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江戸川コナンこと工藤新一は悩んでいた。その後ろには守るべき大事な友人がいて、自分の横には頭に手を当てた灰原がいる。それほどまでに目の前の状況は理解が出来なかったのである。
「ふご、うむ、もぐもぐ」
ブリの丸齧り
その言葉がふさわしい光景が目の前で行われている。明らかに自分の身長よりもあるブリを頭から飲み込んできれいに骨と頭を残し完食した、金髪の子供。何を言っているかわからない?理解するんじゃない感じるんだ。そんな表現しかできない。
しかもこの子供、全裸である。
横にはキチンと畳まれた服があるあたり、育ちはいいのだろう、育ちのいい者が裸でブリを丸呑みするのかはともかくとして。
「うむ?」
「「「「!!!」」」」
こっちに気づいた。
あの灰原までもが肩を震わせ、一歩下がる。
「ぬー…」
「………」
「ぬー…」
「………」
此方を見つめる子供とガッツリ目が合ってしまった。
目を背けたいが、なぜだか背けた瞬間に襲い掛かられそうな予感がする
「……!!、おぬし、清麿の匂いがするのだ!」
「え“…」
輝いた顔。この世の喜びを詰め込んだと言わんばかりのその表情にコナンは思わず絶句した。この変な子供とクラスメイトが知り合いなど信じたくない。しかもそのクラスメイトは天が二物三物詰め込んだような人物である。
「私の名前はガッシュ・ベル!おぬし名はなんという?清麿はどこにいるのだ?」
灰原がコナンの背中を押す。早くいけと言わんばかりに押す。生贄だろうこれ。裸だった少年はいつの間にはワンピースのような黒い服に身を包んでいる。胸元のリボンには金色の石があって、太陽の光を受けて強く輝いた。
「えっと、俺は江戸川コナン。…で、清麿の兄ちゃんは…日本にいるよ…」
「ぬ?ここは日本ではないのか?」
「………」
いろいろ問題があった。思わず目が死んでしまう。
日本…?ここが日本…?
この子はもしかしてこの森から出てないのかもしれない。ダラダラとあふれ出てくる汗は冷や汗だ。
「ここ、イギリス、だけど…」
イギリス旅行を引き当てた蘭はとんでもない豪運の持ち主ではなかろうか。
「イギリスとは、どこなのだ…?」
「「……」」
目の前の彼も何を感じたのか、少し呆然としたように呟くのだから居心地が悪い
灰原がリュックから小さめの世界地図を取り出してイギリスを指さすと彼は絶叫した
「遠いではないかっ…!!」
―――よかった日本はわかるみたいだ
口に出さなかっただけ偉いと思う。
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