▼ 7
その日、産屋敷は酷くざわついた。
まるで知ったかのようにここ数年姿を見せなかった守柱が廊下を歩いている。
その姿は二年前と違い、ひどく色香を纏っていた。どこかくたびれたような、影を落としたような雰囲気と変わることのない、いや、以前よりも磨き上げられたような気さえする美貌に愁いを帯びた表情。随分と伸びた長い髪が軽やかに揺れて動く。
けれど柱会議はすでに始まっている。なら、どうして、と
「なあ」
近くにいた隠に柱が声をかける。掠れたような声は酷く心地が良い。
「御屋形様や柱たちは、どこで会議をしている?」
「以前と、変わってはいないかと」
「わかった」
短いやり取りだった。竿のついた偃月刀の尖刀が太陽の光を受けて輝き、つけられた鈴が涼やかに音を奏で、柱が動き出したの知らせる。ひと悶着なければいいが、と、やり取りをした隠はため息をついて歩き出す
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