おねショタ(概念)みたいな柱になった私の話 | ナノ


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「まあ、とりあえずお腹も空いただろうから、たくさん食べて、ゆっくり休んで、回復したら自分の好きなタイミングで次の稽古に行くようにね」




にっこりと私が笑みを浮かべておにぎりが大量に乗る皿を置けば、数人が酷くだらしない笑みを浮かべる。というかすでに何人かは一週間以上滞在しているのだけれど、まさか柱稽古がそんな生ぬるいと思ってるなら存外見込みのない奴らだ。といっても私はただしのぶの言うとおりにしているだけなのだけれども。それにしてもこの服、本当に露出が激しいな。横から見たらほぼ丸見えだし、いくつか修正したとは言え、いつにもまして太ももが胸が…、それに加えてふんどしの蝶々結びされた紐ががっつり見えてる…。


抱き着いてきた隊士の頭を撫でつつ、赤子返りしてる姿にほほえみを維持するのがつらい。


ぐすぐすと泣きながら稽古のつらさを語る男。はー、思う存分オギャるがいいさ、私は否定しないよ、肯定もしないけれど。いろんなところから「まま」だの「おかあさん」だの「エロいお姉さん」だの聞こえるが気にしない。もう慣れた。そもそもおねショタ(概念)である私がママみはともかくエロいお姉さんじゃないわけがない。それに加えて今は神威さん(下衣は袖のないほぼ無地のアットゥシの様な着物の左半身部のみにアオザイの様な深く大きなスリット※右半身には入ってない)である。ほぼエロいお姉さん(概念)。すごいな、どんどん属性が追加されていく…。

遠い目をしながら本日五人目の幼児返りの相手をしつつ、私は隊士の状態を確認した。

呼吸があるわけなので、この館に滞在する期間(許容範囲ともいう)は私の館の攻略(難易度・軽)を終えてから最高5日。本人が望めば難易度は変化し、やる気のある隊士、または私達三人(鏡柱・元花柱・真菰(甲))が見込んだ隊士が難易度を高にして稽古を行う。ココは平衡・視覚感覚訓練に適した館だからね。そして最後の判断力とは、誘惑に対して見切りをつけられるかどうか、ほとんどの隊士は見切りをつけて五日以内には自主的に涙を流しながら出ていくのだが、一握りの隊士たちはいつまでたっても居座り続ける。もちろん、出ていく隊士たちにはわずかばかりの気遣いを見せるが、それすらも振り切れるかどうかを私たちは見ていた。振り切れなかった隊士は10日過ぎたあたりで隠に回収されて柱稽古をいったん取りやめ、その腐った根性を叩きなおすべく炎柱と錆兎(甲)の隊士が管理する道場で稽古。終わればまた宇随からの再スタートという流れが出来上がっていた。


ちなみに私の屋敷で生活していた隊士たちの様子は午前と午後に一回ずつ、次の担当柱である伊黒へと流れる


元々は情報を流すなんて話はなかったはずなのだけれど、伊黒の強い希望と他の柱達の同意によって送ることになった。










「こんにちは藤野さん!よろしくおねがいしますっ!!」
「そんなにキラキラした瞳で難易度・高を申し込んできたのは君が初めてだよ」
「今日の服も似合ってますね」
「急にそんなこと言われると照れるからやめてほしいかな!!」




難易度・高〜〜万華鏡館訓練嘆願書〜〜を手にもって微笑む炭治郎君がまぶしい。神威さんの服を見てそんな反応をしたのは君が初めてだ。というか彼の同期たちは全員が全員突破早すぎて笑えない。唯一遅かったのは不死川のところの男の子ぐらいだけれど、その子もその子で隊全体から見れば早い方だった。ぶっちゃけ反則でしょ、臭いとか音とか体感とかよすぎる視力とか。いや、さすがに館全力で邪魔するって言いう大人気なことしてないけど、それにしても反則過ぎた。


炭治郎君と善逸君(本人ではなく宇随の推薦で難易度・高)がぶっちぎりだ。いや、甲の隊士を含めればぶっちぎりじゃないけれど、まさか3日でクリアされるとは…。ちょっとへこむ。お仕事なので、完璧に甘やかそうと意気込み念入りに誘惑したのに炭治郎君、やっぱり私を袖にして一泊すると伊黒の下へと行ってしまった。うそでしょ…。おねショタ(概念)が通じない、だと…??善逸君には縋りつかれながら一生ここにいたいですっ!!と言わせたのにっ…!

まあ、本人は泣きながらも三日で私から離れて自力で伊黒の下へと旅立っていった。泣き虫だけど愚者じゃない彼が好き。





「と、いうわけで、10日以上いる隊士の名簿だよ」
「気持ちはわからないでもないが、隊士である以上、誘惑を断ち切らねば!」
「安心しろ、責任をもって腑抜けた根性を叩きあげる」
「ちなみにこの子は私の服に手を滑らせたので…」
「「………」」




そっと指さすのは今年で齢13くらいの少年である。他の隊士よりも発育が遅れており、10前後に見えるが、彼も立派な鬼殺隊の隊士。結構年少さんで将来有望だと思う。




「年齢的に大丈夫とは言え、お前…」
「君らの指示だよ」
「よもや…、藤野の毒牙にかかったことを嘆けばいいのか…」
「甘えたさんみたいでね。ずいぶんお姉さんと仲が良かったらしいよ。まあ。鬼殺隊士である以上、甘えなど捨てないといけないからキチンと叩き上げてね」




君らの言うとおりに全力でお姉さんムーブかまして釣れた一人である。ちなみにお姉さんは鬼に食われたとのこと、罪悪感半端なかった。でもとろとろした目で「お姉ちゃん…」は正直ヤバいと思う。ごめんね、君も鬼殺隊士である以上、誘惑とか振り切らないといけないから…。あとお姉ちゃんに弟は欲情しない。

忍び込ませた手を手に取って「ふふ、悪い子」と言いながら頭を撫でてやれば涙を流しながらスヤァと眠ったので、そのまま宿舎に運んで寝かせたなぁ。ちなみに少年だけじゃなく大の大人にもやった。




「鬼だな、お前」
「全力でたたき上げる君らほどじゃないけど」
「うむ!任せておけ!」




煉獄が良い笑顔でリストアップされた鬼殺隊士の紙を受け取るとそのまま懐に入れ、にっこりと笑うと私の手をその分厚い両手で包み込む。なんだなんだ。




「ところで藤野!食事に行かないか!」
「いかない」
「むっ、そう素気無くあしらわれると心に来るものがあるな…。なら後日、出かけるのはどうだろう」
「いかない」
「君に似合う簪を見つけた。送らせてほしい」
「いらない」
「………、君、伊黒に何か言われたな…??」
「炎柱と水柱からの誘いは乗らないように一晩中ネチネチと正座させられながら言われましたけど」




例の柱会議が終わった後にこの屋敷に押し入ってきた伊黒は、最初、ただ一言「正座」の文字をたたきつけ、一晩中(私も彼も次の日任務だった)にもかかわらず、ネチネチネチネチネチネチネチネチと…。途中から意識飛んでた気がする。最終的に煉獄たちの話から「そもそもお前は前田の好きにさせすぎだ」だの「その服を見てどれほどの男共があらぬ想像をしていると思っている」だの「世の中にはお前のように幼児趣味のような輩でも、顔だけは一品のお前でいいという気狂いもいる」だのさんざん言われた。失礼だな。おねショタ(概念)の私でもいいどころか私がいいっていう人間の方が多いに決まってるじゃないか。。見てよこの約束された勝利の美貌。肉体も蠱惑的でしょ、私ぐらいだからね、神威さんの服を着て違和感ないの。途中からあまりにも眠すぎて思わず




『もうっ!伊黒うるさいっ!!私にだって御館様や柱の親族方からお見合いの話が10や20っ…!!』
『ほう…?』







人の出していい低音じゃなかった。伊黒の首に巻きつく鏑丸♂が低く息を吐く





結局、墓穴を掘った形になり、部屋の隅から隅まで捜索されると、伊黒や他の柱に隠していたお見合いの写真を根こそぎ掘り起こされ、さらに説教のようなお小言が増え、私が次の日貫徹の状態でふらふらになりながら鬼を狩りに行ったのだ。ひどすぎる。むごい。人の所業じゃないわ。さらに帰ってきた後、お見合いの写真をあらかた見終わった伊黒が私の屋敷の庭でこれ見よがしに燃やしていた。酷い。その炎で作った焼き芋を差し出された時の私はどんな顔をしていたんだろう。




『師範と俺の考えと御館様のご意向によりお前に見合いは早いということになった。』
『お見合いする予定()だった人たち(の写真)を燃やして作った焼き芋を差し出す伊黒のメンタルがすごいわ…』




いらない…。




『それから、煉獄の家ならば俺はいいと思うが、近づかないように。柱の中では煉獄と水柱との接触はできる限り避けろ。いいな』
『妹弟子の縁談をぶっ潰した人がなんか言ってる…』
『いいな?』
『ふぎゅ』




芋を持たない手の方で頬を思いっきり掴まれて脅された。ねえ、私あなたの妹弟子なんですけど。もう少しぐらい妹弟子に優しくしてよ。



あれ、思い出すとなんだか腹が立ってきたな??




「煉獄、意地になるな。藤野、わるい。だが柱同士の交流も」
「いく」
「ん??」
「いく。よく考えなくてもなんで私が行動を制限されなきゃいけないの、昔ならいざ知らず、私もう17だし、柱だし、立場的には伊黒と同等だし、聞く意味、絶対ない」
「よ、よもや…。」
「落ち着け藤野。誘ったのは俺たちだが伊黒の気持ちも俺はわかる。」
「行く」
「落ち着こう藤野!別に今日じゃなくとも俺はいいぞ!」
「行く」
「うむ!行くのはいいがまた後日にしよう!」
「ああ、それがいいな!」
「行くって言ったら行くの!!なんで聞いてくれないのっ!!??」




もはや意地だった。

なんとなく情けなくて、悔しすぎてじわっと涙がにじみ、子供のように「い“ぐのぉっ!!」と泣く。柱になって初めての涙がまさかこんなこととは思わなかったが、二人の羽織を掴んでえぐえぐと訴えれば、たじろぐ気配がする。そんな私の心に余裕がない状態でもどこか冷静に『あ、押せばいけるぞコレ』と思った自分に拍手を送りたい。




「よ、よもやぁ…」←※長男
「ぐっ…!」←※義勇に世話を焼く人間




二人は折れた(※妹属性)




そう言った流れがあって私たちは今、甘味屋で団子やお汁粉に舌鼓を打っている。おいしい。
さすがに先ほどのアレは柱としてあるまじき醜態だったなと思いつつ二人に謝罪をすれば、酷く良い笑顔で「気にするな」と返ってくる。気にするなというならしないよ私。本当に。




「藤野、もっと食べるか?」
「いや、結構お腹いっぱいだからいい」
「食べることは良いことだ。あと女子なのだから後で簪を買ってやろうな」
「俺たちが誘ったんだ、この店の代金は持とう」




あとすごく甘やかされてる。にこにこと穏やかに笑いながら髪に触れたりする男共の手がどことなく、こう、やらしいな?ふいに付いてしまったとはいえ、頬に乗った小豆をすくい、口に運び舐めとる姿まで色っぽかったときはどうしようかと思った。存外大きな団子を食べ終えて、串を皿の上に置いたところで子供の泣き声に思わず立ち上がり、ほぼ反射的に駆けて人だかりの合間を縫うようにして歩き、蹲っている小さな子供を抱き上げる




「どうしたのかな?僕」




よしよし、なんで泣いてるのかな?お姉さんにお話しして頂戴な。しゃがみこんで同じ目線になりながら問いかけると、つぶらな瞳がこっちを映す。涙にぬれた頬をそっと包めば、小さな声で親を探しているという。なるほど…。




「聞いたね煉獄、錆兎。迷子だよ」
「俺すら聞こえなかった声に反応して走っていったお前が怖い」
「気持ち悪いな!!」
「煉獄は言葉を濁した錆兎を見習って」




この怖いお兄ちゃんたちが今から君のお母さんを見つけてくれるからねぇ〜。

にっこりと笑顔を向けながら迷子の男の子を抱き上げて揺らせば、涙がぴたりと止まる。いつもの反応。そして目の前の男共が何とも言えない顔をしてるの草




「なるほど、小さくても男は男か」
「そうだな、男なら好きだな」
「何の話」
「ち、ちがう!」
「暴れないのっ!めっ!!」
「あうぅう」
「犯罪だぞ…」




呆れたように言われたのが心外すぎる。暴れる子供を押さえつけるのは犯罪なのか…。いや、まあ、私の見た目なら犯罪ちっくになるのもしょうがないのかな…。私的には純粋な善意だけど、彼らから見たらどう見えるのかわからないし、黙っておこう。…まあ?このおねショタ()的ボディに魅了されない男なんていないと思うけど!!

いや、炭治郎君は効いてるのかわからないな。

煉獄が私から子供を奪い取り、肩に担ぐ。いわゆる、肩車の状態にすれば、楽しそうな声を上げて子供がそん瞳をキラキラと輝かせた。男の子だねぇ。




「こうすれば君の親も君を見つけやすくなるぞ!」
「なら俺は付近の人たちに話を聞こう」




これ以上ないくらいの連携だったと思う。

人よりも背の高い煉獄が子供を肩車してくれることで男の子も自分の親を探せたし、錆兎がお店の人たちに聞き込みをすることで情報が集まり、私が男性を中心に笑顔で話しかければ我先にと子供を探す大人の情報が落ちてきた。何なら自分から探しに行ってくれた人もいる。良かった、いつもは子供を連れているからなのか、真っ先に聞かれるのは親子関係か兄弟関係なので、それに時間を取られないのはありがたい。煉獄のおかげである、いや、絶対煉獄も煉獄で老け顔だと私は思うのだけれど、違うのかな。

少しだけ自問自答しながら聞き込みを続けること約二時間。少年の親に遭遇した。最初は少年が煉獄の頭の上で声を上げ、それに反応した親御さんたちが駆け寄ってきたのだ。見つかったことに安堵しつつ、煉獄が親に子供を渡す。はー、見つかってよかった。と、ほっとしのに、今度は私の服が引っ張られ、見下ろせば、涙目でこちらを見つめる幼女。




「…おねえちゃぁんっ…。おかあさん、さがして…」
「………」
「………」
「………」
「追加入りまーす」




何とも言えない顔をした煉獄たちの目が痛かった。ごめん、これが私のいつもの任務後なの…。








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