▼ もしも主人公が平安時代に無惨を守護していたら
「ダメだよ無惨。お前はすぐ頭に血が上る子だね」
酒の香りにわずかばかりの煙管の煙。そして人をも落ち着かせる声がその場に響き、無惨は下弦へと伸ばした手を止めた。ふんわりと肩に回された腕が己を引き寄せて、暖かな体温に包まれる
「まったく、下弦の子も頑張っているんだから、そう意地悪をするものではないだろうに」
それ以上にお前も頑張ってるのを俺は知ってるよ、と頭をなでられる己らの首領に、下弦たちはほっと肩の荷を下ろした
鬼の始祖、鬼の神、彼を指す呼び名は多々あれど、一貫して言えるのは酷く心根が穏やかな人物ということだろうか。ただ、彼の存在は鬼にとっては目の上のたん瘤に近いものがあった。彼は人を食らうことを嫌う。良い顔はしないのだ。
「また、私の邪魔をするのか…」
「ん〜?俺はお前のためにやってるんだよ。あらぬ恨みは買うものじゃないさ。そうだろう。無惨」
「……。帰る。鳴女」
ベベンッ
響く琵琶の音とともに、障子が合わさる音がして、無惨はこの場から姿を消した。
重たかった雰囲気が一気に軽いものへと変わる
「……はあ、悪いなお前たち、またアレの重圧にさらしてしまった」
「い、いえ!!ありがとうございます、酒呑童子様…」
紅の羽織を揺らす鬼に、礼を述べれば、ゆるりとほほ笑まれる
長らく生きて生きた貫禄、楽し気に細められるどこか余裕を持った表情。一つ一つの何気ない動作が、鬼である自分たちも、人である鬼殺隊をも引き付ける。それはまさしく抗いがたく、己から進んで頭をたれ、すべてを捧げ、一生をも尽くしたいと思ってしまう。
それが異常なことであるのはわかっていた。
頭では理解しても、抗えぬそれに、鬼たちは抗わない。
それがひどく心地が良いことを知っているから
彼の放つお小言は確かにうるさい。けれどそれでも
―――鬼は本能的に彼を崇める。彼らを作り出した鬼舞辻が彼を崇め、尊敬し、求める限り
酒呑童子 いろいろあって無惨を守護してる。重たい愛情に気付きつつも特に何も言わない。最近花札の耳飾りした少年から街中でしつこく声をかけられてる。でも何となくその少年も滅茶苦茶かわいく見えてる
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