おねショタ(概念)番外編 | ナノ


▼ 伊黒とオリ主の幼少期

「いぐろっ!いぐろみてっ!へびっ!」
「…ああ」




拾ってきたばかりの小さな蛇を見せて少女が笑った。かわいらしいハイカラさんと呼ばれるような服に袖を通して、腰まである小麦色の髪を軽く結っている姿は控えめに言っても愛らしい。己の手を御椀状にしてチロチロと舌を出す蛇を伊黒に見せてきゃぁきゃぁとはしゃぐ姿に目を細める。つらい修行のさなかでこの幼子の声が酷く癒しだった。

己という、人として異質な目をもつ人間を受け入れてくれた師範の孫娘。恐れることなく翡翠色の瞳に好奇心という色を乗せ、純粋な感情で褒めてくれたのはこの子で、ひどく衝撃を受けたのを覚えてる




『私ね、いぐろの目、好きだよ、片方だけ私とお揃いでで、もう一つはお月さまの色だね』




お揃いなど、はじめて言われた。けれど、それが幼く、傷ついた自分の心を癒してくれたのは事実で、まだ10にも満たないその身体を12にもなる自分は抱きしめたのだ。

その出来事からしばらくして自分に続くように師範に弟子入りしたときは度肝を抜かれた。

刀など普通は持たない時代であり、本来なら褒められることではないし、何より命の危険が多すぎる。まあ、今、彼女が刀を握り、修行に明け暮れている現状から二人の説得(伊黒と師範)は失敗に終わったと悟ってほしい




「それで、その蛇をどこから拾ってきた」
「……神社」
「………」




顔を覆った。

妹弟子は確かにかわいい、なんなら目に入れても痛くはないだろう、けれどこの娘はお転婆だった。激しくお転婆娘だった。木に登るんじゃないといくら言っても登り、着物を着たまま走るんじゃないと言えば袴を着て走り回り、師範が剣士の道をあきらめさせるためにお見合いを(血の涙を流しながら)させれば相手方をいつの間にか幼児返りさせ、しまいには「お姉ちゃんのいう事、聞けるかな?」と、見たこともない表情で言う。なぜだか見てる此方が相手方に申し訳なかった。

いや、最近ようやく10を超えたばかりなわけだし、お見合いはさすがに早かっただろうと伊黒は考える




女子にあるまじき剣だこだらけの手から蛇を取り上げて地へと帰せば、頬を膨らませる藤野の頬を思いっきり挟んで空気を出させた。ぷきゅうぅぅうと酷く間抜けな音がする。




「伊黒…?」
「間抜けず面だな。こうしていれば可愛げがある」
「は??私の顔はいつでも可愛いですけど??」




見てよ、この約束されし完璧な顔。

胸を張って手を当てる姿は大変憎たらしいが大変可愛かった。けれど同時に腹が立った。お前、そういうところだぞ。と、言いたい。けれどこの子供とのこのような掛け合いが当分できなくなると思えば寂しくも思う。




「……、まあ、いい。言いたいことは沢山あるが、修行に励め」
「はぁい」




髪型が崩れぬように細心の注意を払いながら玉飾りのついた頭を撫でて、寝そべっていた岩の上からどく。




「ねえ、伊黒」
「なんだ鏡子」
「どうして伊黒はさ、私に優しくしてくれるの。顔?」
「厳しくされたいならいくらでもしてやるが…?」
「遠慮します。だってさ、私って多分、他の子よりもかわいくないよ、考え方」
「ああ、そうだな、お前の取柄と言えばその顔のようなものだ。師範のいう事も聞かず、この俺の言うことも袖にし、最終的には独自の呼吸を編み出したときは本気でどうしてやろうかと思った」
「殺意が高い」




一応、伊黒は今年で一般的には青年と呼ばれる歳となる。この師範の元で試験に挑める年齢だった。すでに数年修行した伊黒は実力だけならば十分に試験を通過できるだろう。年齢が幼いがためにこの山寺のような場所でずっと技の精度を上げていただけに過ぎない。そんな伊黒がようやく明日、最終選抜に行く、だからこそ妹弟子は問うたのだろう。だから伊黒は答えをくれてやった




「幼い俺を兄と最初に慕ったのはお前だっただろう、兄が妹を嫌う理由など、よほどのことがない限りあり得ない」
「…そんなもん?」
「ああ、俺の中ではな」




己を見上げる瞳が不思議そうに瞬き揺らめくと、そっかと紅を引かぬ口が動き、下を向く、その姿だけを見れば酷く幼げで、伊黒は布下で笑った。この幼い妹弟子なりの甘えだったのか。そう思えば胸が暖かくなる。




「俺は、生きて帰る。だから、そんな顔をするんじゃない」
「こんな可愛いの塊である幼女を泣かせるなんて世界に対しての挑戦では?」
「減らず口め」
「ふぎゅっ」




生意気なこと言う口を片手で掴めば、みじかく妹弟子は変な声を上げてからこちらをどこかじっとりとした目で見つめた。

その様子に目を細めて包帯の下に隠された口元が再び緩む。戯れ程度の力でこちらの手を叩き、抗議を上げる姿は一見どこにでもいる幼女の姿をしている。




「俺は明日には立つ。しっかりしておけ。ほんの七日ばかりの辛抱だからな。」
「そのあとは?」
「手紙を書いてやる。帰ってこずとも手紙を書こう。」




どこか嬉しそうに瞳を輝かせた妹弟子を見下ろして、豊かな小麦色の髪に手を置いた。






―――だからこそ、最終選抜から帰ってきて、刀が出来上がればすぐに任務へと赴き、数年。妹弟子が最終選抜へと向かうという知らせを聞いた伊黒は師範の元へと足を運び、あの小さく幼かった妹弟子が己の弟弟子にあたる男共に対しての対応に卒倒した。妹弟子が己の目を離れたほんの数年の間で完成された大人の身体になっていたのも卒倒した理由の一つである。

今年で13になる妹弟子は己より小さな幼子が好きなようで、その年の弟子は3人いたが、小さければ小さいほどかわいがっているように見える。その事実に気づいて師範と共にまた伊黒は気を失った。瞼の裏側ではあの幼かった妹弟子が笑顔で手を振っていた。



















伊黒

幼いころの傷心を幼い主人公で癒してもらった兄弟子。そのあともいろいろあって主人公が一番かわいく見える(本編では蜜璃ちゃんが一番かわいく見える)。女ということもあって修行以外では蝶よ花よと師範と共に可愛がっていた(なお伊黒判定なので一般的な蝶よ花よではない)。その可愛がり方が妹弟子にも伝染したため妹弟子が年下の子を可愛がるときはかなり甘やかす(現代人の考えがそこに+するのでかなりヤバい人に見える)。ある意味主人公が幼児趣味と思われてる原因の一つを担った人。都合の良い血鬼術で幼い姿になれば懐かしさのあまり心臓を撃ち抜かれるかもしれない。



主人公

まだ前世の記憶が朧げな主人公。成長期に入って徐々に思い出してきたけど、このころはまだ断片的だった。ちょっと大人びた美ロリ。ただしこの頃からお姉さんムーブかましてる



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