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▼ 炭治郎の初恋

炭治郎の初恋



ずっと綺麗な人だなって思ってた。物心ついたころから一緒に居る、年の離れた兄のような人。男と形容するにはその姿形はまるで職人が一生に一度のすべての技術を埋め込んだかのように綺麗で、触れれば壊れてしまいそうな人。特徴的なその瞳は俺の目よりももっと濃ゆくて、昔一度だけ見た紅玉という宝石以上に透き通っている。そのくせ、俺や禰豆子を優しく抱き上げ撫でる手は、父にも劣らず豆がつぶれて皮膚が固かった。俺も家族も兄ちゃんが大好きで、けれど俺の好きとみんなの好きは少しだけ違ってて、何度も悩んだりした。父に相談すれば、ひどく驚いたような顔をしていたけれど、その後には困ったように頭を抱えて唸り出す。「そうだよなぁ、あんだけ器量良ければなぁ…。しかも可愛がってるから…」と、まるで己の罪を懺悔するよう姿は今でも忘れられない。後にも先にも父がこんなに悩んでいたのを見るのはこれが最初で最後だった。

抱き上げてもらった時にふと香る優しくて甘いような、けれどどこか涼し気で包み込むような匂いにドキドキするし、戯れの延長戦で額の火傷に口づけされたときは身体が熱くなった。昔はそうでもなかったのに今では一緒に風呂なんて入れない。子ども扱いされるとムッとするし、守られてると分かると焦ってしまう。その癖、兄が他の柱や善逸たちと笑顔で談笑するのを目に入れてしまうと、どうにも腹がむかむかする。―――この気持ちは何だろう。家族と笑いあってるときには感じなかったのに、まるでぶり返すように湧き上がるこの想いは何だろう




『炭治郎』




声をかけてもらうたびに、笑いかけられるたびに、その目に自分を映してもらうたびに、己の心臓はトクトクと音を響かせる。暖かくて、ホワホワして、そんなのまるで、恋のようではないか。善逸がいつも言っているようなこの感覚は、まるで、まるで…。けれどそんなのあり得るのだろうか、だって俺は男で、兄ちゃんも男で、ああだけど、言葉にしてしまえばそれは存外しっくりとなじんでしまう。


妹の簪と、昔、自分が好きだと言った饅頭を携えて病室に入ってきてくれた兄―――、道幸に言ったあの言葉は、じゃあ、己の本心だったのかもしれない




―――次は、兄ちゃんの眼みたいに綺麗な色をした、お土産がいい。




多忙な彼はどうしても己の側にずっといることはできない、自分も禰豆子のために、自分の夢のために任務に行かなければいけない。だから、せめてかの人を思い出すよう、かの人が隣に居る気分になれるようにねだったようにしか思えない言葉だった。


自覚した瞬間、顔に熱が集まる。そして次に思い浮かべるのは、涙を流して自分たちを抱きしめた姿。


昔よりも背が高くなったからなのか、兄がしゃがみこんで禰豆子諸共抱きしめると、自然に立っている自分は兄の背を越す。昔はそうでもなかったのに。




―――だ、だめだダメだ!男同士で、兄ちゃんは家族なんだから、こんなこと、考えちゃ…




けれど、もしも自分がもっと成長すれば、存外柱の中でも小さかったあの人を抜けるかもしれない。そしたら今度は自分が彼を抱きしめることが出来るかもしれない。

その時、兄はどう思うのだろう、どんな反応をするのだろう。



―――大きくなったな、と、油断したように腕の中で笑う彼に口付けをしたら驚いて、意識してくれるだろうか、


逆に、顔を赤くして照れてくれたら、きっと何かみたされる気がする。そんな妄想をしている自分が浅ましい。それでもどうしても考えてしまうのだ。自覚してしまったこの想いを止める手立てを炭治郎は知らなかった。とめる手段がないということも、彼は知らなかった。

遅すぎる初恋だったし、なにせ、自覚も何もなかったのだから。


































もしも付き合ったら(無事に大人になってる設定 炭治郎20 道幸28)※R‐15















































































腰が痛かった。なんなら全身痛かった。昨晩は今日が両方とも非番ということもあって、ひどく愛された。いつもなら2回3回で済む行為は、日をまたいで、鶏が泣き出す日の出前まで続いた。股関節は広げられて痛いし、まだ中には、昨日愛された証拠が残っていて、太ももを伝っている。若い力を思う存分に発揮した炭治郎は「朝餉の支度してくるね!」と飛び出していき、己の烏が炭治郎の烏に引っ付かれている。自分も朝餉の支度を手伝おうと腕を動かした瞬間に中に出された精がごぷっと音を立てて溢れる、その拍子に僅かな悦が生まれて布団に逆戻りした。察する



―――あ、俺、今日炭治郎に全部やって貰わねぇと何もできねぇえわ



若い日柱様はこれが狙いだったんじゃないかという被害妄想すらも生まれてくる。
こうなることが分かっていたから何度だってやめてくれと訴えた。それなのに可愛い可愛い炭治郎はありとあらゆる手段で行為を続けたのだ。眉を下げて、捨てられた子犬のように「ダメ?」「もっと兄ちゃんと繋がっていたい。」と囁き続け、しまいには強引な口付けで言葉をすべて塞がれた。



―――ひ、ぅ…ごめんなさ、ごめんなさぃいっ。もう、もうヤダ、むり、むりぃっ
―――大丈夫、道幸はまだ頑張れる。俺より年上なんだから、ほら、腰上げて
―――良すぎて、ぁあっ、や、それダメ、ヤダ、たんじろ、たん、じろぉっ



―――――???、何気に名前呼ばれてた…???

混乱する脳内。しかもめちゃくちゃいじめられた記憶がよみがえってきた。最後は本気の謝罪しかしてなかった気がする。それなのに舌で唇を舐め、炭治郎は何度も俺を攻め立てたし、抵抗すれば下から突き上げて「ほら、ごめなんさいは?」「ダメだろ逃げちゃ」とーーーー。

―――辞めよう、俺の可愛い炭治郎が崩れる。でも閨のあの子は間違いなく獣だったな…。




「兄ちゃん、できたぞ」




枕に顔を渦組めて飛んでた間の記憶にもだえていれば、目の前に二つのおにぎりが置かれる。にっこりと笑って笑みを向ける炭治郎がしゃがみこみ、額に口づけを落として言った




「食べ終わったらまた愛し合おうな。」




―――俺は悟る、コレは明日も死んでることを。




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