おねショタ(概念)みたいな柱になった私の話 | ナノ


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「させません」
「まだ動けるのね」




 刹那。目の前で真っ赤な紅(あか)と装飾の施された腕が飛ぶ。その指先が溶けていることに気付いて、私は、私をかばうように前に立ったカナエ越しに鬼を見た。鬼の胸から伸びるしのぶの剣先と、猪の被り物をした隊士に継子が童磨の頸を斬り飛ばしたところだった。鬼の体がふらりと揺れる。力尽きたように音を立てて倒れると、少しずつ風に消えるように空気に溶けて、そして響いた鬼の笑い声が不愉快だった。こんな時までも笑うのかと。
 思い出したという、猪の被り物をした隊士の出自を語る姿に眉をひそめた。抑えた指と指の間から流れる私の紅い血を見て、鬼はまた笑った




「翡翠。きっと君は長く生きれないだろうな。かわいそうに。鏡というものは自分が映せる許容を超えてしまえば無意味なものだからね。」




 同情するような口調に吐き気がする。余計なお世話だと、口を開く前に男は消えていった。












 と、いうわけのわからないシリアスに揉まれたけれど、私は今のところ元気に無限城駆けまわっていた。お腹に穴(ガチ)開いたのに、いきなり目の前で猪の被り物した子の被り物取られて「はい!美少年ですよ〜。頑張ってお仕事したらこの子の事、撫でまわしていいですからね〜〜〜」と笑顔のしのぶに言われ、その場で腹を縫われて、さあ行ってらっしゃいだった。まって、私けが人なんですけど、あと別にショタコンじゃないんですけど!?ちゃっかりと言わんばかりに継子ちゃんを後ろに遠のかせていのがマジで腹立つ。

 そこら辺にいまだ湧き出る雑魚を切り捨てて、鴉の指示通りの場所へと走る。既に回復班へと回った私以外の柱は、ほぼ全員が鬼舞辻の元へと向かっているらしく、カナエには駆け足!!とまで言われてしまった、遠足かな???それにしても、麻酔なしで脇腹縫った人間を普通行かせるか?行かせないよね普通。普通!!
 足場を見ながら入り組んだ建物を登ってゆく、でもなぜだろう。鴉がいきなり進路を変えた。先ほどは奥へ奥へといざなっていたのに、今はどちらかというと、外の方へ向かわせようとしている?首をかしげて、それでも従う他のない私は鴉を追った。
 少しずつ、傷口の痛みがひどくなるのを自覚する。一応麻酔を打ってはもらったものの、本当に最小限に留めてもらった。麻酔は痛みを軽減するけれど。それと同時に動きも鈍くなるし、感覚もどこかおかしくなる。結局良い物と悪いものは紙一重だ。


 まあ、腹に穴開いたおかげでしのぶもカナエも重症じゃないのであまり問題ないんですけどね。ちなみに私以外の重症患者に時透君と不死川の弟君がいるけど生きてるらしい。あそこすごいよね、なんで上弦の壱倒せたんだろう。煉獄は腕一本吹き飛ばされたと聞いた。




「っと、見えてきたね。あそこが出口か」




 なんかネオンの光っぽい物あるけど気のせいかな?気のせいじゃないよね。チクチクと痛むお腹を少しだけさすりながら、瓦礫を踏み台に跳躍した瞬間、ぐらりと揺れる空間に思わず目を見開く。「は?」と乾いような自分の声がやけに耳についた。次の足場を失った身体が空間に投げ出されるのを感じ、やばいと思ったときには遅くて、痛みというよりは熱さを感じたと思う。


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