「俺、確かに鬼だけどお前らの追ってる鬼じゃないと思う」 | ナノ


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「上弦と、遭遇したと聞いた」
「柱と二人っきりで仕事をこなしてると聞いた」
「お前ら仲良しだな」




蝶屋敷で炭治郎が治療を受けている間に義勇と錆兎が来た
片方はどことなく心配そうなオーラを漂わせてるのに、片方は酷く不機嫌そうである。ここに来る途中でお互い鉢合わせしたことは何となく予想がつく。俺には家がないので監視の一環と表し蝶屋敷から一部屋もらっているため、そこに二人を上がらせてからお茶を出せば、同じタイミングで飲むのだから面白い。




「監視の一環として義勇以外の柱に日替わりで付いているんだ。今回は炎柱でな、狙ってた鬼は下弦だったが、下弦を倒した当りで上弦に遭遇した、ってことになってるだろう」
「監視の…なぜ、俺はない」
「お前が炭治郎の兄弟子だからだよ。同じ派閥だと庇うかもしれないっていう考えじゃないのか」
「俺は斬るけどな」
「誑し込まれた奴が言うと信用ないんだよ」




ほらそうやってすぐ刀を抜こうとする〜〜〜。義勇が必死になって抑えてくれてるのがありがたい。
二人がまた座りなおしたのを確認して、俺は自分のお茶を飲み干す




「で、ここから俺の話を聞いてほしいんだけど」
「お前の話を?」
「そう、俺の話を。―――まあ、簡単に言えば、俺はちょっと今回のことで天界の方々からおしかりを受けてな」
「……なぜ?」
「この話は産屋敷の方にもう話してあるからこそ言うが、本来先日の任務で煉獄が死ぬ予定だった。それを俺が少し神様的なパワーで捻じ曲げたせいで少し怒られて、しばらくの間、神的権限が行使できない。まあ、不便はないとおもうんだけど」




そうなのだ、とくに伊邪那美様のお怒りがすさまじく、ほんの数か月ばかり神的権限の行使が不可能になってしまった。妖としての力は使えるとのことなので、不便は、不便は…












※ここからは神様界であった言葉をダイジェストでお送りいたします

『良いですか酒童子様。貴方からはく奪した権利は3つ、一つは任意の視覚化制御、一つは再生能力、一つは神酒の生産制限です。とてもとてもぬるい制裁であり温情ですからね。これ以上問題起こしてはいけませんよ』

任意の視覚化制御=ヤベェやつらから姿を消して安全に戦ったり逃げたりするのに使ってた
再生能力=いくら斬られても再生していた+攻撃を受けても何割か痛みが軽減
神酒の生産=自分で作った神酒飲む、他人に飲ませることで怪我の治癒等の恩恵+便利な瓢箪づくり



『ですが、それだけでは伊邪那美様の気は晴れぬらしく…酒童子様の匿われてる死者の分だけ、御身の力に数ヶ月制限をつけると…』


制限=人や鬼を超越した力の制限








ヤバいのでは?思わずスンっとさせて畳の目を数える。急に固まって黙った俺に困惑した二人の気配。落ち着け俺、大丈夫だ落ち着け。バレなきゃセーフだろう、炭治郎が良くやる様に息を吸い込んでにっこりと笑みを浮かべ、言葉をつづけようとした、そして




「酒様!俺思ったんですけど!!神様的権限制限されたってことは今、弱体化してるってことですよね!俺が御守りしますよ!」




炭治郎ぅぅうぅううぅぅううううううううううう!!!

スパーンといい音立てて襖が開かれるとともに愛しの炭の子が登場した。それと共にとんでもない爆弾投げ入れてきた。どうしようかなこの子。その心意気はおおいに良し。でも違う。その言葉は二人の時に言ってほしかった。顔を上げるのが怖い。笑顔のまま固まってしまった己が憎い。そんなの答えをぶちまけたようなもんじゃないか。




「………」
「…なるほど?」




久しぶりに心臓がこんなに動いてる気がする。どうしたんですか?酒様?と俺の周りをぐるぐると周り心配そうにする炭の子の頭を撫でる余裕がない。何がなるほどなんだろう。なんで錆兎黙ってるんだろう。二人が何考えてるのかわかんないぞコレ。

不意に錆兎が立ち上がる気配がした

恐る恐る顔を上げれば、どことなく輝かしい笑顔の彼が襖に手をかけて今まさに出て行こうとしている。嫌な予感がした




「さ、錆兎?錆兎さん??そんなに笑顔でどこに行かれるつもりなんでしょう」
「御屋形様に許可をいただいて来ようと思ってな」
「許可?錆兎。なんの許可なんだ?」
「子飼いの鬼が弱体化したんだ。どれほどまで弱体化したのか確かめるべきだろう。炭治郎の兄弟子であり、同門の俺が」




考える間もなく身体が動く

知らずに最短ルートを模索し、畳を蹴って窓に手を掛けたところで腕を取られると押し倒された。待って!痛い!!!ケホッと肺が圧迫され息が詰まる。流れるように首元に手がそえられてる。見上げれば目を細める錆兎の姿。その瞳には仄かに何かの熱が揺らめいて、頬に髪落ちている。そのせいかどこか下から見上げれば囚われたようにも感じてゾクリと寒気が走った。




「男なら、逃げるんじゃない」
「痛いこと、するだろ」
「ああ」
「嫌がっても、やめないだろう」
「ああ」
「どうせ口実が欲しいだけだろ」




笑顔を向けられた




「ほらぁああああああ!!!!」




俺の絶叫に炭治郎と義勇が反応し、錆兎を俺から引きはがす。引きはがされたくせにいまだ俺に目線を向ける男が怖い。そしてぽつぽつと分析していく




「いつもより早さがない。それ以前に姿も消せない。ということは能力面の制限が掛けられてるってことか」
「やめろ!冷静に俺を分析するな!!」
「だが、死者を匿うときの責務がそれだけで済むか?そもそもお前の身体を俺が傷つけるとして、―――治るのか?」




核心ついてきたっ―――!!




思わず炭の子の後ろに隠れれば、ちいさく「なるほど」と呟いて、義勇の手を外す。




「やっぱり俺がーーーー」
「それ以上言ったらお前っ!死後の裁判地獄に落とすからな!!??」
「落ちるならお前も道ずれにするぞ俺は」




本当にやりそうで怖かった。

しかも最終的には炭治郎には聞かせられないような言葉の羅列で攻められ、炭の子の耳を塞いだ俺に自分の耳を塞ぐ術もなく、すべてが終わった後には胡蝶に泣きついた。昔かわいがってた子が怖い。ついでに炭治郎にも泣きつけば禰豆子と共に頭を撫でてくれる。好きッ


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