ハイハイさよならまた来世!! | ナノ


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死んだ。思わず顔を覆い、私はずるずると本棚の後に背中を預け、座り込む。なんで歴史の教科担任の先生がおにいさんなの…!あっちは幸いなことに気づいてないみたいだからいいけれど、というかそもそも記憶があるのかもわからない。炭治郎はなかった。

ため息と共にとんでもない重圧が押しかかる気がして、立てた膝の上に顎をのっけた。




「……女々しすぎ、でしょう」




なんで前世の事ずるずる引き摺っているの私。重い女みたいじゃないか…。
でも、だってしょうがない。数十年の孤独をたった数日で埋めてしまった人だった。興味がないとか澄まして見せても、結局私は、今も昔も愚かな女だ。

彼は、あの後、どう生きたのだろう。

長生きできたのだろうか、幸せになってくれただろうか、誰かを愛し、誰かに愛され、家庭を築けただろうか…。


次々にあふれてくる疑問に、答えてくれる人はいなかった。膝に額をつけてうつむく。ココがいつも人気の少ない第三図書室でよかった。


そう思いながら、ちょうど目の前にある日本の列車百科典とやらに手を伸ばし、固まる。いま、誰か入ってきた気がしたから。




「む?誰かいるのか??」




息を、止めてしまったと思う。
その気配が近づいてくる。ドクドクと、うるさくもせわしなく音を立てる胸に手を当てて、抑え込むように身を縮ませる。

どうして、ここにオニイサンがいるんだろう。なんで、どうして、そんな疑問に答えてくれる人なんていない。

ふいに、近づく気配が、本棚を一つ挟んだ向こう側で止まった




「…。そう固くなるな。君が誰かはわからないが、ここに居るということは静かな空間が好きだと言うことだろう。俺もここが好きだ。すまない。先客がいたとは思わなかった」
「…ぁ…、ぃ、え…」
「それにしても、ここに俺以外がいるのは初めてだな。俺は放課後にここへ立ち寄るが、君はいつもこの時間なのか?」
「…はい」
「そう固い声を出さないでくれ。君が誰だかは知らない。敬語もいらないさ。」




頭上の奥にあった一冊の本が引き抜かれた。それは日本各地の道の駅を記した書簡でーー




「それ、見るんですか」
「…ああ。なぜか気になってな。敬語はいらない。好きなように呼びなさい」




ページをめくる音がした。
本格的に本を読む体勢にでも入ったのか、一つの本棚を挟んだ向こう側にある窓際の椅子を引く音に、そっと息を吐く。

きっと彼は、回り込むなんて言う無粋な真似などしないだろう、私も手に取っていた本を開き、その文字を目で追った。

酷くゆっくりとした時間が流れ、授業五分前を告げるチャイムが鳴る。




「……時間だ。」
「うむ、そのようだな。」
「……私は、反対側の方から出るから、…煉獄先生…、いえ、【おにいさん】はそちら側からどうぞ」
「ああ、わかった」




合計四つ、四方の端に設置されている扉はこういう時に便利だった。いくつもの本棚を抜けた先にあるため、オニイサンが振り向いても私の姿は見えない。逆もまた然り。

次の授業が冨岡先生の保健体育でもあったため駆け足で出ていく。ああ、それにしても、また、話すことができた。それだけで、トクトクと鼓動が響き、頬が緩む。現金なことに、今日が少しだけ、良い一日思えたのだ



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