おねショタ(概念)番外編 | ナノ


▼ 3

そして今の現状に幼い藤野は混乱していた。
なんか、変な髪の色した成人男性に抱き上げられて貢がれてる。あ、三色団子がおいしい。

もっちもちと隣ですでに三桁を食べ終えまだ口に運ぶ炎柱である見つめつつ少し大きな団子を頬張りながら、ここに来る前に買ってもらったブーツに包まれる足を揺らす。

女の子らしく括られた頭部には大きな紅と金色の混じる色合いをしたリボンが飾られれていた。




「うむ!うまいな!」
「うん、おいしい」
「うむ!ところで藤野は将来どうなりたいなどあるのか?」
「わたし…?」




私の、将来。

復唱してこてんと首をかしげる少女に煉獄も合わせて首をかしげる。さらり。緩いカーブを描く髪が揺れ、その翡翠色した瞳を細めて、小ぶりな口を開き、藤野は首を振る。この年にしては酷く聡い返答の仕方だった。




「わかんない。あのね、えっと、」
「今から俺の家に行くから煉獄ではあれだな、杏寿郎でいいぞ!」
「きょーじゅろう」
「うむ!難しかったか!」
「幼女の口は回りません」




噛んじゃう。ぺっと小さな舌を出してから頬を膨らませる少女に煉獄は笑う。酷く幼い反応だ、けれどどこか年不相応に聡い。あの会議の時といい、ただ黙っていたのだ、この幼い子供は。邪魔にならないように、己の処遇を決められていたというのに、普通の幼子ならば耐えられないはずだ。




「幼女、なぁ…。なあ藤野」
「むー」
「よもや…。何をしたらそうなるのか不思議だなぁ。ぬぐってやろう」




考え込んでいたわずかな間に頬をあんこでべっとりと汚した幼女の頬を拭い、指で残った小豆をすくって食べれば「ひゃー」と小さな掌で目を覆う藤野を煉獄は不思議に思って見た。




「動作が不埒…」
「将来の君もなかなかに…」




これを今、幼い彼女にするのは犯罪ではないか??将来の君の恰好と体格もなかなか目に見張る物があるぞ。などといえば恐らく遠くから監視している伊黒と伊黒の蛇に殺される。

炎柱は空気を読んで口を閉じた。

それと同時に何かを落とすような音が聞こえ、目を移せば己の弟がヤベェ物を見たような、絶望したような顔でこちらを震えながら見つめているのに気づき、思わず腰を上げる。




「あ、あにうえ、その方は…」
「千寿郎、お前はきっと勘違いしている、別にさらったわけでは…」
「あ、兄上が鏡子さんに想いを寄せていたのは知っていましたが、そ、そんな、いつの間に孕ませたのですか!?僕もあの方を好いていたのにっ!!」
「…よもや…」




別に兄弟だからといって好みまで似なくては良いではないか…。

衝撃の弟の告白に衝撃を受ける中、ちょんと己の服を引っ張る控えめな力に目線を降ろせば西洋人形のように整った顔の少女が翡翠の瞳を弟に向けて、「だれ?」と小さく呟く。

弟の千寿郎が慌てたように手をさ迷わせなんと答えようと口をパクパクと開くが、何を思ったのか少女が服から手を離し、そっと袴を持ち上げて腰を曲げる




「初めまして、藤野鏡子、7歳です。本日はお日柄が良く…。杏寿郎さんの弟君とお見受けいたしますわ。ごめんなさい、急に異色の娘が兄君の横に居たこと、驚いたことでしょう、もしやご不快な思いをさせてしまいましたか?」
「はわ…」
「よもや…」




完璧な口調と滑らかな口上に思わず声が漏れる。先ほどまでたどたどしかったそれが一気に大人のそれになった。思わず何とも言えない雰囲気になれば、その少女は不安そうに眉を下げると淑女のように口元に手を持っていき、困ったように言う




「あれ?私と似たような配色だったので、その、お父さんと同じ外の国の人かと…。もしかして挨拶の仕方、間違えましたか?」
「い、いや、そうではなく…」
「煉獄、動揺するな。これでも鏡子の父親は外交官というやつでな、いつもはこうポケポケとし、阿呆だが第一印象を決める挨拶は5歳くらいから叩き込まれている」
「いぐろ!」
「ん“っ、それで、いつまでコイツを太陽の下に置くつもりだ日焼けしたらどうする」




何とか正気を保った伊黒が日傘の中に藤野を入れ、残っていたらしい団子を食べさせる姿に煉獄とその弟は少々変なものを見る目で見た。どこから出てきたのだろう、どこから見ていたのだろう、控えめに言って気持ち悪かった。

ちろちろと舌を出す蛇と戯れる少女を伊黒から取り上げたところで伊黒の烏が任務を告げ…


・・・・・・鋭すぎる舌打ちと共に消える。




「えっと、兄上…」
「まあ、予想外のことが多かったが、血鬼術にかかり幼少期に戻ってしまった藤野だ。今晩俺が預かることになった」
「鏡子さん、ですか…、えっと初めまして、煉獄千寿郎と申します」




はじめまして、と復唱する藤野はにこにこと笑い、千寿郎の手を取ると目を合わせてくふくふわらう




「よかったぁ。同じくらいの子供が居なくて不安だったの。」
「……あの、僕でよければ、その、ずっと一緒に居ますので、嫁いで来られませんか?僕に」




僕に。を強調する弟に煉獄は思わずむせた。激しいくらいのむせ方に幼い二人が気を使う程度にはむせた。ちなみに何も食べてはいないので、完全に大人げない邪魔の仕方である。それを見ていた伊黒の蛇はドン引きし、たまたま見かけたしのぶが面白いモノを見たと言わんばかりに震えると、口元を抑えながら歩きだす。文字にするなら「wwwwwwwww」と「草」と「大草原不可避」くらいにはなるかもしれない。


そして…




「……杏寿郎。少し来なさい」




煉獄家にたどり着いた三人を待っていたのは普段ならここまで厳しい声音を出さぬ(とはいってもいつも不機嫌なのだが…)父の声だった。無精ひげを生やした父親が酷く困惑していることを感じた煉獄(中)は大人しくついていき、事情を説明した。

まさか末っ子の帰りが遅く、柄にもなく心配して自室から玄関をうろうろしていた己への強烈な一撃だったと後に語る。

そして元柱・煉獄槇寿郎は再び頭を抱えた。柱たるものがなんと情けない、という思いもあった、けれどそれ以上に息子が酷くまっすぐな、曇りなきまなざしで宣言するのである




「ちなみに鏡柱・藤野鏡子はいずれ我が家に嫁ぎます!」




もう一度言おう、ひどく、曇りなきまなざしであったと

息子たちと好み(涼し気な黒髪美人)が被らなかったことを喜べばいいのか、それともかの噂の鏡柱(金髪碧眼たれ目巨乳※おねショタ(概念))に心奪われ兄弟で矢印を向けることに頭を抱え、嘆けばいいのかわからない。俺の息子だし、きっとしつこく迫るだろう。俺がそうだった。何度袖にされようとも必死に通いつめたものである。



再度ため息をつき、息子が出て行ったのを見届けて、槙寿郎は酒を取りに行くために立ち上がり、障子に手を掛けたのだった



prev / next
目次に戻る









夢置き場///トップページ
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -