何のために塩対応してると思っているんですか? | ナノ


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江戸川コナンは小学生である。


十人中十人がそんなの当たり前だろう、何を言っているんだと返答しそうなものだが聞いてほしい。そんな彼はとても好奇心が旺盛である、それはもはや周知の事実だ。けれど好奇心が旺盛である彼にも苦手としている人物がいた。そう、目の前で悠然と紅茶を口に運ぶ自称小説家である女性だ


――――人が死んだ現場で、容疑者にされたというのに悠然と紅茶を飲んでいるこの女性である


なぜなら彼女がいると自分は事件の捜査が出来ないのだ。それどころかまるでゴミムシを見るかの如く冷ややかな眼差しで吐き捨てる




「日本の警察は、小学生を殺人現場に招き入れるほどのドクズになり下がったわけ?馬鹿なの?」




場所が場所であれば名誉棄損罪で縄をかけられそうなことを警察相手に平然と言ってのけた彼女にいつもお世話になっている刑事はもちろん、周りに居た警察官さえも氷漬かせた。
それは一重に至極当たり前のことであり、その目にありありと不信感やら疑心やらもう人間に向けてはいけない諸々を詰め込んだ眼差しであったのだ。常識を真正面から言われると人は弱い、なぜならそれは正論だからだ。顔を青くする刑事たちを一瞥し、彼女は頼んでいたという紅茶を口にし始めたのだからそのメンタルは鋼かと問いただしたくもなる。そんなまさに張り詰めたような空間でチリンと来店を告げるベルの音。

目を向ければなぜか息を切らせた無精ひげの男が顔を青くし、―――女性に詰め寄った




「あ、んた…、締め切りが今日だってのになんで悠々とお茶をっ…!」
「どうでもいい、ちょうどよかった、私聞きたいことがあったんだけど」
「家で聞きますよ家で!」
「今」
「〜〜〜っ、なんでしょうか!?」




無表情に自分のペースに引きずり込んで女性はちらりとこちらに一瞥を向けると、




「小学生が殺人現場…、いや、死体に近づくって普通なの?」
「そんなわけないでしょ」
「だよね、それを許す警察官と刑事が居たらどうなるわけ?」
「クビですよク・ビ、一般人を、ましてや容疑者にすらなりえない子供を規制線やらに入れれれば責任逃れは出来ないんじゃないですか」




というか質問の意図が分からないんですけれど

困惑して眉を潜める男の言葉に刑事も警察も顔を青くしている。かくいう自分の顔もきっと青いだろう、まさか彼女が自分を追い詰めるとは思わなかった。何度もあっている仲なのだ、容疑者として視野に入れていたとしても彼女が犯人だとは思っていなかったのに、ひどく裏切られたような気分で…




「そもそも捜査っていうのはまず証拠集めが基礎なんです。死体の側なんて証拠の倉庫、それを漁るような真似なんて新人警察官でもしません。きっちり警察学校で叩き込まれているんですから」




恐らく悪意はないのだろう、けれどその悪意のない言葉がますます自分たちを追い詰めると彼はわかっているのだろうか、いや、わかっていないに決まっている。なぜなら彼はまだ規制線すら張られていなかったであろう店に入店してきたのだから




「うん、満足。さて、後輩B,横に目を向けてみ」
「…?はあ、別にって…、……警察?なんで?奥のは死体ですか?なんで規制線を張っていないんだ」
「き,君規制線を急いで張ってくるんだ!」
「は、はい!」
「いや、まてよ刑事さん、遅すぎんだろそれ」




非難するかのように細められた瞳にまたもや彼女と同じ侮蔑の色が宿り、呆れたようにため息をつく




「この中に医師は?そもそもそれを死体と決めつけるのは早いでしょう。医師が死体と宣言しない限りそれは死体じゃない。警察を呼んだ時に医者も一緒についてくるはずだが?」「へえ、医師ってそんな役割もあるのか」
「ええ、いくらソレが亡くなっていると明らかな場合でも医師が宣言しない限り救急車を呼び、医師の診察を受けさせなければ捜査は愚か事件だと決めつけてはいけないんですよ、例えば医学の心得があったとしても、脈を測り、死んでいると決めつけてもいけません、決めつけるのは、決めつけることが出来るのはこの法治国家では医師だけです」
「…で?刑事さん方は医師免許、御持ちで?」




持ってんのか?ん?と冷たい、本当に冷たい眼差しで彼女たちが自分たちを、最初に死んでいると叫んだ自分を見下ろしたのだ





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