江戸川コナンと魔物の子 | ナノ


▼ 2

――魔界、王城――




「嫌なのだ!嫌なのだぁぁぁぁぁぁ!!!どうして私だけ違う場所に飛ばされるのだ!どうしてまた一からやり直しなのだぁぁぁぁ!うぁぁあああ!清麿ぉぉぉぉおおおお!私も清麿の元に飛ばされたいのだ!嫌なのだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっとガッシュうるさいわよ!」
「おい黙れ。…俺はこんなのに負けたのか」




広い王城の広間にて、床に這いつくばり手足をバタつかせて泣き叫ぶ金髪の子供の姿に周りを囲んだ子供の一人、ピンクの長い髪をした少女が眦を吊り上げて怒鳴り、黒い毛皮のようなものを羽織る男が静かに呟いた




「ティオにはわからぬ!最初から本の持ち主の元に飛ばされるお前たちにはわからぬのだぁぁぁぁ!」
「おい、ガッシュそう落ち込むな。兄である俺も同伴する」
「ゼオンでなく清麿がいいのだ!!」
「………」




泣き叫ぶ弟に兄であるゼオンは余りのショックで言葉を失った。
石碑のように固まるゼオンの横を通り抜け、とある魔物が拳を握り、そして、―――殴った
そう、殴ったのだ、仮にも王である彼を。まさに鬼のような形相で




「おいチビ、もう一発いくか…?」




鋭い眼光は殺意に満ちて、こぶしを固く握りしめるとガッシュは顔を青くさせて勢い良く首を振る。涙を流しながら頭を押さえて煙が立ち上るそこを守る様に縮こまった。首を絞める友達いれど他人から殴られるなど久しぶりである。




「バリーが、バリーが殴ったのだ…」
「ファウードんとき言っただろうがよ。俺はもうお前を殴れると」
「バリーも私を差し置いて持ち主の元に飛ばされるからそんな余裕を持てるのだ!!」




うわー!と涙を滝のように流す駄々っ子にバリーと呼ばれる角の生える男はもう一度その拳を振るった。痛々しい音が広間に響き渡り現在魔界の王であるはずの子供はカエルのような体制で床に沈む。時折ぴくぴくと動いているので死んではいないようだ。怒られて学ばない姿勢は変わっていない。その様子にティオが大きくため息をついて、集められた時に渡された自分の本をカバンから取り出すと片手を上にあげて叫ぶ




『サイフォジオ!』




光り輝く羽の生えた剣が勢いよく床に這いつくばったままのガッシュに刺さり、見る見るうちに傷を癒していった。
相変わらずの効果にティオも少し嬉しそうに微笑むと、先ほどまでのやり取りを見つめていた元魔界の王が顔を上げる




「相変わらず、賑やかだ。もういいのかい?私としてはもう少し見ていたかったのだが」
「ウヌぅぅぅぅうう、父上、私も清麿の所に飛ばしてほしいのだ」
「ならぬ」
「ぬぬうううううう!」




はねつけられた無情の言葉。それに対してどこまでも悔しそうに地団駄を踏んだ我が子を、王妃はクスクスと笑いながら見つめた




「さて、ではもう一度説明しますよ。あの戦いを経験した魔物の子たち。今回、人間界にあなたたちを送り出すのはけして戦わせるためではありません。言わば社会見学に行ってもらいます」
「社会見学…」
「そう、そしてこれから未来を担う愛しい子らよ。貴方たちの中からいずれ王を支える者が出てくるでしょう。その時の予行練習です。いかにこの王をサポートし、守り、成長させることが出来るのか、…覚えておきなさい愛しい子らよ。王が貴方たちを導くのではないのです。あなた方が王を導けるようになるのです。けれどあなたたちはまだ未熟。そのためパートナーだった者とまた手を組み、助け合うことの大切さを学びなさい」
「な、なら私も…、私も清麿の元へ…」
「なりません!」





目が光った。

比喩ではなく、本当に目が光った
元王であった男を差し置いてこの場で一番強そうである。しかも背中に修羅を背負っていた。怒り狂った清麿を思い出す光景に、ガッシュのパートナーを知る魔物の子が一様に顔を青くさせて震え始める。その様子に王が一つ咳を零すと、元王妃はスッと元の優し気な顔へ戻ると再び説明を始めた




「さて、ここから話していなかったことですが、予想のついているものも居るでしょう。今回の人間界へ行く目的は二つ。一つはあなた方の成長。一つは王の成長です。この王の成長とはこの子をパートナーの元へと飛ばさない理由でもあります。」
「ガッシュの…?」
「はい。皆さんにはこの子の障害となって貰わなければなりません。しかし、障害になるばかりではなく時には味方にならなくてもいけないのです。よって、導く者と障害になる者へと別れる必要があるのです。」




王妃がその言葉を話した瞬間、明らかに広場は気まずげな雰囲気に包まれた




「ええ、その反応が当然でしょう。ですから、最初はこの子を皆は導いてください。パートナーの元へと。この王がパートナーと巡り合えた時、貴方たちの本はあなたたちの役目を教えてくれることでしょう。この王を遮る者はこの王と戦う宿命を背負います。敗北条件は、貴方たち全員に渡された本が燃えること」
「「「「「!!」」」」」
「ですが安心してください。燃えても魔界に帰ってくることはありませんので。社会見学、ですからね。王に負けた者は王の配下になります。燃えた本も新たに手元へと出現します。そのあとは王を守ってくださいね。ですが甘やかしてはなりませんよ」




にっこりと微笑んだ元王妃に幾人かは元気よく返事をした




「あのぉ、ガッシュの本が燃えたらどうなるの」
「心配ありません、一回燃えるごとに、覚える法律が【一章】増えるだけです」
「ぬう!!??」




悲痛なガッシュの悲鳴がこだました。横ではゼオンもガタガタと身体を震わせてる
教える側のアースは頭を押さえて横を向いた




「な、なんであんた達震えてるのよ…」
「魔界の法律って滅茶苦茶あるから、一概に一章って言っても数が多いんだよ。」




魔界に帰って以来、勉強に精を出していたモモンがティオに知識を披露して、キッドが深く頷いた




「さて、準備はいいですね皆さん」




いきますよー、幼稚園の先生が優しく園児に言い聞かせるような優しい声で元王妃は地獄の門(ガッシュにとって)を開こうとしている。コレはやばい。




「ま、待つのだ母上!」
「行ってらっしゃい」




パン。

軽い、拍手を一つ。

そして広場に居た魔物たちは消えた、しかし




「あ、千年前の子たちも参加してるってこと、言い忘れたわ」
「………」




横で見ていた王は瞼を閉じる。きっとこれは口を挟むことは許されないだろうと肌で感じ取った



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