐとした瞳に私は笑みを向けて、そっかと返した。そんな私に炭治郎が立ち上がると見下ろすような形で口を開き、言葉に音を乗せる。


「だけど、煉獄さんの様子を見て俺、自分のしたことが早計だったんじゃないかって思った」
「どうして?結局あの結末は私が望んだことだったんだから、隊士である君は誇れどそんなことを考えなくてよかったはずだよ」
「…なんて説明したらいいのか分からないけれど、たぶんそういうことじゃなくて、んー。多分、煉獄さんは、君に消えてほしくなかったはずなんだ」
「私に?」
「そう君に」


首をかしげて彼の言葉の続きを待ち、私はその赫灼の瞳をのぞき込む。
言いずらそうにしながら、炭治郎がちょっと困ったようにほほ笑んで笑う


「だって、君が煉獄さんをかばった後、煉獄さんはすっごく悲しんだんだ。」
「うん??私鬼だったよ」
「たぶん鬼とかそういうんじゃなくて、純粋に煉獄さんは、君がいなくなってひどく、後悔したんだと思う」


どこか哀愁を含み、炭治郎があきらめたように笑って、こちらを見つめる。


「あとさ、聞いてもらえると嬉しいんだけど」
「?」
「俺、君のこと好きだったよ。幼馴染として、異性として、でも、俺は二回も煉獄さんから君を奪えないや」


悪戯が見つかった子供のような彼の表情に私はただ、なんと答えていいのかわからなかった。そんな素振り一つも見せなかったではないか。彼とはあくまで、年下の幼馴染として接していた。


「でも、もしも煉獄さんが君を悲しませるなら、俺は君の手を取ってもいいよね」


一度だけ私の手を握って、ぱっとはなすと炭治郎が「俺、煉獄さんに挨拶してくる!」と走り去っていってしまう。これから彼はお兄さんと何を話すんだろう。窓へと目線を投げ、近寄ってきた禰豆子ちゃんの頭をなでる。ふわっと頬を掠める風が秋の終わりを知らせ、冬の始まりを告げるように少しだけ寒かった。





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