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「じゃぁね、人の子たち。短い人生だ。存分に生きなさい」
我ながらいい笑顔で言ったと思う。たとえ炭の子が泣いてたとしても、錆兎や義勇がこちらに手を伸ばしたとしても、俺の身体はもう限界だった。いろいろ反則技使った挙句の果てに大勢の死ぬはずだった命を救い上げてしまったのだ。悲しきかな。せっかく妖として延命させた胡蝶さえ巻き込んで消失してしまう。はかなげな笑顔で、彼女は笑った。何も言われなかった。
――――そして俺はーーーー。
「大丈夫ですか!?意識ははっきりしていますか!?先生!508の酒村祐樹さん目を覚まされました!」
「え……」
神様たちのありがたい()配慮のおかげで元身体に戻された。
ちょっと待って、千年も前のことだから基礎も何もかも忘れてるんですけど…。大学勉強大丈夫かな、俺。
少しだけ、痛む頭を放置して俺は、どたばたと数人の足音が聞こえてくる窓の方へと目を移した。
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