救いが欲しけりゃ金を出せ | ナノ


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下山すれば勝ちとか誰かから聞いた気がするなと、思いつつ片手で青龍偃月刀を持ちながら肩に担ぎ山を歩く、横には錆兎と義勇と名乗る少年が付いてきていた。偃月刀をつつく義勇に目で辞めろと訴えるが伝わっていない。歩くたびにちりんちりんとなる鈴が俺たちの居場所を告げてくれるといいのだが、錆兎によればあの異形の鬼でこの山の鬼は最後だったらしい。理由を問いかければ他は全部俺が狩りつくしたとひどくまっすぐな目で言われ、俺は戦慄した。俺はあんなに真っすぐな目で見られたのは竈門家にお邪魔したとき以来だよ。本当に。


「それにしても一円でよかったな義勇」
「ああ」
「はー、吹っ掛けとくべきだったかなぁ」
「もう一円といわれたからな」


こくんと便乗して首を縦に振る義勇が憎い。こいつ一人でさんざんスンスン泣いてたくせに、錆兎が無事とわかった瞬間にスンっと顔を元に戻しやがった。思わず二度見したものだ。無表情が本来の表情って大丈夫かな。顔の筋肉仕事してんのかコイツ



「ところで、君の名前は…?」
「金取るぞー」
「えー、じゃあ年齢…」
「有料になりまーす」
「出身地!」
「そこから先は好感度もとい銭が足りませーん」
「…金の亡者…」
「なんとでもいえ、この世の中、一番使用できるのは金だぞ。裏切らねえからな」


価は上がるけど。アレは本当に困る。


ため息をつく俺に二人は顔を見合わせてから口を開いた


「さっき守の呼吸って言ってたけど、それってやっぱり岩の呼吸の派生なのかな?」
「おまえ、さっきからめっちゃ追及してくるな???」


俺の担ぐ、偃月刀を見つめながら「なあなあ」とひな鳥のようについてくるこの二人をどうしようか。まあ、呼吸についても隠していてもしょうがないのだろう。現に俺の偃月刀の色は灰色なわけだし


「多分な。俺に剣やらこの刀の使い方を教えてくれた人が岩の呼吸を使う人だった。その呼吸を覚えるために必死に修行に励んで、できたのがこの型だった。それぐらいだ」
「師匠ってことか?」
「…師弟の関係にしては、きっと俺らは歪だったよ。なんせ、俺は…っと、ここからは有料な」
「そんだけ話しといて!?」
「そうだなあ、名前、年齢、出身地で2円なんてどうだ?ちなみにさっきの話聞くなら10円だぜ」
「払えるか!!」


じゃあ、この話はおしまいだろうと見えてきた出口に駆けだした。後ろからは止めるような声が聞こえて、そのあとに口をあまり開かなかった男の声が聞こえた


「また、会えるか…!?」


その言葉に、俺は挑発するよう笑みを作った


「お前らがくたばらなかったらな。同じ隊に居るんだ。どっかで会うだろうよ」


立ち止まることなく、顔だけを向けて
初対面が泣き顔だった。己の刀の状態すら把握していなかった奴らだったが、ぞんざいに素質はあった。

アイツらから支払われた一円を懐にしまい込んで前を見据える。

金が必要だ、たくさんの金が。俺の老後のためにも、何か俺自身に起こった時のためにも。
もう十分貯めた気がするがまだまだ足りない。俺はきっと金に憑りつかれているのかもしれない。それでも、俺には金が必要だった。








「―――ま、こんなご時世だしな」




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