おねショタ(概念)みたいな柱になった私の話 | ナノ


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その部屋にて、男と女は一つの布団の上で二人っきりだった。
それは当たり前のことで、そこに男女がいることに疑問を持つ人間はこの建物にはいないだろう。なぜならここは【そういう】場所なのだから

何処か薄暗く、灯篭の明かりだけを頼りに男がフラフラと女に歩み寄る。蜜に群がる蠅のように足元は覚束ない。どこか興奮したように目を見開き、息を荒らげた。

そんな男に女はにっこりと慈悲の笑みを浮かべながらきっちりと着込んだ己の着物の裾を緩め、胸元を出す。押し込められていたのか、開放的になったことで、そのたわわな果実が顔を覗かせた。小ぶりな西瓜以上の大きさの乳房の中央が見えるか見えないかギリギリのソレに、隠れて事の端末を見守る禿が生唾を飲み込む。そっと男に向かって両腕を伸ばした女は紅を控えめに塗った小ぶりな口を開き、ゆっくりと、優しく「おいで」と魅惑的な声で言う

男が先程までとは違う速さで動いた、そして…









「ままぁぁぁぁぁあぁぁあああああああっ!!!!」









男は叫ぶように女の胸へとダイブし、その細い腰を掴み上げ、胸に顔を押し付けると




悲壮感漂う声で叫び、嘆き、号泣する。…正常な神経を持つ人間ならドン引きモノだろう。





「もう疲れたんだよぉおおおおっ!女房はおっかねえしっ!政府共は給金あげねぇしっ!子供たちは俺を塵芥見るような目でみるしよぉおおおおっ!!」
「うんうん、助広さんは頑張ってるよ」




恥も外見も捨てて涙を流しながら泣く男。その様子をどこか死んだような目で眺めながら女は、私は頷く。そうだね、うん、そうだね。いい大人が胸の大きな女に抱き着きながら嘆く様子は酷くシュールだろう。オッパブかな??いや、そういう露骨なプレイはしてないのでセーフかな、私のところに来るお客さんこんなのばっかだな。でも正直遊女の胸にすり寄って顔をうずめて嘆くだけの父親なら塵芥見る目で見ると思う、私なら見るからね。禿もどこか同情したように男を見つめ、ため息を吐きながら部屋を後にした。

その後も酒すら頼まずおいおいと嘆きながら胸に顔を埋め、私の腰を鷲掴みした男は一時間くらいで帰っていった。やけにスッキリした様な顔と、「また来るねっ!ままっ!!」と捨て台詞吐いて行ったのはどういう心情なんだろう、遊女が客を相手にしてるのに褥を共にせず一時間くらいで帰っていく男に手を振る。そして困ったことに私の座敷に来る男は全員あんなんばっかだ。この店に潜入して早くも三か月…。まだ誰とも身体を重ねてない。そろそろ遣り手婆に怒られる。でも紹介してもらった客全員私にママみを求めオギャって帰っていくんだよ。どんな性癖だ。私のお仕事はただ胸元をはだけさせて胸枕を貸し、時には膝枕を貸し、腰に腕を回され、泣く男をよしよしするだけだからな。新手のよしよしプレイですか??健全過ぎない?どんだけこの部屋の配色厭らしくしても客あんなんばっかってヤバくない?でも私の所に来る客は他所ではやることやってんだよな。他の遊女から感謝の言葉と織り菓子が来た。何でもめちゃくちゃヤバいプレイする男どもだったらしい。遊郭に来ての私のあだ名何だったと思う??【猛獣使い】だぞ【調教師】だぞ。ええ…、日本の抑制された社会の闇って怖い。まだ大正だよココ。




「……すげぇなお前。幼児趣味のくせに野郎も手玉に取るのか」
「……、いや、よくわからないんだけど」
「そうか、ところでママってなんだ」
「え、今それ聞くんだ。客が言い始めて二か月たつのに。まあママってのはお母さんって意味だよ。おぎゃりたいんじゃない」
「………」




何も言われなかった。横にいる宇髄が酷く変なものを見るような此方をみてる。やめて、見ないで。着物を直しながら、まだ目が死んでる気がする。まあ、おねショタ(概念)の身体にママみを感じてパブっておぎゃって縋りたい気持ちは理解できる。私ならする。やっていいって言うなら遠慮なくやるし何ならこの場所であることを逆手に胸すら揉みしだくかもしれない。でも私だ。宇髄との合同任務のはずなのに、目の前の柱は大爆笑を起こし、床に転げまわってるのだから殺意が湧いた。微笑みながら己の簪を抜いて顔面すれすれに突き刺せばその場で起き上がり、叱られた猫のように正座する




「いい加減にしろ。こちとら貞操を散らす覚悟でここに潜入してんだぞ」
「マジでまだ処女ってのが傑作だよな。見たかよアイツらの顔」
「今あの馬鹿どもの話はしないで」




馬鹿ども(※柱)はどこから嗅ぎつけたのか私が花魁に扮して潜入すると言った時、心配せずに笑った。女性陣だけしか私の味方はいなかった。そして何が酷かったのかと言えばアイツら、私がすでに処女を散らしてると思っていたようだった



『別にもう経験してるなら二度や三度関係ないだろ』
『さ、最低っ!それは最低よっつ!!』
『見損ないましたよ、これ以上近づかないでくださいね。大丈夫ですか藤野さん、心にもないこと言われて可哀想に…』




そっ、と、私の肩に手を当てるしのぶと言った本人を非難する蜜璃ちゃん。そんな二人に私はこてんと首を傾げ、言い放ったのだ




『いや、まだ処女だけどね』





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