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「〜〜っ!デェト!デェトをしよう錆兎!!」
「…」
瞬間、ぴったりと目の前の男の動きが止まった、それをいいことに俺は畳みかける。
「一緒に、二人で、町に出よう。錆兎!」
「ふたりで、か?」
「そう!二人で!おいしいものを食べて好きなものを見て、夜は夜景でも――――」
次の瞬間には思いっきり突き飛ばされて思わず受け身を取った。待ってなんで俺、今突き飛ばされたよ?おかしくね???ねえ???困惑したまま錆兎へと目線を上げれば、顔を赤くして口元を手で覆う男に殺意がわいた。男前はどんな表情でどんな仕草をしても男前ということか死んでくれ。簡素に死んでくれ。むしろこの世のイケメンという種類の男をすべて神的権限で滅したくなるには様になっている
「二人で…、お前と、俺が、デェト…????」
「なんで日本語わかりません見たいな顔してるんだよ。新しい言語に出会った顔してるんだ」
「少し黙っていろ片腕を飛ばすぞ」
「脅し方が物騒」
そして雑。
年々俺への扱いが雑になってサイコパスふっきってむしろ理不尽、いや、結構最初から理不尽だったな。
「……わかった」
「???」
「わかった。出かけよう、今からだ」
「嘘だろ今から??俺炭の子を見ていたいんですけど」
「鴉に見張らせる。それに、時間を置けば時効と言いかねないからな。お前は」
ばれてる
がっつりその戦法を取るつもりだったのがバレている。引くついた顔を見られたのか、いい笑顔で「男のくせに約束を違えるのか?」と脅された。嘘やん俺神だよ??毎回思うけど立場が逆転しすぎでは??
ヒェッと小さく悲鳴を零した瞬間には颯爽と手を取られ、そのまま引きずられるように蝶屋敷から出る。この間、現代の時間にして5分もなかった。何処かうれしそうにはねる宍戸色の髪に複雑極まりない気持ちになりながらも抵抗をせずに一緒に歩く。気が付けば前にいた錆兎は横にいるし、仮面をかぶって表情は見えず、繋がれた手が指と指を絡めるように握られていて驚いた。え、手が、早いですね??というかマジで、行くのか…。今日が俺の命日なんだろうな、ごめん炭の子。頭の中で「待ってください酒呑様!俺ともまだデェトしたことないじゃないですか!!」と悲痛な声で叫ぶ炭治郎を見た気がしたが、多分気のせいだろう、うん
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