「俺、確かに鬼だけどお前らの追ってる鬼じゃないと思う」 | ナノ


▼ おまけ

竈門家との日常


昔から父の側に立つ、不思議な男性が見えていた。その人は俺に気づくたびにそっと微笑んで抱き上げてくれる。急に浮き上がった俺に母さんは驚いて、父は笑っていた。




『酒呑様、酒呑童子様。そこにいるんですね。炭治郎。私は見えないけれど、お前を抱きあげてる人はどんな姿をしているんだい』
『えっとね!父さんと同じ羽織を胴着の上に来てるんだ。腰に小さな瓢箪を沢山持ってるよ!髪が黒くて髪の先が少し青い?、こうね、頭の後ろで一つに結んでて、んむぅ』




小さかった俺が興奮しながら説明しているのを笑いながら見つめ。そっと人差し指で口元を抑えた酒呑様が、当時青み混じった瞳を和らげて笑う。絶世とは言わないけれど、それなりに整った顔立ちをしてるその人は、父に俺の姿は見えないからと教えてくれた。なんで見えないのか問いかけても困ったような笑みを見せられる。その顔すら綺麗だったけれど


そうこうしているうちに数年もたてば、酒呑様は俺と禰豆子にしか見えないことが分かった。お正月や盆になれば兄弟の中の誰かがたまに見えるようになってはしゃいでいる。でも父にも母にも見えてはいない。それが少しだけ惜しい。だって酒呑様はこんなにも綺麗なのに。暇なとき、家族はいつも酒呑様に捧げる祭壇の前で話してたり遊んでたりしてる。昔、俺と禰豆子がそこに酒呑様がいると教えたから。実際に大抵そこにいる。


たまにふらりと出かけたと思えば、お土産を持って帰ってきてる酒呑様のことを見えずとも、家族全員大好きで、いつか俺や禰豆子だけじゃなく見れるといいねって話していた。




「炭の子。炭を売りに行くのか?」
「あ、酒呑様!はい!俺は長男なので!!」
「おー、長男、なあ。…まあ、あんまり頑張りすぎないように」




そっとかがんで頭を撫でられる。酒呑様の手はやわらかい。昔本人に言った時は酷く微妙な顔をされたけれど、俺はこの手が酷く好きだ。一応剣を握るらしいけれど、それにしたって俺より柔らかい手だと思う。俺たち家族を守り、慈しむ手。寝ている弟たちを何度も優しく撫でて「強く、健やかに生きない。意地汚く足掻いてもいい。生きたいというのは人間の本能だからね。けれど、後悔しないように生きなさい。自分にだけは、嘘をつかないように生きなさい」という。どんなにつらい悪夢にうなされても、そっと頭を撫でてもらうだけで安心できる手だ。

頭に置かれた手を握れば、青みがかった眼差しで首を傾げられる

握った手を己の頬に当てて瞼を閉じれば、酒呑様の体温と香りだけに包まれた。暖かい。俺たちは酒呑様が好きだ。俺たちを慈しみ、守る、慈悲深い、俺たちだけの神様。




「酒呑様、酒呑童子様…」
「どうしたんだい、炭の子」




縋る様に父と同じ羽織を羽織る神様の胸に飛び込んで、その香りをいっぱいに吸い込んだ。受け入れて、抱きしめられる、トントンとリズムよくたたかれる背中。それが酷く心地よい




「酒呑様、しゅてんさま。ずっと俺たちの神様で居てくださいね。よそをみてしまってはいやですよ」
「――ッ」




我ながら子供っぽい言い草だ。もう12にもなるくせに、否定されたくなくて幼い言い方をした。




「おれたちのかみさま。おれたち【だけ】のかみさま。どこに行ってしまってもいい。でも、慈しんで、愛して、一番の愛情は俺たちに向けてくれないと嫌です。ぜったい、最期に戻ってくるのは、俺たちの場所じゃなきゃダメです」




だめ、なんです。

否定されるかもしれない。それは出来ないよと困った風に笑われてしまうかもしれない。そんな言葉を聞きたくはなくて、ぎゅぅっと自分の耳を抑えれば、その手を優しく外され、いつの間にか緑がかった瞳になった神様が、俺に笑いかけていた




「うん、そうだね。炭治郎」




―――あっ、おれの名前だ…。



呼んでもらえた。うれしい。俺の名前、うん、神様。もっと呼んで、ちゃんと覚えて。俺の名前




「うん、君が望むならいくらでも呼ぼう、炭治郎。ほら、その綺麗な赫灼の目を見せて、……うん、綺麗だね。さすがは炭の子だ」
「なまえ、じゃないと、いやです」
「そうだった、ごめんな、炭治郎」
「はい…、はい…。何ですか神様。俺たちの、神様」




自分でも分かるくらいとろとろと瞳が蕩けてる気がする。優しい瞳、いつの間にか俺と同じになった羽織、俺と同じ色が混ざる神様の瞳が綺麗だ。神様の手が俺の頬をなぞって、両手で持ち上げると、吹き込む様な、安心させるような声音で言う




「約束しようね。酒呑童子の名において、俺が戻ってくるのはどんな姿になっても、お前たちの後ろだ。ちゃんと慈しみ、ちゃんと愛し、見守り、守っていくのは竈門家だ。」




俺の鼻がわずかな血の匂いを嗅ぎ取った。それと共に、神様ですら敗れないような固い、約束が、確かに俺と神様の間に出来上がった。それだけが、その事実だけがうれしくて、父の色に戻った神様の手を握る




「神様、麗の町まで、一緒に行ってくれますか?」
「勿論だよ、炭の子。お前が安全なように帰りも送ってあげようね」




頭を撫でられ、楽し気に手を握られる。ああ、この幸せがずっと続けばいい。俺もいつかは嫁さんをもらって、その子供がまた、神様を、酒呑様をこの家にいてくれる理由になってくれればいい。きっと俺の父さんも、ご先祖様も同じ気持ちだったんだ。慈悲深い俺たちの神様。俺たちだけの神様。ずっと俺たちの側にいてくださいね。【約束】しましたからね。



























主人公

竈門家の守り神的な存在。実は神様の力をもってしても救済出来ない運命の人間には姿を見せることが出来ない。原作開始一年前に炭治郎と【血と名の契り】を交わしたため、何があっても竈門家を守っていく鎖を背負う。本人的には別に鎖でも何でもない。今日も今日とて炭の一家が可愛い。この世界では知名度+信仰で神様の力は決まるので実はめちゃくちゃ強い。信者一人の信仰心が強ければ百人にその名を知れてるのと同じくらいの力が出る。竈門家が総じて狂信者。ちなみに炭治郎はその中でも群を抜いてるくらいには心酔してる。
竈門家に現代でウィンクや投げキッスをしようものなら心臓発作で死ぬ。キメツ時空ではアイドルみたいな扱い受けてそう(一応アルバイト)




竈門炭治郎

竈門家=光属性()。主人公が誰と付き合ってもいいし、誰の手を取ってもいいけど、最終的にはこちらに戻ってきてくれるなら何でもいい。俺たちの神様で俺たちだけの神様。他の誰にもあげないし渡さない。主人公的には基本無害。ただし依存がやばい系。主人公の一番は自分たちっていう絶対の自信があるから強い子。作中きっての勝ち組。だって主人公の口から物言わせてるので。さらに言うなら炭治郎は狂信者な竈門家をもってしても頭一つ飛び出るレベルで心酔してる。それを表には出さないだって長男だもん。




竈門家こそこそ話:主人公の髪の色、羽織、目の色は竈門家当主が変わるごとに変化するよ。(守護神的な理由)まさに君色に染まるを体現したような感じになるねっ!




prev / next
目次に戻る









夢置き場///トップページ
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -